チート薬学4巻発売中!第945話 懐かしの薬と圧倒的強さ!

花の慶○さながらの城門突破をした二人は、一直線にマルティルがいる屋敷へと走る。

しかし、マルティル辺境伯の領地は、日々魔物の襲来を受けている。だからこそ、兵士達の行動は早く、すぐに二人の前に完全武装した兵士達が現れたのだ。


「ふむふむ、流石アレクが名前を出す領主なだけある。部下も統率が取れているな」


「ヤク様、感心している場合ではありません!いつの間にか囲まれています!」


薬学神は、腕組みをして頷きながら兵士達の素早い行動に感心していると、聖女が薬学神の腕を掴んでこれでもかとブンブン振り回す。


「あぁ〜、鬱陶しい!聖女は、自分の身を守れ!ある程度暴れればマルティル辺境伯も姿を見せるだろう」


薬学神は、その言葉を言い残すと、すぐさま剣を構える兵士達の下へと走り出した。そして、右手に持っているポーションを飲むと、加速して一気に兵士達の目の前に姿を現した。


「ほぅ〜、この速さに反応する人間がいるとは......なら、これは抑えきれるかな」


薬学神が、目の前の兵士に攻撃を仕掛けた瞬間、建物の屋上から矢が射られた。しかし、薬学神は難なく反応して避け、ニヤつきながら新たに魔法鞄から出した色違いのポーション3本飲んだ。


「次は、どう私を楽しませてくれるかな」


「全員、守牢の陣形」


薬学神は、楽しそうにゆっくりと兵士達に近付いていく。すると、リーダーらしき人物が、兵士達に命令をした。そして、兵士達は全員剣を鞘にしまって背中に背負っていた盾を地面に突き刺し、薬学神を円形状に囲うような陣形を取り出した。


「ふむふむ、そういうことか!ならば、お前達らの作戦がうまくいくのか、この身で試してやる」


薬学神は、おもちゃを見つけた子供のような顔をして先程と同じように神速の如き素早さで兵士達に迫る。だが、先程と同じように屋根から矢が射られた。更に先程とは打って変わり20本もの矢が降り注ぎ、薬学神へと命中した。


「ほ、ほう!弟子が開発した薬も使えるものだな。どこまでの強度があるか実験するとしよう」


薬学神に降り注いだ20本の矢は、全て跳ね返されるか当たった直後に矢の根元が折れた。

そして、薬学神が飲んだポーションは、アレクが少年時代に開発した体をダイヤモンドの硬さにする薬だった。


「全員臆するな!重装備兵は盾を持って、そのまま前進!槍兵は、重装備兵のあとに続き前進!あとの者は、待機」


兵士達は、矢をもろともしない薬学神の姿に少し臆するが、リーダーらしき人物の一声で平常心を取り戻して盾を構えた重装備兵が前進を始める。そして、槍兵がいつでも串刺しに出来る構えを取りながら重装備兵のあとに続いて進軍し始めた。


「王都の兵よりも統率が取れているんじゃないか。だが、そろそろ時間もないようだし、突破させてもらおう」


聖女の叫ぶ声を聞いて、敵が迫っていることに気付き、一瞬で終わらそうと決めた。次の瞬間、重装備兵の一人の盾はあっさりと粉々にした。更に、槍兵が突き出した槍も薬学神に当たるやいなやポキっと折れてしまう。


「アレクの薬と筋力を増強させる薬を混ぜると反則か。じゃあ、このまま強行突破させてもらうとしようか」


「もうよせ!お前の戦いぶりは見させてもらった。狙いは俺の首か?それならば、俺一人でよいだろう?こいつらは見逃してくれ」


薬学神が、右足を後ろに引いて突撃の構えを見せると、兵の間からマルティルが姿を現した。


「ん?マルティル辺境伯か?」


「いかにもマルティルで間違いない!お前が勝てば俺の首は好きにするがいい!だが、ここの領主として、俺と一騎討ちをしては貰えないか?何もなく無様に死ぬのは恥でしかないのでな」


マルティルは、剣を抜いて剣先を薬学神に向ける。その様子を見た薬学神は、マルティルの覚悟の良さに思わず笑みが溢れた。


「おもしろい!アレクが言うだけの......ア、アレクか!?」


「アレクなのか!?」


薬学神も呼応するように拳を突き出して戦いの準備をするが、そこへ急にアレクが姿を現した。


「え!?薬学神様に!マルティルじぃじまでなんでいるの?」


アレクは、町中に転移してきたつもりが、大勢の兵士といるはずのない薬学神と、街にも関わらず剣先を向けるマルティルに驚くのだった。

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