拾った財布から2万盗んだ男、ナイフを舐める
森THE森AG
プロローグ
「きゃああああ!」
「おっと、あんまり叫ぶんじゃねえよ。ちょっといいことするだけなんだからよっ!」
武装した大人たちに囲まれながらも必死に助けを求める声を上げる少女。しかしここは街から少し離れた林道。泣けど叫べど助けが来る可能性は限りなく低く、道を共にしていた仲間たちのほとんども既に地に伏してしまっている。
「お嬢様!?お嬢様を離さんか薄汚い賊めぇ!!」
「くっ、しぶとい騎士様だ」
「ありがとう、助かったわクルア」
「お嬢様をお守りするのが僕の役目ですから」
お嬢様に迫っていた一人はどうにか引き離すことができたものの、絶望的な状況に変わりはない。どうにかしてお嬢様だけでもこの場から逃がさないと・・・
でも僕一人では多勢に無勢、嫌なに弱気になっているんだ!命を賭してでもお嬢様を守るのが僕の役目だろう
「お嬢様!僕が奴らを抑えます!ですのでその間に全力で逃げてください!」
「でもそれじゃああなたが!」
「このまま二人でいても同じことです!!さぁ!行ってください!」
一緒に留まろうとするお嬢様を何とか逃げるように説得し、お嬢様が走り出したのを確認する。その後を数人の賊が追いかけようとするがそうはさせない。
『風纏い、我が手足となれ』
クルアがそう口にするとどこからともなく風が周囲を囲う。それは彼の手足のように自由自在に動き、命じるままに扱うことができる。所謂風魔法という代物だ。
「ちっ、こいつ加護もちか!厄介だが相手は一人、全員でかかれば怖くねぇ!」
「「おぉー!!」」
真っ先に飛びかかってきた男を風の刃で切り裂き、反対から抑え込みに来た男を蹴り飛ばす。しかしその隙をついて他の賊が地についている片足を狙ってナイフを振りかぶる。
「風よ!」
だがその攻撃も風魔法を使って体自体を宙に浮かし上手くいなした。
(はぁはぁ。にしても数だけは多いな、このままじゃ魔力の使い過ぎで体力が底をつきそうだ)
持ってもあと数十分、お嬢様のためにも1分1秒でも長くこいつら抑えなくてはいけない。そんなことを考えていると少し離れた場所から、逃げ出したはずのお嬢様の悲鳴がこだました。
そんなまさかと思いつつもお嬢様の悲鳴が聞こえた方へと視線を向ける。するとそこには悪人顔をしたスキンヘッドの男がナイフを持ってお嬢様を人質にするようにしてたたずんでいた。思わず嫌な汗が流れる。風の力で加速すれば間に合うか?でも直進するにはほかの奴らが邪魔だ。くそっどうすれば。考えている間にその男が動く。
恐らく賊の仲間であろうその男は右手に持ったナイフを口元に持っていき、ぺろりとひとなめすると声を張り上げた。
「てめえら全員!命が惜しけりゃ身ぐるみ置いてけや!」
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