第3話 犬を助けりゃ仲間に変わる、アオシフター登場!

 「私の名はコブジーと申します、一人で旅芸人をしておりました」

 

 街道をある程度進んだ茶店で、コブジーさんが身の上を語り出す。


 「ヤチヨ村で、切れの良い舞を舞われたのを覚えております」

 

 アカネがコブジーさんの事を思い出した。


 「ええ、そこから運に恵まれて故郷の青犬村あおいぬむらに錦を飾れました」

 

 一旦語り終えるコブジーさん。

 

 「だが、そこで事件が起きて逃げて来たと?」

 

 太郎が問いかけると頷くコブジーさん。


 「村は桜の名所で私は実家の兄のサカジーとも和解でき、兄弟仲良く隠居暮らしをしていたのですが村に恐ろしい侵略者が現れたのです!」

 

 コブジーさんが涙を流す。

 

 「……決まりですな」

 

 「ああ! コブジーさん、あんたは運が良い♪ 俺達をそこへ案内して下さい!」

 

 「ありがとうございます、変身勇者様方っ!」

 

 コブジーが泣きながら礼を言う、青犬村を救う事を決めた太郎とアカネであった。

 コブジーさんから、茶店の支払いと言う報酬を受け取り青犬村へ向かう三人。


 「むむ? 何ですか、あの餓鬼に似た物の怪は?」

 

 「ゴブリンじゃねえか!」

 

 「ひぃっ! あれはワルジーの手先です!」


 街道を進む三人の前に現れたのは、灰色の肌をした小鬼の群れ。

 地球から来た太郎から見ればゴブリン、現地民のアカネには地獄の餓鬼。

 依頼人のコブジーからは敵の手先と三様の見方となった。

 

 「良し、アカネはコブジーさんを頼む!」

 

 太郎が宣言する。

 

 「いえ、ここは私が?」

 

 「……俺はお前を守りたい!」

 

 「……はい、承知いたしました♪」

 

 短いやり取りを終え、太郎がゴブリン達にツッコむ。

 

 「ゴブリン共、成敗してくれる! グンバイスマ―ッシュ!」

 

 太郎がシフトチェンジャーでゴブリン一匹を叩き潰し爆散する!

 その時の衝撃波で、他のゴブリン達の首が飛んだのであった。

 

 「流石太郎様、お見事でございます♪」

 

 太郎を褒めるアカネ。

 

 「……へ、変身されなくてもお強いですな!」

 

 唖然とするコブジーさん。

 

 「ゴブリンなど、体操にもならん♪」

 

 土煙をバックに、勝利の残心を決める太郎であった。

 

 「太郎様、先ほどのお言葉嬉しゅうございました♪」

 

 コブジーさんが見ていない所で太郎に耳打ちするアカネ。

 

 「まあ、大事なお嬢さんをお預かりしてるわけだし」

 

 こちらも小声で答える太郎。

 

 「何を申されます、私は身も心も貴方様に捧げておりますよ♪」

 

 アカネが微笑む、二人の間に絆が出来て来ていた。

 

 そして見えて来た青犬村は、聞いた話はどこへやらの有様であった。

 

 「……む、村が! 私の村が灰だらけにっ!」

 

 家々は朽ち果て、田畑は灰に覆われておりとても桜の名所とは別物であった。

 

 「アカネ、口を覆うぞ? コブジーさんも」

 

 太郎はヤチヨ村で神器として手に入れていたベルトポーチからマスクを取り出し、アカネ達に渡す。

 

 「この状況ではありますが、生き残りを探しましょう」

 

 アカネが太郎に提案する。

 

 「ああ、助けられる命があるなら助けねば」

 

 太郎も同意する。

 

 「様変わりし過ぎではありますが、土地勘はありますので」

 

 コブジーさんの案内で、民家のある所を捜索する一行。

 

 「ぞ、ゾンビだと!」

 

 「死人返りか!」

 

 「た、田吾作さんかっ!」

 

 家々を回り生存者を探していた一行は、ゾンビとなった村人を戦って倒して回る羽目になった。


 ある程度の捜索とゾンビ退治を終えた一行は、ひとまず屋根などが無事だったコブジーさんの屋敷に行き休ませてもらう事となった。


 「お二方、ろくなおもてなしもできませぬが当家にてお寛ぎ下さいませ」

 

 屋敷の居間でコブジーさんが太郎達に頭を下げる。

 

