第940話 起床したそこは火の海!地獄と化した世界を救えるのか!?

「ハッ!ヒルコの言った通り神力が少し戻ってるよ。これで、聖女様を探せるかもしれない」


アレクは、勢いよくベッドから起き上がると、体を触って神力の有無を確かめた。


「アレクくん、目覚めましたか。一言でお伝えすると、世界が危機に晒されています」


アレクが、神力を確認していると、オレールは最初からとんでも無い発言をした。


「オレール!世界が危機ってどういうこと!?もしかして、魔神か創造神様が動き出した?」


「アレクくん、よく聞いてください!時間があまりありませんので、一度の説明で理解してください」


普段焦る様子と一切見せないオレールだが、珍しく神妙な面持ちで話し始めた。


「わかったよ。お願い」


アレクは、ベッドの縁に座ってオレールの方を向く。


「魔物の国と王国は消滅しました。私とセイラン男爵で、出来る限りの人を転移させましたが、大量の人が亡くなっています。そして、魔ノ国も公国もエルフの国も大和ノ国もリグリス連邦も甚大な被害を受けました。攻撃を仕掛けてきたのは、総助と弦馬と大量の道化師です」


一切余裕がなく心此処にあらずといった様子で、オレールには無いような話し方をする。アレクは、思ってもみなかった言葉が飛び出してきたので、驚きを通り越して無表情のまま聞いていた。


「......」


アレクは、無表情のまま色々なことが頭をよぎって思考が停止してしまい、言葉がうまく出てこない。


「一番気になっているヘルミーナさんは、無事です。更に、大樹くんとマンテ爺の活躍あって、王国の住人を数多く救うことが出来ました。そして、今は魔物の国の地下に避難しております」


「.......ふぅ〜、オレールありがとう。その言葉を聞けただけで少し安心したよ。他のみんなは戦ってるのかな?」


アレクは、オレールの言葉を聞いて安堵し、大きく息を吸って吐いた。


「はい。戦える者は、今も戦場で戦っております。アレクくんが作ってくれていた薬のお陰で、なんとか前線を死守している状態です。しかし、長くは保たないでしょう」


「ちょっと待って!師匠達がいて攻めるどころか前線を守るのに精一杯.......」


ノックスの安否を聞いてないが、死ぬわけないと思っているアレクは、ノックスやデストロイやパスクがいて死守するのが精一杯と聞いて何が起こっているのかと思ってしまう。


「はい!説明が難しいので、直接戦場に向かってもらうしかありません。それはそうと、神力が戻ったのですね。あの者の働きが、無駄ではなかったと知り安心しました」


「何があったかはわからないけど、オレール達のお陰で少し神力を使うことが出来るようになったよ。それと、時間がないかもしれないけど、俺が寝ている間に起きた出来事も聞いてほしい」


アレクは、切羽詰まった状況ながらも、ヒルコ達と交わした会話をオレールに全て伝えた。オレールは、神達の考えが理解出来ないのと魔神相手に苦戦している最中、神達まで現れた場合、本当の終わりを迎えてしまうと考えた。


「話しはわかりました。アレクくん、早速で悪いのですが、大量に回復ポーションを作ってください。薬学神様を探すまで、私達がなんとかしましょう。この戦いと平和を取り戻すには、アレクくんとヒルコくんが鍵を握っています。どうかお願いしますね」


オレールは、話しを聞いてアレクとヒルコが動き出せるまで、全員でサポートし、前線を死守出来るかが、この戦いを左右すると直感的に理解した。


「うん!多少なら神力を混ぜた薬を作れるから、出来上がるまで皆に耐えてほしいと伝えて!あと、オレールはこの場にいてほしい。全ての連絡と薬を届けるのと薬学神様の下に連れて行ってもらう役目を任せたいからさ」


「任せてください。戦場の把握と希望がまだあることを、すぐさま皆に伝えましょう。アレクくんは、その間に大量のポーション精製を頼みます」


オレールは、通信の魔道具を取り出して、ノックス達にアレクが起きたことアレクとヒルコが全ての鍵を握っていること、そして神が反乱を起こすことを伝えた。


「こんな時に考えるようなことじゃないけど、大量のポーション作り懐かしいな。気合い入れて作らないと」


アレクは、陛下から大量のポーション作りを頼まれた過去を思い出して、少し口角を上げながら作り始めるのだった。

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