第937話 大将軍散る!最後の最後まで噛ませ犬!?

リグリス連邦は、リーディンを含めた6人の騎士が次期王であるコルンと現王のバリチェロを護衛する形となった。そしてバルサークは、無事に意識を取り戻したが、記憶障害を起こしており、まだ復帰することは叶わないでいる。

国を裏切っていたハワード大将軍と大臣達と一部の貴族達は、奴隷になった者と極刑に処せられた者に分かれた。


「ハワード、久しぶりだな!刑が決まったから知らせに来た。単刀直入に言うが死刑だ」


リーディンは、格子の向こうで座って俯いているハワードに、あっさりと死刑宣告を言い渡した。

ハワードは、国外追放になっているはずのリーディンの声に驚いて顔を上げた。


「な、なぜお前がここにいる?」


リーディンがいることに驚くハワードは、刑の執行の話しは耳に届いていない。


「そりゃ、驚くだろうよ。お前達が、俺達を嵌めたんだからな。なんでいるのか?次期王のコルンが復帰させてくれたからだ。そんなことより、お前の残り少ない時間を大切にすべきじゃないか?明日には死刑だからな」


「クソ!またしても第三王子か......ま、待て!今なんと言った?ワシが死刑だと!?」


リーディンは、無表情のまま冷たく言い放つ。そして、死刑という言葉がやっと耳に届いたハワードは、信じられないといった表情で鉄格子を両手で握ってリーディンに迫る。


「......」


「なぜ何も言わん!大将軍であるワシの言葉が聞こえんのか!早く答えんか」


リーディンは、ハワードを見上げながら目が合っているにも関わらず一言も答えようとはしない。ハワードは、答えようとしないリーディンに苛立ち、鉄格子をガタガタと音が鳴るくらい揺らして怒鳴りつけた。


「哀れ過ぎて言葉も出ない。俺達を嵌めて手に入れた地位にまだ縋る哀れな男よ。バリチェロ、この姿を見て決心はついたか?」


「あぁ、少しでも改心していれば、ウズベル王国に頼み刑を軽くしてやろうと考えておったが、ワシが甘過ぎたようだ。ハワード、ここで刑を言い渡すとしよう。これより、刑を執行する!リーディン、これでよいか?」


バリチェロは、暗闇から姿を現して悲しげな顔をした。そして、明日と言っていたはずの死刑宣告を現時刻をもって言い渡す。


「バリチェロ王、今なんと!?ワシは、王のためを思って、こやつらを排除したのです!このような者と他国の者に、絆されてはいかん!考え直し......」


「ハワード、大臣に唆されておったのは知っておる。もう何も述べんでよい!あとは、約束通りリーディンに任せるとしよう。頼んだぞ」


バリチェロは、ハワードを哀れみの目で見つめたあと、淋しげな表情をしながら、扉を開けて外に出ていった。


「最後は、正々堂々といこうじゃないか!ほら、お前の剣も返してやる。俺を殺して逃げるか、ここで死を迎えるかの二択だ」


リーディンは、背負っていたハワードの大剣を持ち上げて床に放り投げると、自分の剣で鉄格子を斬り裂いてハワードがいつでも外に出られる状態にした。


「ブッハハハハ、これは滑稽滑稽!最後の最後まで、運はワシを味方してるわ!お前が辺境に追いやられておる間、ワシは研磨を積んできた。バリチェロ王もお前も八つ裂きにしてくれる!とくと後悔するがいい」


「御託はいい!さっさと終わらせて護衛任務に帰らせてもらう」


ハワードが、大剣を拾ったのを確認したリーディンは、身体強化を使って一気に近付き鋭い剣速で斬り掛かった。しかし、ハワードの大剣に阻まれてパリィされる。

ハワードの動きを見たリーディンは、腹を抱えて大笑いをした。


「アッハハハハ、そうかそうか!年だけ食っただけのひよっこだったお前が身体強化を使えるようになったのか!もしかして、さっきの威勢のよさは身体強化を使えるからなのか?」


リーディンは、30代前半でありハワードとは20歳くらい差があるように見えるのだが、ひよっこ呼ばわりをして馬鹿にする。


「そうだ!昔のワシではないわ!」


ハワードは、パワーの差で押し切ってやろうと、城で見せたように猪突猛進で突っ込んでいく。


「馬鹿なやつだ。俺がいつまでも同じだと思うな!」


リーディンは、いとも簡単にハワードの大剣を弾き飛ばして右手首を切り飛ばした。


「ぐぁぁぁぁ!ワシの手がぁぁぁ!許さん許さんぞ!」


「情けないやつだ!ただの身体強化で満足するからだ。身体強化には、更に上があるのを教えてやる」


リーディンの体に変化はないのだが、ハワードの大剣を吹き飛ばしたことや、今もハワードは反応すら出来ず、ただリーディンの残像を追って襲い掛かり、そのまま動きを止めて前のめりで倒れるのだった。

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