カワイー子

 大嫌いになったお気に入りの曲が流れる。アノ子だ。アタシのことを姉御って呼んで慕ってくる子。チョットだけカワイー子。


「もしもし?」

「あねご。わたししのうとおもった。しっぱいした」

「そっかぁ」


 アタシはタバコに火をつけた。『BOHEM CIGAR NO.6』葉巻が入ってて、少し甘ったるくてオイシーんだ。煙もイーニオイでサ。

 電話の向こうでアノ子が泣いてる。もうアノ子の名前も覚えてないヨ。すぐしぬ子。って認識だから……サ。


「今回はセーコーしたと思ったけど……っサ。ダメだったネ」

「あねごはわたしがしんでもいいの?」

「アンタの望みなら仕方ないヨ。応援してる。じゃあネ」


 電話を切って煙草の続きを吸った。アノ子の泣き声がどっかから聞こえた気がしたんだよネ。そんなワケないんだけどサ。

 翌朝アノ子が死んだって話を聞いたケド、何回も未遂をしてたアノ子に対して流せる涙も悲しみもなかったんだヨ。

 アー、ソッカ。

 だけ。じゃ、バイバイ。カワイー時もあった子。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る