 「いや、休ませてもらえるだけで何よりだぜ」

 

 演技ではない素のテンションで語る太郎。

 

 「……かたじけない、お世話になり申す」

 

 アカネの方は演技を解かず礼を言う。

 

 「取り敢えず飯だな、コブジーさんの分も用意するか」

 

 太郎が自分のシフトチェンジャーをポンっと、軽く手で叩く。

 すると太郎の目の前に、重箱と徳利が人数分現れた。


 「な、何と摩訶不思議な!」

 

 コブジーさんが驚いた。

 

 「オーガの神、ヤチヨ様より授かった神器の力です♪ ささ、召し上がれよ♪」

 

 アカネが笑顔で胸を張る。

 

 「祖母ちゃんの弁当か、初めて食うから楽しみだな♪」

 

 太郎が重箱を開けると、中から虹の光が溢れ出だした。

 

 コブジーさん達も重箱を開ければ、次々と虹色の光が居間を満たす事となった。

 

 「いただきます♪」

 

 太郎が音頭を取り食事が始まる、金色に輝く炊き込みご飯やら謎の肉や魚の焼き物に野菜のお浸しや煮物と手の込んだ御馳走であった。

 神の御馳走を平らげ終えた一同、全員が感謝の合掌をして涙を流した。

 

 「あ、ありがたや~~~っ♪」

 

 特に滂沱の涙を流したコブジーさんに起きた変化を見て、太郎とアカネは驚いた。

 

 「ごちそうさまでした♪ ……って、コブジーさんの顔の瘤が消えてるっ!」

 

 太郎は自分が食べた料理がただの料理ではないと実感した。

 

 「……流石ですヤチヨ様、私も精進いたします!」

 

 アカネは感嘆しつつも義理の祖母となる女神の腕前を見せつけられて、自分も太郎の胃袋を掴むべく料理の腕を磨くと誓った。


 ヤチヨの弁当ですっかり元気を取り戻した一同、改めて村を滅ぼした悪党の退治について話し合う。

 

 「敵の名は、ワルジーと申す西方より来た学者でございます」

 

 コブジーさんが敵の名を語る。


 「このワルジーが、我が兄のサカジーの隣人となった事からが始まりで兄に対して執拗に桜を調べさせろだの犬を寄こせだのと迷惑をかけてきたのでございます」

 

 「お兄上はさぞかし迷惑をされたのでしょうなあ?」

 

 アカネが相槌を打つ。

 

 「まさか、ご家族に死人が出たりしたのか?」

 

 太郎が何かに気付く。


 「……はい、徐々に兄とワルジーの険悪さは深まって行きその過程で義理の姉が不審な死を遂げ姪のチグサとイヌのシロが神隠しに」

 

 コブジーさんが涙ながらに語る。


 「どう考えても、犯人はワルジーとやらだな」


 「コブジーさんの顔の瘤もそ奴の仕業でしょう」

 

 太郎とアカネが話し合う。


 「お二方、私どもと村の仇を討つべくお力添えを!」

 

 コブジーさんが頭を下げ、太郎達が頷く。

 そして一同は打倒ワルジーを目指して、出撃した。


 「あ、兄の屋敷が消えて謎の砦が!」


 辿り着いた先でコブジーさんが叫ぶ。

 

 「あれは、話に聞く西の国の建物でしょうか?」

 

 アカネが呟く。

 

 「……俺の世界で言う、悪の組織のアジトだな」


 そこに立つのは、コンクリート製の研究所風の建物。


 『ギ~ヒヒ♪ 生きておったか、コブジー♪ もはやこの村はワシの物じゃ♪』

 

 建物のスピーカーから響き渡るのは嫌味な老人男性の声。


 「おのれワルジー、姪のチグサを返せ!」


 コブジーさんが叫ぶ。


 「太郎様、ここは一気に破壊しましょうか?」

 

 アカネが太郎に問いかける。


 「いや、調べ物が必要になるのでまずは敵だけを倒すブレイブシフト!」

 

 太郎がシロシフターになり、アカネもアカシフターに変じる。


 『コブジーよ、貴様、変身勇者を連れて来たな? ならばこちらも生まれ変わったチグサを返してやる♪』


 スピーカーからのワルジーの声と同時に施設の門が開き、中から巨大な青い毛の犬型の怪物が飛び出して来た!

