第481話 好き(な部位)を叫べ
四階層までできのこや穀物ネズミを収集……『豊穣牧場』のネズミは穀物ネズミ一択なんですね。と薄暗い気持ちになっているネア・マーカスです。わかってます。マリアちゃんは大ネズミ狩って解体チャレンジしていますからね。
ジーネさんはオーバーキルでいろんなドロップ品を落とさせているようです。「具体的に欲しい部位を傷つけないようにしつつ、宣言攻撃するとその部位がドロップしやすいの。あと品質も上がる」とのことです。でも、「腿肉!」「ロース!」「バラ!」と声かけで倒される魔物という光景はシュールかも知れません。
ヒットが外れるとスキルギフトが落ちているようですね。
マリアちゃんは対象を殴ればいいのか、そこを避ければいいのかわかんないと叫んで、結局「おいしいお肉ぅ!」と叫んで殴ってますよ。
おいしいはとても大事です。
「具体的にそのお肉がどう美味しいかわからないとなんていうか、こう、盛り上がらない? もちろんお肉は美味しんだけどさ」
拳にぎにぎでマリアちゃんがよくわかんないとぼやきますよ。
「えー、血液結晶とかも魔力豊富なので欲しいんですけどぉ」
ニエナさんの要望にマリアちゃんは「血液結晶とかよくわかんないからお肉以上にイメージできない」と返してがっかりさせてましたよ。
「生肉は鮮度重視の旨みも勿論有りだが、ここはスキル『熟成』で加工した肉を塩で焼き比べればやる気が出るかな?」
「あー、熟成。いいですよね。熟成させることではじめて生じる旨みもありますし、成功イメージ掴むまで失敗も多いスキルですけど」
ジーネさんがやる気を出せるように提案し、ニエナさんがそのスキルに対する感想を述べる。たぶん、今じゃないのではないかと思うけど、マイペースはいいですよね。
食品や薬剤の他にもいろいろ使用法はあるそうです。ただ一歩間違えると激薬だそうですが。
「魚醤やお酒にも『熟成』スキルは活用されるので持っていると便利なスキルですよ」
知識バンザイなのです。
「よく犯罪の証拠隠滅にも使われるな。『モト』を探る『時戻し』を使って心を病む者もいる」
「あー、料理も薬も素材の正体は知りたくなかったという方は多いですねぇ」
いきなりムカデの甲殻剥いで「この肉うまいゾ」と差し出されてすぐに「わぁ、うれしい」なんて受け取れるかと言えば「無理」となる。そんな感じなんでしょうね。
食に対する敬意はいつだって大事ですからね。
お互いに否定せず許容範囲は尊重することが大事ですよねぇ。……加熱したものを頂きましたよ。思い出補正は大事ですね。
四階層安全区画で焼き肉で昼食です。
それぞれの部位を薄切りにして塩を振ってしっかり焼きます。
「これは腿肉。こっちはバラ。これは心臓、こっちのは肝臓で火が通るとちょっと食感がもそるけど栄養価は高いな」
ジーネさんがそう説明して、何かちょっと考えるように視線を彷徨わせます。
「ネア、軽く『清浄』を」
お肉に?
軽く清浄をかけると、ジーネさんはそのお肉を薄切りにして植物油に漬けますよ。
「マリア、どの肉がどの部位か考えながら味わうといい」
焼けたお肉が食べ頃ですよ!
肝臓肉は確かにもそっとした口当たりなのに同じくらいでろりととけるような違和感を感じます。
「うぇー。これ嫌いぃ」
わかりますよ。マリア。私もちょっと苦手です。
ジーネさんが笑って他の薄焼き肉を取り皿にのせてくれますよ。
「合う合わないはあるからね。好む人もいるから気をつけて」
「あー、えっとね、自分が好きなモノを嫌いって言われるのいやな人もいるからね」
ジーネさんの言葉にわかんないって顔をしていたマリアちゃんがニエナさんの解説でぱぁっと表情を明るくしますよ。
「わかる! 走るより刺繍の方がいいとか言われたらムカつくもん」
マリアちゃん、それも人それぞれって奴だからね。
「お肉よりお魚が好きな人もいるだろうし?」
「え!? そんな人いるの!?」
マリアちゃんの肉好き信仰はかなり根深いような気がしますね。
植物油に漬けられた肝臓肉の薄切りは好きな食感でした。ええ。とても。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます