第2話 出会って、お見合って? アカシフター登場!

 「シロシフター様、お助けいただきありがとうございました♪」


 シロシフターに変身した太郎に礼を言う赤鬼の少女、薪は地面に置いている。


 「ああ、無事で良かった♪」

 

 変身を解除して太郎の姿に戻ると、少女の目線に合わせて身を屈め微笑みかける。


 「お気遣いありがとうございます、お優しいお顔の方なのですね♪」

 

 少女が頬を染める、おませさんなお年頃らしい。

 

 「俺の名は桃園太郎ももぞの・たろう、信じられんかもしれないが此処とは異なる世界から来た」

 

 と、名乗る。


 「ふむ? 確かに見かけぬ異装でございますね、そして神気が?」

 

 少女が相槌を打ったので続ける。


 「祖父の太助たすけがこの地で勇者として功を為して、女神ヤチヨを娶ったらしいんだけどそう言う言い伝えとか知ってるかな?」

  

 少女に軽く名乗り身の上を語る。


 「納得です! そちらの神気と、軍配の女神様の紋章からもしやと?」

 

 幼い身なのに丁寧な言葉づかいで畏まる少女、太郎の話を聞きながら彼を観察していたらしい。


 「ああ、かしこまらないで! 俺はまだ大して功を為したわけじゃねえから!」

 

 自分の顔の前で手を左右に振る太郎。


 「いえ! 女神様の眷属であるオーガとして、巫女様に仕える身ですので!」

 

 こちらもブンブンと首を横に振る少女、互いに謙遜しあいで話にならない。

 

 「わかった、それで良いから名前を教えて? ついでに村まで案内を頼む♪」

 

 太郎の方が折れた、このまま林の中で問答してても仕方ない。


 「畏まりました、私の名はイチヨと申します♪ ご案内も承りましたが、こちらも太郎様にお願いがございますが宜しいでしょうか?」

 

 イチヨが自分の頼みごとをしてくる。


 「ああ、出来る事なら引き受けるぜ♪ 薪割りか?」

 

 イチヨが割る前の薪を手にしていた事から、薪割りの途中かと思った太郎。

 

 「いえ、太郎様が退治したあの熊の骸を運んで下さいませ♪ 村で捌いて、太郎様の歓迎の熊鍋にいたします♪」

 

 イチヨがけろりと微笑んだ。

 

 「……マジか、何か逞しいな?」

 

 昔話ワールドの住人だなあと太郎は感じた、シフトチェンジャーを倒した熊にかざすと熊が吸い込まれた。

 

 「おお! 流石は女神様の神器でございます♪」

 

 「この軍配、便利な機能だな♪」

 

 同じ光景を見たイチヨと太郎は、シフトチェンジャーの機能に感動した。

 

 こうして、第一村人のイチヨと打ち解けた太郎は彼女の村への道を歩んでいた。

 

 「太郎様、ここがヤチヨ村の入り口です♪」

 

 近くのデカい石柱にはヤチヨ村と彫刻されていた、その先に広がるのは畑と農村。

 そして村の奥には巨大な鳥居が立つ山、太郎からすればわかりやす過ぎるほどに日本の昔話ワールドが広がっていた。

 

 「ここが祖母ちゃんの村か、何と言うか初めて里帰りした気分だぜ♪」

 

 太郎は少し浮かれていた。

 

 「喜んでいただけて光栄で御座います、それではお社へご案内いたします♪」

 

 イチヨに導かれ村の中に入る太郎、赤鬼に似た老若男女の村人達は全員キョトンとしていた。

 

 「村の皆様~♪ こちらの太郎様は、女神様と勇者様の血を引く新たな勇者様でございます~♪」

 

 太郎の存在を喧伝するイチヨ。

 

 「いやいや、ちょっと大事にしないでくれる?」

 

 イチヨに頼む太郎。

 

 「駄目でございます♪ ささ、その神器の軍配を掲げて下さいませ♪」

 断るイチヨ。

 

 「……あれか、村に受け入れてもらうには仕方ねえな!」

 

 太郎がシフトチェンジャーを頭上に掲げると、シフトチェンジャーが光を放ち村人全員が平伏した。

 

