第478話 食生活改善計画ですよ

 春の期のさなか。迷宮にはあまり季節感がないなと考えているネア・マーカスです。

 本日はグラシィ、つまり『赤煉瓦』の依頼で『豊穣牧場』に来ています。

 パーティメンバーはニエナさん、マリアちゃん、ジーネさんに私の四人で、お題は『食材調達』です。

 裏テーマはニエナさんの食生活改善ですね。

 基本的には採取要員が私とニエナさん。

 護衛要員がジーネさんとマリアちゃんですね。

「一階層を軽くまわってからできればもう少し奥の階層に行きましょう」

 最年長のニエナさん(十五歳)がリーダーは辞退したので慣れてらっしゃるジーネさん(十三歳)がパーティリーダーですよ。

 私(ネア・マーカス十一歳)とマリアちゃん(十歳)は「はーい」良い子のお返事ですとも。

 寒色系頭髪女子パーティですね。ニエナさんが薄い青緑でジーネさんが白。マリアが一番明るい感じで金。私がほぼ黒の緑なのでちょっとグラデっぽい?

「いくつか事前にクエストも受注しました。一階層から五階層までの魔物討伐と食材調達です」

 ジーネさんが行動指針を伝えている最中でしたね。

 あれ? 『赤煉瓦』用の食材調達目的では?

「大型魔物を三体ほど狩れば学生ギルドに提出する分には問題ありません。鹿系や猪、熊あたりがおいしく入る荷物袋があるので問題ありません」

「熊っ!? 猪!? ジーネちゃん!?」

 ニエナさんが顔色を青くしてますし、その横でマリアちゃんがキラキラ瞳を輝かせていますよ。

「熊! 猪に鹿! 鹿! おっきいツノはかっこいいよね! ぶわぁあって広がっているヤツでしょ!?」

「遭遇できるといいね。ネアはニエナと一緒に採取を、と言いたいところだけど、解体の必要のない穀物鼠をその槍で狩っておいてくれると嬉しい。あまり魔力は注がずに頑張って。物理一本で狩った鼠が一階層では等級高めになるから」

 等級?

「穀物鼠がドロップする穀物袋、魔力を通すと乱数が発生して特級と四等級が出るの。精密鑑定をかけてわかるの。調理法に向き不向きや味のムラがでるわ。物理一本だと一等級か二等級になることが多いし、武器は使って体で覚えるものだからね」

 あ、槍を使えってことですね。

 ドロップ品に等級なんてあるんだ。

「クエストに穀物袋一等級十袋っていうのもあるから。当然、赤煉瓦用の穀物も必要だしね」

「わかりました。ネアは鼠狙いですね!」

「そう。そして、深追いしない。パーティグループからはなれない。戦闘能力があると自覚しているのなら能力の低いニエナを守ることを優先して行動していくこと。特にマリア、アーマリア。わかっているかしら?」

 ジーネさんに確認されました。

「はーい」

 私とマリアちゃんの返事がかぶりましたよ。

 ふぅとジーネさんがため息ですよ。

「私が呼んだ時に魔物と対峙している以外で返事をしなければ、なんらかのペナルティを課します。返事ができて、すぐに戻って来れるように。学生カードで今回パーティを組んでいます。簡単な伝言を残せますからはぐれた、迷った時はまず学生カードに『迷った』と伝言すること。勝手に自分から階層を移動しない。わかりましたか」

 ジーネさんの信用がつらいと思います。

「あの、私、無事帰れますか?」

 ニエナさんがものすごく不安そうにジーネさんにしがみついていましたよ。

 マリアちゃんが「大丈夫だよぉ」とその背中をぱしぱししてますが余計に不安を煽っていそうですね。

「おやつもあるし、一階層なら他にもいっぱい探索者の人たちいるもん」

 えっへんと得意げに困ったら誰かに頼ってしまえばいいと考えているっぽいマリアちゃんは清々しいですね。

 あ、そういえば、他の探索者の人たちにチラチラ見られてました。

「穀物袋用の等級鑑定札は五十枚ほど支給されていますから、小麦と大麦で各十袋、一等級二等級確保が目標です」

 はい、それがネアの目標のひとつですね。

「この『豊穣牧場』では多くの魔物はドロップを落とさずに解体が必要になります。マリア、解体は?」

「もちろん、やったことない!」

 マリアちゃん爽やかですよ。






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