チート薬学4巻発売中!第944話 薬学神と聖女に迫りくる影と薬学神の薬は今も尚健在!

各国が、魔神の脅威に晒されている頃、聖女と薬学神は放浪の旅を続けていた。


「薬学神様、まだ離れていますが、大量の禍々しい何かが迫っています。何かはわかりませんが、このままでは街の人達が犠牲に......」


聖女は、遠く離れたところから大きく膨れ上がる禍々しいオーラを感じて立ち止まる。


「はぁ、また問題ごとか......神じゃない私には何がいるか、さっぱりわからないが、街を見放すわけにはいかないな。二人でどうにかなる相手か?」


自らの薬で神を辞めた薬学神には、禍々しいオーラなど一切感じることは出来なかった。しかし、聖女であり短い期間ではあるが、自らが育てた弟子が言うのであれば間違いはないと感じて倒せる相手かを尋ねた。


「薬学神様......薬学様を卑下するわけではございませんが、今の私達では無理です。聖王国でも感じたことのない禍々しいオーラなのです。ずっと我慢していましたが、先程から震えが止まりません」


聖女は、禍々しいオーラの先を見つめて恐怖する表情と我慢してはいるものの小刻みに足を震わせながら答えた。


「もう薬学神ではないと何度言えばわかるんだ!ヤクと呼べと言っただろ」


薬学神は、危険が迫りくる中、何故だが聖女の薬学神と言った言葉が気に食わないようで、聖女の顔に顔を近付けて捲し立てる。


「薬学......そんな顔で見ないで下さい!ってヤク様、今はそれどころではないのですよ!」


聖女は、またしても薬学神と言いそうになるが、神でもない薬学神からは発せられないはずの未知の圧に仕方なくヤクと呼ぶ。しかし、どんどんと迫りくる化け物の気配に聖女は焦りの色を見せた。


「まぁ、冗談はこれくらいにするとして......禍々しいオーラは、聖王国の比ではないか。ならば、とうとう動き出したのかもしれない。今すぐあの街に戻って聖域を展開しにいくぞ」


「は、はい!」


薬学神は、絶対に冗談ではない雰囲気を出していたが、あたかも聖女をからかったと言わんばかりの表情で語り、道中で寄った街に戻ることを宣言した。





禍々しいオーラの何者かは、進軍速度が遅いので、聖女と薬学神が街に着いても、まだ少しの猶予が残されていた。

禍々しい何かが迫っているとは知らない人々は、列をなして街に入るための検問を待っている。


「ヤク様、門の前に人が列をなしています!このままでは、中に入る事もままなりません。どうしましょう?」


検問を待つ人々の列を見た聖女は、街に入って住人を逃がすことが出来ないと考えた。


「私にいい考えがあるからついてこい!」


薬学神は、魔法鞄の中に手を入れながら、門兵がいる場所へと突進している。聖女は、驚きの表情を浮かべているが、いい案が浮かぶ訳でもないので、何も言わずに薬学神のあとを追った。


「そこの二人!今すぐ止まれ!」


二人の門兵は、帯刀する剣に手をかけて、いつでも抜ける態勢に入る。しかし、薬学神は一切聞く耳を持たず、そのまま門兵に迫る。


「今すぐ、私達を通せ!マルティル辺境伯に至急伝えることがある」


「お前のようなやつを辺境伯様に合わせるわけにはいかない......」


何故、薬学神がマルティル辺境伯を知っているのかはわからないが、薬学神は街の長であるマルティルを巻き込むつもりのようだ。

しかし、二人の存在を知らない門兵二人は、街に危険人物を入れまいと剣を抜いて構えた。


「真っ当に職務を果たしているところ悪いが、そこで暫く寝ていてもらう。体に害はない」


薬学神は、剣を抜いた門兵目掛けて、魔法鞄から取り出した睡眠薬入りのポーション瓶を投げつけた。神時代に作った薬ともあって、門兵はすぐさま倒れるように眠りについたのだった。

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