第941話 世界滅亡の危機!豪牙......

アレクが目を覚ます前に、起きた出来事は一瞬であった。


「少し悠長でした。世界中に解き放ちましょう」


「初めからやるべきことだったな。面白おかしく世界を無茶苦茶にしてから、ヴァンドームの野郎を殺すなど俺達の性に合ってなかったんだ。俺の最高傑作達よ、世界を火の海にしてこい」


総助は、魔物の国の上空から見下ろしながら不穏な言葉を言うと、別の場所にいた弦馬が万を超える道化師の集団を一斉に野に解き放った。万を超える道化師達は、ニヤリと笑って散り散りに世界の国々に向かう。


「総助、世界の崩壊もすぐだろう。俺は、ヴァンドームの野郎が崩れ落ちる様を見たいからな。共和国にいる大事な大事な弟子とやらに会ってくるぞ」


どこから漏れたかわからないが、ヴァンドームに対する恨みを相当なようであり、一番心にくるであろう弟子を攫いに共和国へと飛び立った。


「フフッ、では私もそろそろ初めましょう。黒炎弾ブラックフレイム


総助は、頭上に真っ黒く大きな円形の炎を出すと、そこから無数に小さな黒炎が魔物の国へと降り注がれた。

だが、黒炎は街に降り注がれる前にバリアによって弾かれる。


「これはこれは、あっさり死ねばよいものを抗いますね。では、これでいかがでしょう」


総助は、間髪入れずに黒炎を放つと、先程とは比べ物にならない禍々しさを放つ黒炎がバリアに当たる。すると、バリアは溶けたように融解し始めて、バリアの意味をなくし、無慈悲にも魔物の国へと黒炎が降り注いだ。


「フフッ、素晴らしいですね。阿鼻叫喚にはならず、弱き者を助けるですか......では、さらなる恐怖が......おっと危ないですね」


総助は、慈悲など与える気は毛頭なく、もう一度黒炎を浴びせようとすると、無数の刃が飛んできた。だが、総助は軽く体を捻って躱す。


「魔物の国に何してくれてんだ!ぶっ殺す」


留守を任されていた豪牙が、ノックスとの模擬戦で見せた全身から禍々しいオーラを漂わせる最終形態で登場し、総助を後ろから殴り飛ばした。


「まだ終わってないぞ。一気にカタをつけてやる」


豪牙は、殴る蹴るの連打を食らわせてから、総助の顔面を鷲掴みにして遠くへと投げ飛ばす。


「フフッ、人類とは何故こうも弱いのでしょう。私に滅ぼされるのを分かりながらも抗おうとする。それに、自分を犠牲にして他者を救うとは分かり合えない歪な存在ですね。ですが、そんな貴方に敬意を称して苦しませず殺してあげましょう」


投げ飛ばされた総助は、不気味な笑いを浮かべてブツブツと呟くと、こちらに向かってくる豪牙に向けて手をかざした。すると、豪牙は動きを止めて一瞬で灰になって崩れ落ちた。


「数秒のために抗うとは理解に苦しみますねぇ。うん?ただの打撃ではなかったと......これが、追い込まれた者の抗う力ですかぁ。実に面白いです。そろそろ、次の場所に行くとしましょう。流石に、この人数を相手にするのは、私でも分が悪いでしょうからねぇ」


総助は、外傷は見受けられないものの、内部にダメージを負っていることに気付いて人類の火事場のクソ力に称賛を送る。

そして、魔物の国の方向を見ると、何かを察して魔物の国から去って行った。





魔物の国が、総助によって襲撃を受けている頃、各国も道化師の進行により大打撃を受けていた。

その中でも王国には、他国よりも大量の道化師が進行をし、レオと騎士団で迎え撃つ構えを見せた。そして、王国の領土であるストレンの街にも大量の道化師が進行を開始する。


「何じゃ?外が騒がしいのぅ。祭りでもやってるんか?」


マンテ爺は、ラーメンの仕込みをしながら、外の喧騒を眺めていた。そこに、買い出しに行っていたヘルミーナが大慌てで息を切らせて帰ってきた。


「ハァハァハァハァ、大変よ!早く逃げなきゃ......」


「どうしたんじゃ?そんな慌てて。まずは、水でも飲んで落ち着くんじゃ」


ヘルミーナの慌てようとは裏腹に、敵の気配や悪の感情を感知していないマンテ爺は、落ち着いた様子で、大樹を抱っこしながらヘルミーナへコップに入れた水を差し出した。


「ふぅ。ありがとう。って、そんな場合じゃないのよ。門が破壊されて住民が襲われてるわ」


ヘルミーナは、コップを受け取ると勢いよく飲み干して一息ついた。しかし、すぐに表情を変えて道中に起こった出来事を伝える。


「何じゃと!?ワシが襲撃を察知できんとは......ヘルミーナ、大樹を抱えてワシの背中に乗るんじゃ!屋敷に向かうぞ」


マンテ爺は、ヨゼフとカリーネを救い出そうと、マンティコアの姿になり、ヘルミーナと大樹を背中に乗せて屋敷に向かうのだった。

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