第111話 第3騎士団、ストレン領到着!
第3騎士団は、ストレン領の門の前に来ていた。平和な様子に、まだ悪いことは起こっていないようで安堵するルーヘンと副団長。
「門番へ早急に通してもらえるように言ってきます」
「頼むね」
そう言うと副団長は、馬に乗って門へかけていくのであった。
「団長〜もうヘトヘトです〜休暇がほしいです〜」
団員の一人である女性が疲れたアピールをしながらルーヘンに話しかける。普通の騎士団であればこんなことを言っていると、怒られるのだがルーヘンは一切怒らない。
「何も無ければ明日は休暇にする予定だよ。僕もゆっくりしたいからね。でも、今回は嫌な予感がするからいつでも動けるようにはしといてね」
「流石団長です〜。こういう時は第3騎士団でよかったと思うです〜」
「え?普段は嫌なの?こんな時だけ?」
「そうです〜。団長は優しいだけが取り柄ですから〜。それ以外はダメダメなのです〜」
「いやいや。団長に対しての敬意とか無いわけ?ジェシカ、僕泣いちゃうよ」
それを聞いたジェシカは、クスクスと笑うのだった。第3騎士団は、他の騎士団とは違い冗談を言い合えるくらいフランクな関係性なのである。
「団長、暫くしたら屋敷から迎えが来るそうです」
「了解。後でいいから団員みんなに明日は休暇にすると伝えといてね。僕と副団長も休暇だから」
「はい。わかりました。でも私は団長についていきますね。羽目を外されては困りますから」
それを聞いたルーヘンは、『なんでついてくるの?僕の自由を奪わないで』という顔をする。
「あははは...なんのことかな?僕が困らせるようなことするわけないじゃないか〜。副団長は心配性だな〜」
「じゃあ来年は謹慎処分なしでお願いしますよ。他の騎士団長に嫌味を言われるのは懲り懲りなんですから」
「よし!屋敷からの迎えを待たす訳には行かないから行こう〜」
「ちょっとまだ話は終わってませんよ」
これ以上、小言を聞きたくないルーヘンは耳を塞いで逃げるのであった。
そして門に着くと、すでにセバスが待っていた。
「皆様、長旅お疲れ様です。旦那様は屋敷でお待ちです。ご案内させて頂きます」
セバスの案内のもと、屋敷へと向かう一行。屋敷に着くと、庭にはテーブルと椅子と飲み物などが用意されており、団員はそこで休息を取るように指示される。そしてルーヘンと副団長は、ヨゼフが待つ応接室に向かうのであった。
「旦那様、お客様をお連れ致しました」
「入ってもらいなさい」
ヨゼフから入室許可が出たので、ルーヘンと副団長が応接室へ入る。
「ルーヘン殿、久しぶりじゃのぅ。先日の王城以来じゃな」
急に来たにも関わらず、笑顔で出迎えるヨゼフ。
「お久しぶりです。ヴェルトロ伯爵様。急な来訪にも関わらずお会いして下さり感謝致します。」
「お初にお目にかかります。ヴェルトロ伯爵様。私は、第3騎士団副団長のヘリオスと申します。以後、お見知り置きを」
ヘリオスは、しっかりした所作で挨拶をする。ルーヘンも普段の適当な様子はなく真剣な顔付きで発言をする。
「二人とも、こんな田舎の領によう来てくれたわい。歓迎するぞい。して、騎士団総出でどうしたんじゃ?」
「まずは、こちらを御覧ください」
ルーヘンから渡されたのは、王印が捺された書簡であった。すぐに中身を確認するヨゼフであったが、読み進めるうちに難しい顔になっていく。
「こりゃ、一大事じゃな...ルーヘン殿は、復讐についてどう思うかのぅ?」
「すぐにはあるとは思えませんが、別の嫌な予感がしております。何かはわかりませんが、いつでも私兵を動かせる準備と避難の準備をして頂きたいと思います。私の予感を信じて頂けるのであればですが...」
「うむ...セバス、すぐに市民の避難誘導の準備とロイスにいつでも動けるように伝えるんじゃ。あと、使用人の避難経路も再確認しておくんじゃ。ルーヘン殿、ヘリオス殿、すまんがストレン領をよろしく頼むのぅ」
一度襲撃されているからか、ヨゼフも嫌な予感を感じていた。そして、二度とあんな悲惨なことが起こらないように、しっかり準備をして対策を練り万全な状態にしておこうと考えているのである。
「お任せください。王命に従い貴方方を全力でお守り致します。あと、関係ない話になるのですが、アレク様はいらっしゃいますか?」
どうしてもアレクに会いたいルーヘンは、我慢出来ずに聞いてしまう。横で聞いていたヘリオスは今じゃないだろうと内心思うのであった。
「アレクは、冒険者の昇格試験で王都に行っておるぞい」
「そうですか...」
それを聞いたルーヘンは、悲しそうに返事をするのであった。
「なんじゃ?アレクに用でもあったのかのぅ?」
「アレク様には一度お断りをされたのですが、どうしても騎士団に入団させたいと思っておりまして、もう一度お誘い出来たらなと...」
アレクからしたら迷惑極まりない話なのだが、どうしても諦めがつかないルーヘンは再度、勧誘を試みようとしているようだ。
「そうじゃったのか。ワシからは、何も言うことはないのぅ。アレクの人生じゃからアレクの好きなようにさせてやりたいんじゃ。じゃから無理強いはせんようにのぅ」
それを聞いたルーヘンは、「はい。無理強いは致しません」と答えるが、本当にわかっているのだろうかと思うヘリオス。ヘリオスは、行き過ぎたら自分が止めに入ろうと心に固く誓うのであった。
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