第122話 怒るゼロとオッドアイの子供達!
2年前に遡る。ストレン領が襲われてから数日が経ち、王国からも復興を支援する部隊が派遣されてストレン領には、少しずつ平穏が訪れていた。
しかし、一方で怒りを隠し切れずにいる人物もいた。
「クソクソクソクソ!どうなっておるのだ。何故、1つの街を潰す簡単な任務すらも、まともに出来ぬのだ」
NO.1から失敗の報告を受けて怒りが収まらないゼロ。玉座の間で暴れ回り、辺りは悲惨な状態になっている。
NO.1は、ここまで怒りを露わにしたゼロを初めて見たので動揺を隠せずにいるが、顔には出さず黙って行く末を見守る。
「ふぅ~はぁ〜ふぅ~はぁ〜NO.1見苦しいところを見せた。すまぬ」
「な、なにをおっしゃいますか!私達が不甲斐ないばかりに...申し訳ございません」
NO.1は、土下座をしながら謝る。それを仮面の下から鋭い眼光で見るゼロ。
「これは、我の考えの甘さゆえ起こったことである。今すぐ立ち上がりNO.3とNO.5がどうなったのか説明せよ」
「NO.3は、危険な状態です。顔半分しか残っておらず、再生には時間を必要です。NO.5は、完全に消滅致しました。ゼロ様、汚名を返上する為に、どうか今すぐ私とNO.2で滅ぼしに行かせて下さい」
NO.3は、酷い状態だが存命していた。NO.1は、不甲斐ない幹部達に代わり、今すぐにでもストレン領に攻め込もうと考えているようだ。
「待つのだ。我が思っている以上に、敵は強い...予定を変更する。今は手出しすることは許さぬ。数年後のスタンピードで国力を低下させると同時に我の復活を果たす。その時、我とお前達で世界に絶望と恐怖を与えるのだ」
「クッ...ゼロ様が、そうおっしゃるなら従います。ですが、その時が訪れた際には、必ずやゼロ様の野望を阻む虫けら共を根絶やしにしてやりましょう」
すぐに仇を取りにいくことが出来ず、少し不満に思うNO.1だったが、ゼロの言葉は絶対である為、逆らうようなことはしない。
「期待しておる。下がってよいぞ」
「ハッ!」
先延ばしにはされたが、ゼロの逆鱗には触れており、いずれ戦いは免れないようだ。
時は戻り、カリーネの陣痛が始まった。
産婆曰く今日中には産まれてくるだろうと言われている。
「弟かな?妹かな?」
「アレク様は、どちらを望まれているのですか?もし弟なら跡目争いもありえますよね」
パスクは、跡目争いに敗れて奴隷となったので、どうしても敏感に反応してしまうのだ。
「う〜ん?どっちでもいいかな。弟でも妹でも可愛いだろうからね。それに、跡目争いする気はないよ。もし、弟が伯爵家を継ぎたいなら俺は応援するし、喜んで譲るつもりだからさ」
「え?そうなのですか?やはりアレク様は、周りの貴族のご子息とは違いますね。1度権力という甘い汁の中で育つと抜け出せなくなるのが普通なのですがね」
「あまり権力とか興味がないからね。冒険者をしたり自由な旅をしながら色んなところを周る方が、性に合っていそうな気がするよ」
パスクは、それを聞いてると、この家に生まれてくる子供は幸せだなと感じる。自分もアレクと兄弟なら跡目争いで喧嘩などせず、どちらが成ろうとも遺恨を残すようなことがなさそうだなと思い、産まれてくるご子息が羨ましいなと思うのだった。
「マンテ爺には、兄弟とかいないの?」
「ワシらは、生まれてある日を迎えた時に殺し合うんじゃよ。強い個体が生き残るよう幼い時から教えられておる。ワシは、親も殺して食ったのぅ。そのお陰で強くなれたわい」
アレクは、聞かなきゃよかったと後悔する。
魔物でも珍しいことではあるが、マンティコアは同族を食べることで能力を飛躍的に向上させる魔物なのだ。だからこそ、そのような育て方をするのである。
「俺なら耐えられないよ。兄弟を殺したくない...ヨウス別か...そう考えたらマンテ爺のことも否定できないね。人間も利益の為に人を殺したりしているし」
「うむ。あまり変わらんのじゃ。じゃが、ワシも仲間や大切な存在がいるということは、この2年で学んだぞい。アレクが死ぬようなことがあれば、ワシは一生その相手を追い続けるわい」
「あ、ありがとう。俺もマンテ爺を苛めるやつがいたら許さない」
意外にもマンテ爺は、仲間思いなのである。アレクと共にマンテ爺も学び、成長しているのだ。
「アレク様、お産まれになりました。かわいい男の子と女の子でございます」
メイドのネリーが知らせに来てくれた。まさかの双子であったのだ。
すぐさまアレクは、部屋の中に入る。するとカリーネの両脇に小さな赤ん坊が抱き抱えられていた。
「おぉ〜産まれたんじゃな。かわいいのぅ。カリーネもよく頑張ったんじゃ」
知らせを聞いて駆け付けたヨゼフが、ドアを凄い勢いで開けてカリーネのもとへ駆け寄ったのだ。
「アレクちゃんもいらっしゃい。妹と弟よ」
「うん」
アレクもカリーネに呼ばれて近くで弟と妹を見る。2人は、青と緑のオッドアイで、凄くかわいい顔をしていた。
「綺麗な目」
それを聞いたカリーネとヨゼフは、驚いた顔をしていたが、すぐ普段の顔に戻る。
「そうね。綺麗な目をしているわね。あなた、アレクちゃんがこの目に対して何も抱かないのは助かったわね」
「そうじゃな。恐怖の対象に思われても仕方ないからのぅ」
「え?両目の色が違うのって駄目なことなの?」
宗教的な意味合いでオッドアイは、恐怖の対象とかになっているのだろうかと思うアレク。
「駄目ではないんじゃが、成長するにつれて魔力が膨大になり制御できなくなるんじゃ。じゃから、誰も近づこうとせんのじゃ」
「え?凄い羨ましいよ。魔力膨大でかわいいオッドアイとかほしくなる。お父さんもお母さんも安心してよ。うちにはオレールさんて天才魔法師がいるんだから。魔力制御に魔力操作を習ったら前代未聞の魔法師が誕生すると思うよ」
心の底から羨ましいと思うアレクを見て安堵で胸を撫で下ろすカリーネとヨゼフ。
「フフッそうね。みんながあっと驚くような子になるかもしれないわ」
「アレクの言葉で救われたわい」
その後も、家族3人で新しい産まれた2人のかわいい双子を笑顔で眺めるのであった。
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