§ 2ー4 6月22日 死の受容
--神奈川県・某大学第四講義室--
「えー、みなさん。
社会心理学を専門とする
「さて、この天体が地球にぶつかると地球は割れ、生物は死滅すると言われています。当然、我々人類も滅びてしまいます。来年の3月に衝突するとのことなので、残り9ヶ月程ということになるわけですが、言い換えれば、これは寿命ということです。死の宣告にあなたたちはどのようなことを感じていくのでしょう。どうです? 私はとりあえず、講義をやめて好きなマグロをお腹いっぱい食べに行きますかね」
ハハハ♪ と講義室内の学生たちと同じように颯太も笑う。「おれはやっぱり肉かな」「フランスには行っておきたいよねー」と各々がざわめき出す。学生たちの反応に教授もふむふむと優しい目を
「えー、では、ここで1人のアメリカの精神科医の女性について知っていきましょう。彼女はエリザベス・キューブラー・ロス。終末期医療の
この著書で語られているのは、人が死を受容するには5つの
先ほどまでの賑やかな雰囲気は、
「1段階目は否認です。これは頭では理解しようとしますが、『きっと何かの間違いだ』と心がその事実を認めようとしない最初の段階です。
2段階目は怒りですね。死の事実をなんとか理解しましたが、『どうして自分が!』『悪いことをしたわけじゃないのに!』と怒りという心情に
次は3段階目の取引です。医学でも科学でも神でも仏でも、なんでもよいからすがりつき死を遅らせてほしいと願う段階です。全財産を渡すからやこれまでの行いを
4段階目は抑うつです。
そして、最後の5段階目は受容です。死を受け入れ、人生の最後を穏やかに心静かに迎える段階です。死は当たり前の自然の摂理であり、個々に死生観や宇宙感を形成し、死そのものを受容するのです。私も最後は気持ち穏やかに眠りにつきたいものですね」
和泉教授の話。反応は色々だが大学生では実感が
そんな中、颯太は下を向き目を細めていた。そんな死の段階を
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