第22話 お兄様たちと再会です
「う~ん」
ゆっくり目を覚ますと、見覚えのある天井が…あら?私、どうしたのだったかしら?
そうだわ、副隊長を断罪して、その後意識を飛ばしたのだった。
急いでテントを出ると、見覚えのない景色が。ここは一体…
「アリー、やっと目が覚めたんだな。よかった」
私の元に飛んできて、抱きしめてくれたのはルーカス様だ。
「隊長、ご心配をおかけして申し訳ございません。それで、副隊長は…」
「ああ、あいつなら先日裁きを受けるため、王都に戻って行ったよ。それよりもアリー、あまり無理をしないでくれ。中々目覚めないから、本当に心配したんだぞ」
「今回はどれくらい…」
「12日間だ」
そんなにも眠っていたなんて。という事は…
「隊長、もしかしてもう他の隊と合流を…」
「ああ、先日合流した。このまま一気に森の奥まで攻め込もうと思っている。そうだ、アリーにも各隊の隊長を紹介しないといけないな。さあ、こっちへ」
なぜか私を抱きかかえようとするルーカス様を軽くかわした。
「アリー、どうしてよけるんだい。君は病み上がりなんだよ」
耳元でルーカス様が囁く。もう、急にどうしたのよ。こんな風にされたら、恥ずかしいじゃない。
「あの、隊長。私は本当に…」
「アリー、やっと目が覚めたんだな。よかった。やっぱりお前の作る食事じゃないと、食べる気がしないんだよ。早速飯を作ってくれ」
やって来たのは、隊員たちだ。
「お前たち、アリーは今目覚めたばかりなんだぞ。それなのに、食事の事しか考えていないのか?」
すかさず怒るルーカス様。
「あの、私は大丈夫ですわ。長い間眠っていてごめんなさい。早速食事を作るわね」
皆に案内され、厨房へとやって来た。すると
「君がアリーだね。長い眠りから目覚めた様で。おはよう。俺はヴィーノだ」
「俺はバラン」
「僕はグラディオンだよ。よろしくね」
久しぶりに会うお兄様たちやグラディオンは、相変わらず元気そうでよかった。作戦通り、他人の振りをしてくれている3人。でもなぜだろう。グラディオンが若干笑いを堪えている様な…
「彼らは各隊の隊長たちだよ。まあ、君は誰よりもよく知っていると思うが…」
何やらルーカス様がブツブツと言っている。最後の方は聞こえなかった。とにかく、他人のフリをしないとね。
「各隊長様、アリーです。どうぞよろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。そしてすぐに厨房に向かい、料理を始めた。
「アリー、俺たちの隊の分も食事も頼む。君の料理は美味しくて魔力を引き出してくれると評判だからね。10日以上寝ていたんだ。魔力も有り余っているだろう」
そう声を掛けてきたのは、ヴィーノお兄様だ。もう、お兄様ったら。さっきから寝ていた寝ていたと、人聞きが悪んだから。
「はい、分かっていますわ。ヴィーノ隊長、ブツブツ文句ばかり垂れていないで、さっさと魔物を倒してきてくださいね」
そう笑顔で答えてやった。本当にお兄様は!
4つの隊が合わさったんだ。総勢約200名程度にもなる大所帯。一度にたくさんの料理が作れる様、いつもよりたくさんの材料と調味料を並べ、料理を作る。そして、出来たものから、どんどん出していく。
ただ…200人近くで一気に食べるため、作っても作っても足りないのだ。
「アリー、皆お替りはまだかとブーブー言っているぞ。早く作ってやれ」
文句を言いに来たのはヴィーノお兄様だ。
「ちょっとお兄様、文句ばっかり言っていないで、少しは手伝って…」
「ここでは兄妹と言うのは内緒にしておく約束だろう。本当にお前は!」
すかさずお兄様に怒られてしまった。
「ごめんなさい。気を付けますわ」
「謝罪はいいから、さっさと料理を作れよ。いいな、俺もまだ全然食べたりないんだ。あと、俺は牛タンシチューが好きだ。すぐに作れよ」
さらにリクエストまでしていくお兄様。本当にあの男は!それでもリクエストに応え、牛タンシチューも作った。
どうやら目覚めたのがお昼だった様で、なんとか全員お昼ご飯を食べさせた。でも、次は夜ご飯を作らないといけないのよね…
食後討伐に向かった皆を笑顔で見送ると、すぐに片づけ開始だ。既にお兄様たちとグラディオンから、夕食のリクエストまで頂いている。本当に、家の一族は我が儘なんだから!
後片付けが終わると、すぐに夕食の準備に取り掛かった。とにかく人数が多いため、あらかじめ準備をしておかないと、間に合わないのだ。案の定、晩御飯の時間になると、早く食べさせろとお兄様たちがギャーギャー騒ぎだした。
さすがの我が儘っぷりに、ダイたちもドン引きだ。
「アリー、あの隊長たち、マジで子供みたいだな…それにしても、ヴィーノ隊長とバラン隊長、お前に似ていないか?」
「俺も思った。特にバラン隊長とお前、そっくりだぞ」
ここに来て顔が似ている疑惑が持ち上がってしまった。そりゃ同じ両親から産まれた兄妹なのだから、似ていても当然と言えば当然なのだが…
「そう?髪や瞳の色が同じだから、似ている様に見えるのではなくって?」
「そうかな…よく似ていると思うが…」
「おい、アリー。俺がリクエストした野菜たっぷり海鮮リゾットはまだか?」
ダイの言葉を遮るように、バランお兄様のリクエストが飛ぶ。
「リゾットなら、既に出してますよ」
「それが無くなったから言っているんだ。早く追加を作れ!」
あぁ、もううるさいわね。
「すぐに作って持って行きますから、少しお待ちください!」
そう伝え、席に戻らせる。その後も、お兄様たちの我が儘っぷりに振り回されながら、なんとか晩御飯を乗り切ったのであった。
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