 「……俺、威光を借りるのは好きじゃねえけど宜しくお願いしま~す!」

 

 太郎は自棄になって、村人達に挨拶した。


 「これで、太郎様は村に受け入れられました♪」

 

 「いや、強制した感じの方が強いんだが?」


 「伝承では、先代様の頃は太助様の受け入れに際して女神様が直接村人達に拳を振るわれたと記録にありますが?」

 

 「いや、何してんだよ祖母ちゃん暴れん坊過ぎだろ!」

 

 太郎は額に手を当てた。

 

 「……私達オーガは、ヤチヨ様の荒ぶる闘気から生まれたそうなので」

 

 イチヨも遠い目をした。


 そうこうする内に辿り着いたのが、巨大な鳥居の立つ山の麓。


 「ここがヤチヨ様をお祀りする神社の参道でございます♪」


 「わりかし早く着けたな、運が良い♪ 今夜は、ここに頼んで世話になるか熊肉は宿代になるかな?」


 太郎的にはようやく今日の宿に辿り着いた感じであった。


 「宿代など他人行儀な事を言わず、実家だと思って下さいませ♪」


 「ある意味、田舎の祖母ちゃんの家なんだろうけどな? 初めて来た身だしね?」

 

 石段を登り、大鳥居をくぐる太郎達。


 「お帰りなさい、イチヨ♪ そちらの方はもしや?」

 

 竹帚で掃除をしていた、美しく長い黒髪の白い着物に赤袴の巫女さんが二人を出迎えてくれた。

 ただ、頭頂部に二本の角に真っ赤な肌と赤鬼の巫女さんであった。

 人間の太郎から見てもその巫女さんは美人で胸も大きいが、体付きは逞しく感じられた。


 「アカネ様、こちらは新たな勇者の太郎様です♪」

 

 イチヨがわ~いとアカネの足に抱き着き、太郎を紹介する。

 

 「まあ、やはり♪ 角で感じた神気から、納得いたしました♪」

 

 アカネも太郎を見て頬を染める。

 「初めまして、太郎です宜しくお願いします」

 

 アカネの年がわからないので太郎は一応、年上と仮定して挨拶をした。

 

 「それでは太郎様、本日は当社にお泊り下さい屋敷へとご案内いたします♪」

 

 アカネ達に太郎は付いて行き、境内にある屋敷へと案内される。

 

 「お邪魔します」

 

 いかにもな長者の家と言う屋敷に入る、庭には土俵や弓の的が壁に掛かっているなど武家屋敷とか色々混ざっていた。


 「いらっしゃい、君があいつの孫か♪」


 通された居間には神主姿の赤鬼の男性が待っていた。

 

 「初めまして、太郎と申します」


 男性と向き合い、正座して挨拶する太郎。

 

 「ああ、初めまして私の名はベニマル♪ 君のおじいさんの仲間だ♪」

 

 ベニマルの自己紹介に頷く太郎。


 「君が来たと言うことは、家のアカネにも旅に出る時が来たか♪ あいつにも嫁の貰い手がやっと出来た♪」


 先代のベニマル氏がとんでもない事を言い出した。

 

 「ええっ! いや、仲間は集める気でしたけど?」

 

 嫁とか言われても困る太郎であった。

 

 「問題ない、誰に似たのか乱暴者でキツイ娘だがよろしく頼む♪」

 

 言いたい事を言って、ベニマル氏はクールに去って行った。

 

 「改めまして、二代目のアカシフターことアカネと申します♪」

 

 入れ替わりでやって来たアカネは、バリバリに気合を入れてめかし込んでいた。

 

 「……いや、あの! お、お綺麗ですねっ!」

 

 太郎はアカネから発せらているオーラに押されていた。

 

 「はい、ヤチヨ様からもお許しをいただきました♪ 末永くお願いいたします♪」

 

 そして、口の動きだけでお・覚・悟・を♪ っと、行って微笑むアカネ。

 昔話にある、同意なき押しかけ女房と言うモンスターの脅威に太郎は被弾した。

 

 「……た、頼もしすぎるぜ! まさか地球でモテなかった俺に、こんな強制イベントが発生するとは思わなかった!」


 思わずアカネの前で本音を叫んでしまう太郎。


 「それはヤチヨ様のご加護です、これで私達に縁が出来ましたね♪」

 

