第121話 決意とショックと因果!!

朝から夜までセバスとの地獄の勉強合宿を続けて1週間が過ぎた。庭に出ることは許されたが、外に出るのは夜ということで空気を吸いに行くくらいしか出来ることがない。


今日も勉強が終わって、いつものように外の空気を吸っていると、オレールとパスクとマンテ爺とノックスが近付いてきた。


「やっと終わったかのぅ。それにしても疲れておるのぅ?」


マンテ爺とノックスとオレールとパスクは、昼間は冒険者として活動している。ちょうど依頼を完了して帰ってきたようだ。


「そりゃ勉強だもん。冒険者活動が出来るみんなが羨ましいな。早く解放されたい...」


愚痴を言いながらマンテ爺を薬で小さくして膝の上に乗せる。アレクが座るのを見て、全員輪になるように座りだす。


「まぁ当分は無理だろうな。とりあえず学園を楽しんでこい。だが、辞めたくなったら辞めていいからな。居場所は残してあるからよ」


ノックスは、アレクの頭をガシガシと撫でながらいつもの調子で返答をする。


「そうです。アレク様が早く帰ってきてパーティー名を決めてくれないと一生B級のままですからね」


『え?まだパーティー名決めてなかったのかよ』と思うアレクだが、居場所があるとかわざと名前を付けずにB級のまま2年も待っていてくれたことに嬉しくなる。


「アレクくん勉強も大事ですよ。それに、体を元の状態に戻さないといけませんから、急がずゆっくりやっていきましょう」


「パスク、ありがとう。まさかB級のまま待ってもらえてると思わなかったよ。あと、オレールさんの言う通りですね。急いでもいいことなんて起きませんし、気長に元に戻していきます」


以前のアレクなら、どうにかして体を完璧にして、冒険者へ戻ろうとしていただろうが、今はそんなことはなく、どこか落ち着いた雰囲気すらある。ノックスもオレールもパスクも、そんなアレクを見て成長したんだなと思うのであった。


「それよか、なんでアレク坊は強くなっているんだ?」


目覚めた時からずっと気になっていたことを聞くノックス。


「創造神様のところへ偶々魂が行きまして、そこで修行していたんですよ。まさか、こっちでは2年経っているとは思いませんでしたけどね。創造神様は、何もそのことに触れませんでしたから」


全員が、「創造神様!!」と驚きの声を上げる。それはそうだろう。会いたいから会える存在ではないのだから。アレクは、みんな驚く中、マンテ爺の頭を撫でたり首元のモフモフを味わっていた。


「待て待て!創造神様と会っていただと!何がどうなったらそうなるんだ。だが、その強さの説明は、それしか考えられないよな」


そもそも、魂の強さを感じ取れるノックスに驚きしかないアレク。


「話せば長くなりますが、本当に偶々なんです。もし、彷徨ったままだったら今頃、目を覚ましていなかったかもしれません。それより、大事なことを伝えないといけなかったのを思い出しました。2年前に襲ってきた2人組は、ルシファーの仲間でした。自分の復活を目論み負の力を集めているようです」


オレールとノックスは、その話を聞いて苦虫を噛み潰したよう顔をする。過去の嫌な思い出を呼び起こしてしまったのだろう。


「そういうことだったんだな。だが、何故ストレン領いや俺達ばかり狙われるんだ?アレクが寝ている間にも、また現れて襲いかかってきたからな」


「目論みをことごとく潰されて邪魔で仕方ないらしいです。迷惑な話ですよ。でも、寝ている間に屋敷の人やストレン領の人達を守ってくれてありがとうございます。もし、目覚めて誰もいなかったら俺は、今頃どうなっていたか...」


「はぁ...なんの因果か、決着を付けるまで終わりそうにないな。1年くらい姿を現していないが、前以上に対策を練った方が良さそうだ。それにしても、アレク坊は成長したな」


改めてノックスは、ルシファーとの戦いに勝つことを決意するのであった。それと、アレクの親しい人以外も思い遣れる優しい人物に育ったんだなと嬉しくなる。


「より一層鍛えて、来る日に備える必要がありそうですね。スベアさんには、倍の特訓を課せましょうかね。パスクくんも、倍の特訓ですから覚悟して下さい」


今頃、湯浴みをしているであろうスベアは、知らない内に死のメニューを組まれるのであった。


「え?私もですか?出来れば程々にして頂ければと思うのですが...何度死にかけたか」


「死んでいないし大丈夫でしょ。それに、アレクくんが復活して薬も沢山頂きましたから、即死以外は治せますよ」


オレールは、ノックスとは違った怖さがあるのだ。普段は優しいがやるとなると、とことん追い込む人物なのである。


「パスク頑張って。俺も勉強頑張るから。オレールさん、経験値倍加薬も追加してお渡ししますね」


「それはいいですね。早速特訓のメニューを組まないといけませんね。では、これにて失礼します」


オレールは、特訓メニューを考えに部屋に向かうのであった。それを聞いたパスクは、頭を抱えて死にそうな顔をしている。


「アレク様、経験値倍加薬は嬉しいですが、今は言わないで欲しかったですよ!」


それを聞いたアレクとノックスは、頑張ってと言って笑うのであった。

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