第906話 リグリス連邦がおかしくなった原因!
バルサークが、コツンコツンと靴を鳴らしながら、ゆっくりと階段を下りてきた。
「バルサーク様、お疲れ様です!なかなか牢に入ろうとしないデッドとラインに手こずっておりました!申し訳ございません」
ジキタリスは、姿勢を正して敬礼をした。
「構いません!貴方方、兵士も私の駒です。このようなことで、怒りをあらわになど致しません。それに、やっと邪魔者であった第三王子と護衛二人を排除できるのです!大変気分がいい」
バルサークは、全くの別人のような表情と話し方をした。しかも、コルンの投獄が計画のうちだと言わん口ぶりで話し出す。
「バルサーク!どういうことだ?邪魔者を排除......もしかして、父上や大臣が変わったのもお前の仕業なのか?」
「ほぉ〜、やはり第三王子は頭がいい。すぐそこに行き着くとは。しかし、あのような強い者達が来るのは予想外でしたが、結果的に貴方を陥れることができました。早く貴方が、堕落していればいいものをなかなか堕落しないせいで面倒でした」
バルサークの言葉に、コルンも護衛二人も予想外過ぎて、次の言葉がなかなか出てこない。
「相当驚いたご様子。ちなみに、バルサークという男も苦労しました。信念が強く残滓しか残っていない我の力では、すぐに堕落させることが出来なかった」
「バ、バルサーク......お前......誰なんだ!?」
コルンは、やっと正気に戻り、バルサークの口調や内容から全くの別人なのではないかと、恐る恐る尋ねた。
「やっと聞いてくれましたか。私?我?どっちでもいいか。ルシファーの残滓とバルサークの魂が掛け合わさった存在とでも思って下さい。ん?バルサーク......そんな悲しむでない。我が、この国を有効活用してやるのでな。フッハハハハ」
口調が色々変わるバルサークに、コルン達は恐れを覚えた。そして、ジキタリスはルシファーという言葉を聞いて、これは早くアレク達に知らせなければと思うのだ。
「どうやら声すら出んようだな。この国が、どのような未来になるか、この薄汚い牢獄から見ておくがいい。そこの者、こやつらが変な真似をせぬよう見張っておくのだ。いいな?」
「ハッ!畏まりました」
バルサークは、また靴音を鳴らしてゆっくりと階段を上っていく。そして、外で警備していたジキタリスの分身は、バルサークが去ったことを通信の魔道具で牢近くにいるジキタリスの分身に伝えた。
「コルン第三王子様、すぐに牢から出すことは叶わなくなりました」
「どういうことだ!お前もバルサークの仲間なのか!今すぐ俺達をここから出せ」
ジキタリスは、コルンに事情を説明しようとしたが、その前にデッドが鉄格子を掴んで、ジキタリスに食ってかかってきた。
「コルン第三王子様、護衛を静かにしてもらえませんか?説明するにしても出来ません」
「デッド、静かにしろ。敵に悟られたらどうするんだ!お前達は、ジキタリスさんの話しを最後まで聞け」
コルンは、静かながらに怒りの混じった声で護衛二人に伝えた。
「も、申し訳ございません!」
ジキタリスに対することより、大声を出したことに謝ったデッドは、自らの手で口を噤む。
「これから、現状をレオ王太子様にお伝えします。しかし、いつ救出に来れるか定かではありません。ですが、私達を信じて下さい」
「俺達は、信じるほか道はないからな。護衛と一緒に今後について話そうと思う」
コルンは、逃げることも出来ないので、腹をくくって、アレク達に身を委ねることにした。そして、コルンは地面にあぐらをかいて座った。
◆
陛下のいる城に転移をして、レオが説明のために陛下の下へ向かった。アレク達は、なかなかゆっくり眠るタイミングがなかったので、ベッドに横になった瞬間、眠りについた。
「陛下、ただいま戻りました」
「無事戻ったようで何よりである。だが、予定よりも早いような気がするのだが、何があったのだ?」
陛下は、レオの無事な姿を見て喜ぶが、海の向こうの遠い国に行ったにも関わらず、1週間ちょっとで帰ってきたことに、どうしたのかと思う。
「何があったのか話す前に、僕の裁量で戦争になるかもしれません。申し訳ございません」
「よいよい。余が、レオに全権を委ねたのだ。レオが、そうしないといけないと感じたのであれば、余は何も責めることはない。何があったのか聞かせてもらってもよいか?」
「はい!順序立てて話していきたいと思います」
このあと、レオは陛下に対して、リグリス連邦で起きた事実を全て話すのだった。
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