第74話 罠鍋とドラゴン鍋の一階
サンクトに鳥骨ドラゴンの残骸を調べてもらった。
ラーメンの材料になるのは、中身の鳥骨スープ。
奉納部位は蓋の内側にくっ付いている葉。
鍋と蓋は買い取ってもらえる。
爆発した原因は不明。
ということが分かった。
魚介ドラゴンと同じなんだな。
では、先に進もうか。
ダンジョンを歩いていると、また先程と同じ寸胴鍋を発見してしまった。
今度はなんなのだろうか?
では、声をかけてみよう。
「君はドラゴンなのか?」
……なんの反応もないな。
なら、あれは罠か。
おや?
なぜか寸胴鍋が宙に浮いたぞ。
そして、俺たちに向かって飛んで来た。
俺たちはかろうじて、鍋を回避した。
その後、鍋は壁に激突し、爆発した。
今のはなんだったんだ!?
あいつは無口なドラゴンだったのか!?
念のために、サンクトに調べてもらおうか。
「おっ、来たぜ! あれは罠の一種で、声をかけると飛んで来て、爆発するらしいぜ!」
「そうなのか。声をかけを抑止するために作られたのだろうか?」
「その可能性が高いじゃろう。まったくもって嫌らしい罠じゃ! 作ったヤツは性格が悪すぎるじゃな!」
「そうだな!」
しばらく進むと、またまた先程と同じような寸胴鍋を発見してしまった。
それも五つもあるぞ。
今度はドラゴンか?
それともまた罠なのか?
さて、どうしようか?
突進を避ける準備をして、声をかけてみるしかないか。
「君たちはドラゴンなのか?」
「なんだとテメェ、何を言ってやがるんだトドラドラ! どっからどう見てもドラゴンだろうがトドラドラ! 他の何だと言うんだトドラドラ!?」
「なぜそんな当たり前なことを質問してくるのだね、君はギュドラドラ? ドラゴンに決まっているだろうギュドラドラ」
「これだから愚かな人間は困るヤドラドラ。この私がドラゴン以外のなんだというのかねヤドラドラ?」
三つの寸胴鍋から返答があった。
なら、後のふたつは罠か。
では、どうするかな?
「オイ、コラァッ、俺様の質問に答えやがれトドラドラ! 俺様がどう見えたんだトドラドラ!?」
「えっ? それはどう見ても寸胴鍋だろ」
「な、なんだと、俺様がドラゴンに見えなかったってのかトドラドラ!?」
「そこの人間、まさかワタクシまで寸胴鍋に見えたというのかねギュドラドラ?」
「私はどうなんだねヤドラドラ?」
「寸胴鍋にしか見えないな」
「な、なんと、粗暴な豚骨ドラゴンだけでなく、このワタクシまでとはギュドラドラ……」
「ふぅ、愚かな人間だヤドラドラ。あきれ果てるなヤドラドラ。この私までとはヤドラドラ」
こいつらはドラゴンであることに、誇りを持っているみたいだな。
「オイ、牛骨ドラゴン、なんか言ったかトドラドラ!?」
「事実を述べただけだよ、豚骨ドラゴン君ギュドラドラ」
「なんだと、テメェ、ぶちのめされてぇのかトドラドラ!」
「やれやれ、確かに粗暴だなヤドラドラ」
「うるせぇぞ、野菜ドラゴン、テメェもぶっ殺されてぇのかトドラドラ!?」
なぜかケンカをし始めたぞ。
というか、こいつらって、豚骨ドラゴン、牛骨ドラゴン、野菜ドラゴンだったのか。
見た目は魚介ドラゴンたちと同じなんだな。
「テメェ、もう許さねぇ、ぶっ殺してやらぁトドラドラ!」
「はぁ、仕方ない、おしおきをしてあげようかギュドラドラ」
「やれやれだねヤドラドラ」
仲の悪いヤツらだなぁ。
その時、突然寸胴鍋たちのいる場所で爆発が起こった。
すべての寸胴鍋が四散した。
「な、なんだ!? なんで爆発したんだ!?」
「分からん!? じゃが、ドラゴンではない鍋が最初に爆発したように見えたぞ!」
「なら、罠が作動したのか!? どういう罠なんだ!? サンクト、ちょっと調べてくれ!」
「ああ、良いぜ!」
サンクトが儀式を開始した。
「来たぜ! 今回の爆発は、周囲で騒ぐと爆発する罠が作動したものらしいぜ!」
「そんなのまであるのかよっ!?」
「皆、同じ外見で区別が付きにくいのう……」
「まったくである」
ややこしいものがあるんだなぁ。
その後、豚骨ドラゴンたちも神鑑定してもらった。
ラーメンの材料、奉納部位、買い取ってもらえるもの、すべてが魚介ドラゴンと同じだそうだ。
まあ、もう全部爆発してしまったけどな。
さて、もうここでやることはないな。
先に進もうか。
また寸胴鍋がいたぞ。
今回はひとつだな。
さて、どうするか?
これまでのことから考えると、突進を避ける用意をしつつ、ドラゴンを怒らせないような言葉で、声をかけるのがベストなのかもしれないな。
では、試してみるか。
「そこのドラゴンさん、ご機嫌いかがかな?」
「人間ごときが何か用なのチョドラドラ?」
ドラゴンだったか。
では、素早く蓋を取ってしまおうか。
俺はスローライフオーラ魔法で身体能力を強化し、ドラゴンに接近し、蓋を取った。
「きゃああああああっ! な、何するの変態人間、それを返しなさいチョドラドラ!!」
蓋を取ると変態になるのか!?
って、そんなのどうでもいいか!
さっさと奉納部位を取ってしまおう!
俺は蓋の内側に付いているローリエのような葉をもぎ取った。
ドラゴンはしゃべらなくなった。
どうやら倒したようだ。
よし、これで材料を入手できるぞ!
ディディに材料用の保存容器を出してもらい、鍋の中身を入れた。
良い香りのする黄金色のスープだ。
美味しそうだな。
その後、保存容器の蓋をしっかりと閉めて、寸胴鍋とともにアイテムボックスに入れてもらった。
よし、これで完了だな!
では、次のドラゴンを狩りに行くか!
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