優等生の私にも苦手なことがある。それは「自分の意見を言うこと」典型的イエスマンの私は引きこもりになった

momo

第1話 「最初の一言」

「奈美こっち、こっち」


中学時代の友人が、席をキョロキョロと探し回っていた奈美に向かって声をかける。


今日からいよいよ、高校生活が始まるのだ。


朝、家を出る前に何度も鏡の前で、この新しい制服を身にまとった自分の姿を確認した。


紺色のベストにブレザー。そしてスカート。

何とも地味な制服だ。

本音を言えば、可愛らしいセーラ服に私は憧れていた。

せめて、胸元にリボンが付いていれば…だなんて思いつつも、案外この制服を着こなしている自分に見惚れてしまった。


奈美の通う高校は県内でも有名な進学校。

大学は難関国公立大学への進学率も高いそうだ。

噂によると、海外の大学に進学する生徒もいるという。


奈美はそこまでは考えたことはなかったが、やはり国公立大学には進学したい。

経済的な理由も含めて…


教室は2階にある1年7組。

中学校の時は3組までしかなかったので、高校の規模の大きさに驚かされた。

教室に入ると前の方から、後ろの方まで席がギッシリ。

黒板には「入学おめでとうございます」

と赤色のチョークで大きく描かれていた。


ようやく自分の席についた奈美は、クラスの中を観察してみた。

隣同士でお喋りをしている生徒、椅子取りゲームをしている生徒、スマホを触っている生徒。

高校生といえば、ずいぶん大人な世界に感じていたが、中学の時とほとんど雰囲気が変わらないことに、安心感と、若干の残念感を感じた。


奈美は隣の女の子に声をかけてみようか悩んだ。

彼女は今1人で携帯を触っている。

チャンスかもしれない。


声をかけよう!そう思った瞬間、私の席の前に座っていた子が、その子に「何してるの⁉︎」と話しかけた。


あ…


せっかくのチャンスを逃した。


奈美は伸ばしかけた右手を、そっとスカートの上に置いた。


まだ新生活始まったばかり。

これから先は長いんだから大丈夫。


そう自分に言い聞かせながら、ペットボトルに入ったお茶を一口飲んだ。


ほら、よく考えてみなよ自分⁉︎

中学校では常にトップクラスにいたでしょ私⁉︎

高校でもうまくやっていけるよ⁉︎


奈美は椅子の上に姿勢を正して座り直した。


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