 

 「危ないっ!」


 シロシフターがコブジーさんを助けて跳び、アカシフターがチグサを腕で止める。

 

 「女子を犬の怪物に変えるとは何たる外道な!」


 アカシフターが怒りつつ力を込めてチグサを抑え込む。

 

 「そ、そんな! チグサ、チグサを救って下され!」


 シロシフターに懇願するコブジーさん、その時シロシフターのシフトチェンジャーが輝きサッカーボール大の桃饅頭が出現した。


 「コブジーさん、あんたは運が良い♪ これで姪御さんを救えるぞ♪」


 桃饅頭を手にした事でその効果を知った、シロシフターがアカシフターに抑え込まれてもがくチグサの口の中に桃饅頭を放り投げる!


 すると、チグサの体が光り輝き白い犬耳と尻尾を生やして青い忍装束を着た青髪の美少女の姿に変化した。


 「な、チグサ~~~っ!」


 一応人の姿になった事に感涙するコブジーさん。

 人型になったのでチグサから離れたアカシフター。


 「叔父上! チグサは変身勇者へと生まれ変わりました、ブレイブシフト!」


 苦無くない型のシフトチェンジャーでチグサは、犬の頭を模したマスクに忍者を模したヒーロースーツを身に纏う変身勇者となった。

 

 「……アオシフター、推参にございます」


 こうして新たな変身勇者、アオシフターが誕生したのであった。

 

 『ば、馬鹿な! ワシの最高傑作が、更に変わっただと!』


 「馬鹿は貴様だ、アカシフター! アオシフター! ブレイブシフターズ出陣!」

 

 シロシフターがシフトチェンジャーを振り、ワルジーの研究所へと駆け込む。

 

 「お供いたします、我が殿!」

 

 アカシフターが追いかける。

 

 「……ワルジー、殺すべし!」

 

 復讐心に燃えるアオシフターも追従した。

 

 「チグサの事もお頼み申します、シロシフター殿」

 

 コブジーさんは、成り行きを見守った。

 

 研究所内での戦闘は、ブレイブシフターズには赤子の手を捻るようなものだった。

 

 「こちらです、我が主!」

 

 アオシフターが先導し、シロシフターとアカシフターが扉や罠を破壊して進む。

 そして辿り着いた先の戸をアカシフターが金棒で粉砕し突入。

 

 「おのれ、裏切り者のチグサにブレイブシフターズ!」

 

 嫌味そうな顔をした白衣姿の老人が唸る。

 

 「黙れ、父と母と村の仇! 殺すべし!」

 

 アオシフターも唸る。

 

 「小賢しい、元ブラックテイル一の科学者ドクターワルジーを舐めるな!」

 

 ワルジーが叫び、自らの体を黒いトロールへと変化させる。

 

 「ブラックテイル? 悪の組織の名前か!」


 「殿、アオシフターに本懐を遂げさせてあげましょう!」


 シロシフターが叫ぶも、アカシフターに羽交い絞めで止められる。


 ワルジーとアオシフターの戦闘は、アオシフターの方が上過ぎた。


 「力が自慢なら、力で滅びよ!」


 アオシフターが自らの手足を肥大化させ、トロールとなったワルジーを手四つで抑える。


 「……終わりだ、ウルフバイト!」


 止めは、アオシフターのマスクが変形しワルジーの頭部を噛み砕いて倒した。

 青犬村を滅ぼした悲劇は、ブレイブシフターズにより終息したのであった。

 

 村人達の弔いに、ワルジーの資料の調査を終えたブレイブシフターズは旅立ちの時を迎えた。


 「皆様お世話になりました、チグサの事も宜しくお願い申し上げます」

 

 街道で太郎達に礼を言うコブジーさん。


 「叔父上もお達者で、ヤチヨ村でチグサの帰りをお待ち下さい」

 

 チグサもコブジーさんに頭を下げる。

 

 「それでは行こうか、お達者で♪」


 太郎もコブジーさんに別れを告げて歩き出すと、アカネとチグサがそれに続いた。

 

 「して、ブラックテイルとはどのような悪党で?」


  アカネが太郎に尋ねる。


 「簡単に言えば、俺のいた世界とも違う場所から来た悪党だ」

 

 太郎が答える。


 「ブラックテイル、殺すべしです」

 

 新たな仲間、チグサの目のトーンが消える。

 かくして、ブレイブシフターズに打倒すべき敵と新たな仲間が誕生し旅は続く。

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