第905話 王様!?コルンが呆気に取られる!
「みんなお疲れ様。ここに長居しても意味がないし、城から一旦出ようか」
デストロイが放り投げた二人の王子を静かに見つめながら、アレクは城から出る提案をした。その言葉を聞いた全員は、玉座の間をあとにした。
玉座の間に集まったリグリス連邦の人達は、去っていくアレク達を見続けることしか出来ず我ここにあらずといった雰囲気が流れる。
「無駄足だったな。だが、コルンの言っていた国と乖離があり過ぎて、何がどうなってるのかさっぱりわからんぞ」
ノックスは、コルンの今までの人となりや話を聞いている限り、ここまでおかしな王ではないと思っていたので、意味が不明過ぎて訳がわからなくなる。
「なんだろうね。コルンが、嘘をついて連れてきてレオ王太子を交渉の材料にしようとした?う〜ん?でも、何故か腑に落ちないんだよね」
アレクは、顎に手を当てて考えるが、納得いく答えに辿り着くことは出来ない。
「アレク様、帰られるとのことですが、私の分身をリグリス連邦に配置致しますか?」
ジキタリスは、まだリグリス連邦内ということで、タカハシ陛下ではなくアレク様呼びをする。
「そうだね。分身の配置を頼めるかな?動きがあれば、連絡してほしい。このまま一度転移をして帰ろうか。オレールお願いできるかな?」
「畏まりました。では、早速転移致します」
ジキタリスは、分身体を数十体出して、城と街に潜伏させた。そして、オレールの足元に転移の魔法陣が現れて、アレク達の姿は消えた。
◆
「これは、どうなっているんだ?」
アレク達が、城を去ったあと、他国の対応を終わらせたコルンが、大急ぎで玉座の間に向かった。しかし、そこで目にした物は、自国の兵が大量に廊下で伏せており、救護に来た者に運ばれて行く姿だった。
「父上、これはどういう状況なのですか!?」
コルンは、玉座の間に入り、担架で運ばれて行くハワードの姿を横目に玉座に座る王に尋ねる。
「状況だと!見て分からんのか!お前が連れてきた野蛮なやつらに無茶苦茶にされたわ!お前は、なんてやつらを連れてきたんだ......バルサーク、コルンと護衛二人を国家反逆の疑いで幽閉しろ!」
王は、自らの過ちによって引き起こした惨劇にも関わらず、あたかも連れてきたコルンに全ての非があるような口ぶりで話しだした。
「父上?何をおっしゃっているのですか?ここで、いったい......バルサーク?」
「コルン第三王子様、大変心苦しいですが、ここで起こった事実は変えられません。正式な判決が下されるまで牢で大人しくして頂けると幸いです」
あれだけ常識人であったバルサークは、玉座の間でアレク達と王が話し合っている時も、一切割って入ることもなく、コルンといた時と全然違う。
「バルサーク、わかった。大人しく牢に入ろう。しかし、最後くらい護衛の二人と一緒にいさせてはくれないか?」
「それくらいは認めてやろう。だが、怪しい動きを見せた時点で、護衛二人の命はないと思え!いいな!」
コルンは、どうにか逃げ出す算段はないかと考えるが、すぐには思い付かず、とりあえず護衛二人と話す時間が必要と思いお願いした。それに対して王は、鋭い眼光でコルンを睨みつけながら忠告交じりに許可した。
「父上、大変感謝致します。最後に、何があったかは分かりませんが、王としての決断を期待してます」
「お前に言われなくてもわかっている!さっさと牢屋に行け」
コルンとデッドとラインは、兵士によって牢屋まで運ばれていった。
◆
「コルン第三王子様、ご無沙汰しております。何が起こったのか、簡単に説明致します」
「ジキタリスさん!?何故ここに......むぐ」
牢屋に幽閉されたあと、兵士に話しかけられたと思いきや、鎧兜の中から現れたのはジキタリスであった。そして、驚きのあまり大声を上げたコルンは、思わず口を噤んだ。
「静かに。今私の分身が外を見張っています。敵が来る前に要点だけお話するので、そのまま黙って聞いておいて下さい」
コルン達は、首を縦に振って了解した意思を示す。
ジキタリスは、玉座の間であった出来事とアレク達が愛想をつかせて帰ったことを伝えた。
「なんてことを......父上は、いったいどうしたというんだ......まるで別人になっているではないか。本当に、迷惑をかけて申し訳ない」
「迷惑ではありませんよ。今おっしゃっていた別人という言葉は気になりますが、レオ王太子様からコルン第三王子様の身を案じて私を置いていかれました。おっと、バルサークが来たようなので、一度話を終わりましょう」
今後のことを話す予定ではあったが、バルサークが来たことで、話しを中断した。そして、ジキタリスは鎧兜を被ってバルサークにバレないようにするのだった。
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