憧れの職業
「証拠は揃っている。さぁ、吐くんだ」
「……私がやりました、探偵さん……」
私が探偵に憧れたのは少年の頃。ベタな話だが、サスペンスドラマがきっかけだった。使い古しのコートを着た探偵が、胸ポケットに手帳を携えて、足を使って証拠を集め、時には汚れ仕事も買って出て、どんな事件にも不屈の魂で立ち向かう。その泥臭くても気高き勇姿が、カッコよく見えたものだった。
「さぁ、吐くんだ」
そんな私が大人になって、あの台詞を使っている。今の私はあの探偵と同じく、寒空の下コートを身につけ、懐には手帳を忍ばせ、足を使って仕事をし、汚れることでも買って出る、どんな案件にも不屈の魂で立ち向かう、泥臭くも気高い立派な──
「オエエェェ……すみません先輩、忘年会だからって飲み過ぎるなんて……」
「いいから。ほら、水だ」
──サラリーマンである。けれど志だけを見るならば、今の私は憧れの職業に就けたと言えなくもない……のかもしれない。
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