第411話 亀と蛙とお茶会
大越前にはティクサーに帰る事になりましたが、グレックお父さんとマコモお母さんは王様の迷宮契約のお付き合いだそうです。
帰れたらティカちゃんと一緒に大越なんですけどー。
家族以外に一番に「十一歳おめでとう」言いたいじゃないですか。
十歳や十五歳の大越より特別ではありませんが特別っぽいじゃないですか。
だって人が戻ってきてはじめての大越ですからね。
大越を越えて十日ほどで春の期に入ります。
この十日の為に教会では食材や毛布、魔法薬や子守りをかき集めます。地区のその年の赤子がそこに集まっているので当然でしょう。
尼僧様に「ネアもちゃんと体験しておくといいわ」と言われてるんですよね。マオちゃんの時は私はお手伝いするには小さくて、あと教会の人手も不足しておらず、生まれる子も少なかったのもありますね。
子供を産むお母さんたちとその年に結婚したお嫁さん、それと尼僧様と治療師様(女性限定)。教会で暮らす孤児達。ほぼ男性を排した教会の奥で新しい命を迎えるのです。
春の期になってお父さんは新しい家族に会うんですよね。
このしきたりがあるので年子の兄弟はあまりいないんですよ。
確か、グレックお父さんは「立ち会いたい」と幾度か主張しては追い返されていましたね。
教会の子か司祭様でなければそばにいることは叶わないものですからね。
まぁ、それはそれとして置いておきますよ。迷宮管理者ネアとしてはそろそろ天水ちゃんにおはなしを聞こうと思うんです。
迷宮に遊びに行くのは商業ギルドへ報告義務を果たしに行ったテリハさんが戻ってからですからね。現在王宮にとどめ置かれている今のうちでしょう。
マオちゃんはメイドさんや侍女のお姉さん達に可愛がられていますし、ケイトさんは騎士団の人たちの朝訓練に混じってらっしゃいます。ソールカーナンさんは工作部員と呼ばれている作業員さんと地下水道の修復中です。(地下水道に行ったら迷宮には付き合ってくださるとのこと)
というわけで。
「天水ちゃん、拒否は許してあげませんよ」
出廷なさい。出廷。
『是。天水参上』
ふむ。
相変わらず可愛い白い亀さんですね。
「天水ちゃんはアドレンス王家と契約してもよいのですね?」
『是。既存王家利点多』
『既存王家の利点と言えば『安定統治』でござる。一時分解していようが元々の雛型があるでござる。そして、血統による親族統治。幸いにして王の座を得て酒池肉林といきたい反乱の芽はないでござる』
しゅちにくりん?
『アドレンス王が契約を結ぶのであれば王の権威は増すでござる。若手の王族が勝ち得れば次期王待ったなしでござるな』
げっげー笑いながら噛み砕き説明をしてくれるわんだりんぐふろっげーですよ。
『既存王家の利点でござるが、他国との国境線維持で揉めにくいというポイントもござるよ。もし他国の王族(及び関係者)が契約を結べば現王派と新迷宮の契約者で政争がはじまるでござる。アドレンスがとりこむかとりこまれるか決まるまで民の暮らしはマイナスでござる。マイロードは望まれますまい?』
あー、まだ復興の最中なのにマイナス要因はいらないかなぁ。
『迷宮提供資材環境。王家提供探索戦力増強及安定。安定統治重要。迷宮提供契約探索者提供魔力』
『迷宮と探索者はぎぶあんどていくでござるよ』
んー。
復興中は大人しく発展しておけってことだよね?
『ミーがみるに冒険者ギルド商業ギルド、教会、王家が大きな勢力区分でござる。どこもミー達迷宮に対抗して安定した探索行動を起こす準備すらまだできていないでござる。下準備はしてるかもでござるが行動を起こすにはまだ時期尚早でござる』
『是。情報取得情報精査天水頑張』
『第二第三のミーがあらゆるところに潜り込んでみせるでござる』
えっ。
わんだりんぐふろっげーは分裂増殖するの?
え。
ごめん。気持ち悪いって思っちゃった。うん。分体か子分だよ、ね?
あ。
お茶おいしい。お茶菓子は雪蜥蜴大福ですか。あ。林檎ジャム入ってる。おいしいですね。
あれ。白い蛙さんずいぶんとちっこいさんですね。
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