第936話 次期王二人の演説と愚王の嘆き!
レオは、急にバリチェロ王から話しを振られて何を言えばいいのか、戸惑いの色を示す。
「父上、急に言われてもレオ王太子も民衆も戸惑うと思います。私から民衆に説明をしてから、レオ王太子に話して貰いましょう」
「うむ。私は、戴冠する身である!新しい世代のお前達二人に任せるとしよう」
良いように話が進んでいるが、まだ同盟を組むとは言っていないレオからすると、うまくしてやられている気にしかならない。
「ここに集まった者、全てに聞いて貰いたい!私は、バリチェロ王から王位を継いで次期王に任命されたコルンという!そして、ここにいるのは、ウズベル王国の王太子であるレオである。私達は、この者達に救われた。まずは、レオの話を聞いてもらいたい」
コルンは、同盟国という言葉は出さず、救出されたと言った。しかし、レオは民衆の前に出された時点で良いように使われているのではないかと、余計勘繰ってしまう。
「始めましてウズベル王国王太子レオと言います。何故聞いたこともない国の人間が話しだしたのかと思う人達もいると思います。今回は、コルン第三王子の救援要請を受けて参りました。そして、リグリスには数多くの問題があり、バリチェロ王自ら問題を正そうと動いています」
レオは、ゆっくりと何が起きたのかを話し始めた。民達も、まさかここまで大ぴらに話してくれるとは思っていなかったので、追求するようなことは誰も発することはなく、レオの次の言葉を待っている。
「皆さんが一番聞きたい言葉は、先程の政策についてでしょう。バリチェロ王は、必ず有言実行すると思います。それに、王子二人の悪行を見て見ぬふりをしないのは見てわかるように腐敗した貴族などを粛清し、新しいリグリスへと生まれ変わらせることでしょう」
レオは、簡潔かつ民達が一番聞きたい内容を話す。そして、巻き込まれそうになった仕返しとはいかないまでも、バリチェロ王が話していない国内部のことまで伝えた。
バリチェロ王は、貴族の粛清に関しては、ごく一部の人間にしか話していなかったので、驚いた顔をしてレオを二度見する。
「ですが、私は他国の人間です。中には、私達のことを信じれない人もいるでしょう。その方は、今まで通り生活するもよし、去るもよしです。しかし、信じれる方は、御触書があり次第、城で手続きをしてください。私からは以上です」
レオは、大事なことを話して、あとは民衆達に全て判断を委ねる姿勢を見せた。そして、無駄なことは言わずに、壇上からすぐに下りる。
「レオ王太子、ありがとう。私からも、最後に一言だけ言わせてもらいたい。民衆あってのリグリス連邦というのは本当のことだ。包み隠さず全員に伝えるつもりである。裏切ることはしないと誓おう。それから、レオ王太子の言っていた御触書に関しては、2日後広場で公開する。待っていてほしい」
コルンは、レオの演説を聞いて、無駄な言葉を並べるよりも真摯に向き合う姿勢を見せるべきだと判断して、心に訴えかける言葉を述べた。その後は、バリチェロ王が締めくくり解散となる。民衆は、信用しているかしてないかはわからないが、知り合いに今日の話しをするために大急ぎで駆けていくのだった。
◆
バリチェロ王は、演説を終えた足で城に戻って、王子達と取り巻きがいる牢屋へ向かおうとするが、行く手を阻むように数人の貴族が待ち構えていた。
「バリチェロ、先程民衆にした話は本当なのか?先日、城で大変なことが起きたという知らせがあり、飛んできてみれば、有り得ない事態になっているではないか」
銀髪のショートヘアが似合う戦士といった女性が、王に臆することない言葉遣いで話しかけてきた。周りにいる5人の男たちも歴戦の猛者といってもおかしくない風貌を漂わせていた。
「リーディン......何故ここにおるのだ?国外追放にしたはずであろう?」
バリチェロ王は、驚きの声を上げて目の前にいる6人を見た。
「父上、私がリーディン達を国外追放ではなく、辺境の奥地で暮らせるように手配しました。あれは、リーディン達を邪魔に思った勢力による濡れ衣だったのです」
リーディン達は、国家反逆罪として突き出された際に、今までの功績に免じてバリチェロ王が、死罪ではなく国外追放にした。しかし、コルンはきな臭さを感じて、コルンの数少ない支持者と共に調べ上げた結果、濡れ衣だと判明して、コルンに発言権が与えられるまで、辺境の地で暮らして行けるよう支援していた。
「先に言っとくが、バリチェロを恨んだりはしてない。だが、俺達が帰ってきたのは、コルンが次期王になると聞いたからだ!で、さっきの話は本当なのか?」
コルンは、リーディン達に次期王になることと、もし可能であれば王の騎士になって貰えないかと懇願する手紙を出していた。
「民衆に話した話し本当である。だが、そのようなことになっていようとはな。大臣の所業やバルサークの変化に気付かず、あまつさえワシが操られてしまうとは......愚王にもほどがある。本当にすまなかった」
バリチェロ王は、自分の無能さに頭を抱える。そして、リーディン達に、これでもかというくらいに深々と頭を下げるのだった。
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