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第42話 ユニオンアース教を壊滅させるように仕向けました。でも保護した彼女の故郷は……
第42話 ユニオンアース教を壊滅させるように仕向けました。でも保護した彼女の故郷は……
ナディアちゃんを保護したあと、趣味の悪い地下室に氷漬けの男を放置して上に戻ってくる。
そして再び『絶・隠行術』を使って教会の奥まで進む。
金ぴかのドアがあったので、多分これが教主のいるところだろう。
わかりやすくていいな。
一応押してみるけど開かないので、空間魔法で無理やり突入。
そこでは2人が何やら話している。
◇◇◇
「この分なら勝てるな。多国籍軍とて弱いものよ」
「ええ。案ずるより産むがやすし、でしたな」
「長年かけて集めた物資、有用なスキルやジョブを持つ者、あとは数を揃えるだけ。サイロとナディアの組み合わせは最高の拾い物だった」
円卓の上座に座る男が自慢げに話す。
「あとは不平等の是正などの建前を説けば弱く愚かな民衆はついてくる。何もせず、文句ばかり言い、努力はせず、他人の足を引っ張る…… そうした民衆が望む理想を用意し、我々は民衆を利用する」
「アヴドゥール様、素晴らしい相互関係ですな」
「そうだ。そして宗教とは最高の洗脳装置だ。人間の科学技術がいくら進歩しようが、ジョブやスキルが備わろうが弱い心を克服することなどできぬ。宗教を使えば容易く弱い心を利用できる。特攻自爆も辞さない信者を用意すればよい。帝国のように力ずくで押さえつけていつ爆発するとも知れぬ爆弾を大量に抱えるなぞ愚の骨頂だ」
「全くです。道化しか能のないピエロにはサーカスを出て行ってもらうべきですな」
◇◇◇
うわお。言いたい放題じゃねーか。
だけどそれもここまで。
とりあえず教主のユニークスキルを反転して失わせる。
ジョブも反転させて【バトルマスター】から【下級戦士】にしておく。
もう一人の【ルームマスター】は今は据え置きだ。
ここで消しちゃうとこの拡張された教会内部がなくなってしまって悪事の証拠とかが消えるからだ。
ジョブも下級の【盗賊】だったから何もしなくていいや。
そして、外へ出てあらためて前線に戻る。
状況は変わらない。
【コピーアンドペースト】が消えても、その結果までは消えないようだ。
しょうがないので、
(【リバース】発動! この場にいるユニオンアース教徒のユニークスキルの有無を反転する!)
(【リバース】発動! この場にいるユニオンアース教徒のジョブを反転する!)
これで、最前線の者たちの【広範囲化】が消えて、パワーシールドとサイコシールドが単体用に戻り、随分みすぼらしくなった。
ジョブも【騎士団長】から【下級騎士】になったので防御効果も貧弱に。
魔法使い軍団はジョブが【マジックマスター】から【下級魔法使い】に格下げ。
ヒーラー軍団もジョブが【ハイプリースト】から【クレリック】まで下がった。
錬金術師たちは変わらなかった。
つまり【アルケミスト】がちょうど真ん中の強さということだ。
いきなり目に見えて弱体化したユニオンアース教徒に隠し切れない動揺が走る。
多国籍軍も戦いに関してはエキスパートだ。
そちらも一瞬混乱していたがどうやら弱体化したことを肌で感じ、あとは今までの憂さ晴らしとばかりに蹂躙していた。
例外は露支那軍で、こちらは僕が【リバース】でユニークスキルを有する者を対象にユニークスキルの有無を反転し、さらに上位ジョブを持つ者に限定してジョブを反転したのだ。
つか、忘れてないから。
露支那帝国によって僕の両親が殺されてること。
これぐらい可愛い復讐だと思うよ。
そして仕上げは、【ルームマスター】のスキルの一部をいじくることだ。
今のままだと【ルームマスター】の許可がないと本部機能が入っている教会に入れない。
だから、【リバース】でルームマスターが支配する空間に入るためのルームマスターの許可が必要、という部分を反転し、許可を不要にしてやった。
これで出入りは自由。
最強のセキュリティが一瞬にしてガバガバに。
◇◇◇
貴重なお休みの日をほとんど使ってユニオンアース教の無力化に成功。
これだけお膳立てをしてあげたので多国籍軍はあっという間に盛り返して本部を陥落させた。
大多数の信徒は殺害もしくは捕縛。
5人の幹部のうち4人は死亡、残り1人の幹部と教主は拘束され裁判にかけられるという。
露支那軍が独自に動いていた件については、三日月さんが調べた結果、サウジを滅ぼしてダンジョンを独占するつもりだったことがわかった。
で、こっそりそれを阻止しようと動いて、かろうじて首都の殲滅は防いだがそれ以外の町などは半数以上が滅んでしまっていた。
やっぱり数は力だよね。
三日月さん一人で首都を守っただけでも勲章ものだと思う。
ノーベル平和賞もらってもいいんじゃないかな。
政治的な思惑ありきだから無理か。
詐欺師でももらえるらしいし。
また、ユニオンアース教の自爆攻撃もあった。
本部が陥落した後、残っていた狂信徒たちが露支那軍を石油貯蔵庫までおびき出し、そこで周りも巻き込みつつ派手に自爆したのだ。
これから毎日石油を燃やそうぜ?
結局石油の貯蔵されていた分は炎上してなくなり、古くなっていた掘削施設もまとめてなくなったので、第二第三のユニオンアース教が出る可能性はほぼなくなったと言える。
他の産油国はとっくに石油を諦めているからね。
そもそも、何十年も全く使われなかった石油って使えたの?
って思うんだけど可能にするスキルがあるのかもしれない。
露支那軍の単独行動については、ユニオンアース教本部ヘの物資の供給源を断つための行動だったとして発表されていた。
今回の作戦で一番打撃を受けたのが露支那軍で、他の参加国はさして被害がなかったので特に否定はされなかった。
政治的な配慮なのかもしれない。
要は勝手に行動して勝手に被害を受けたんだから触らぬ神にたたりなしというやつだ。
◇◇◇
研修生として探索者協会から派遣されていた僕らは一足先に帰ってきて、美城さんに世話をお願いしていたナディアちゃんを治すことにした。
手順は簡単で、『生命の雫』をエリクサーから作成して服用させるだけ。
これで薬で壊されていた精神も回復した。
したのだが、つらい記憶は残っていてこればかりはなかったことにできない。
ジョブやスキルがあっても万能というわけではなく、カウンセラーを手配することにした。
僕たちが勝手に助けたのだから、最後まで面倒見なければいけないよね。
◇◇◇
「お兄ちゃん、私の故郷に連れて行って?」
とナディアちゃんに言われたのは、ユニオンアース教の壊滅作戦が終わってからだいたい3か月後、僕らが2年生に進級してしばらくしたときだった。
カウンセラーいわく、3か月でここまでの復帰はかなり早いという。
この間に僕たちとも普通に会話出来て、日本での生活にも慣れたように見えていた。
僕のことはお兄ちゃん、玲やフランはお姉ちゃん、三日月さんのことはお姉さんと呼ぶまでになっていた。
なお、三日月さんの年齢は…… 禁則事項です。
ナディアちゃんの故郷についてはみな今まで意図して触れていなかったのだが、自分から申し出るということはいろいろと覚悟ができたということだろう。
ナディアちゃんに故郷の村を思い浮かべてもらって、テレポートする。
そこには、がれきを片付けている日本の自衛隊の姿があった。
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