 「祖母ちゃんの仕業かっ!」


 悪の組織の陰謀の如く叫ぶ太郎、自分に対して重い愛を持つアカネとの断てない縁が結ばれた。


 「私がいれば鬼に金棒ですよ♪ どんな相手だろうと、粉砕します♪」

 

 アカネが瞳を閉じて、明るい笑顔で太郎に微笑んだ。


 「……うっ、その笑顔はヤバいっ!」

 

 太郎はアカネの笑顔に心を射抜かれた。

 

 その後、太郎は自分が倒した熊の怪物で熊鍋をアカネやイチヨ達と食べた後の記憶が欠落して朝を迎えた。


 「さあ太郎様、旅立ちの朝ですよ♪」


 爽やかな笑顔のアカネに起こされて世話をされ、太郎は旅支度を整えたアカネと共に村人達に見送られてヤチヨ村を旅立った。


 「俺、色々と記憶がないんだけけど?」

 

 街道を歩きながらアカネに尋ねる太郎。


 「細かい事は良いではありませぬか♪ 太郎様、ブレイブシフトのお時間です♪」

 

 髪をポニテにまとめ上げ、赤い着物に灰の袴と武者姿に男装したアカネが叫ぶ。

 

 「誤魔化すな、ブレイブシフト!」

 

 太郎がシロシフターに変身する。

 

 「ブレイブシフト、アカシフター♪」

 

 アカネが調子良く声を上げて、棘付きの金棒を構えて走り出す。

 彼女のシフトチェンジャーは金棒型だった。

 赤鬼と鎧武者を混ぜ合わせたマスクとヒーロースーツを纏う。

 

 「やあやあやあ、悪党ども! 我が名はアカシフター♪ こちらにおわす、シロシフター殿の郎党にして変身勇者なり♪」

 

 先んじてアカシフターが叫ぶ。


 「アカシフター、元気が良すぎるぞ? だが、それで良い♪」

 

 シロシフターが続く。

 彼らが立つ崖の下には、緑の肌にギョロ目の禿頭の全裸の巨漢と言った怪物。

 

 「……え? た、助けが来たのか?」

 

 そして怪物に追い詰められ、足を怪我した頬にこぶのあるお爺さんだった。

 

 「いかにも、今助けるぞ!」

 

 「応っ!」

 

 変身してハイテンションな赤と白のブレイブシフターズが跳躍し、老人と怪物の間に割り込んで着地する。


 「こいつ、トロールか?」

 

 シロシフターが呟く。


 「いかにもトロールにござる、ここは我の腕前をご披露いたしまする♪」

 

 芝居がかったアカシフターが、混乱しているトロールに自分のシフトチェンジャーを振るう!

 野球ならホームラン、と言ったスイングでトロールを殴り飛ばしたアカシフター。

 だが、トロールもまだ死んではいなかった。

 立ち上がると絶叫して地面を殴り衝撃波を飛ばして来る。

 

 「ここは俺が、グンバイシールド!」

 

 シロシフターがアカシフターの前に割り込み、巨大な軍配の盾で庇う。

 

 「おお、素晴らしい男気ですな♪ かたじけない♪」

 

 「……止めは譲る、行くが良い!」


 シロシフターは何処からか取り出した薬を、お爺さんの足に塗り出した。

 

 「殿の下知、心得申した! カナボウバーニング!」

 

 アカシフターの金棒が真っ赤に燃え上がる。トロールはその炎に恐怖を覚えた。

 いつの間にか接近していたアカシフターが、炎燃え盛る金棒でトロールの脳天を叩き潰して大爆発を発生させた。

 

 「……是非もなし、他愛無し」

 

 クールに勝利の残心を決める、アカシフターであった。

 変身を解いた太郎とアカネ、助けられたお爺さんは二人に土下座した。

 

 「ありがとうございます、怪物退治に怪我の手当てとお助けいただいたついでにもう一つ二つお助け下さいませ!」

 

 太郎とアカネは互いの顔を見合わせてから、お爺さんの頼みに頷いた。

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