第309話 道拓きは天職か(違います)
地理関係疎いのは普通だと思っているネア・マーカス十歳女児です。
「だって十歳でギルドカードつくるまで国の名前も知りませんでしたからね。ティクサーがティクサーって知っているだけで事足りてたんです。クノシーも行くまではただ隣の町認識だったんですから」
「あー、そうも、なるかな? でも学都行くなら街道の国と町の名前くらいは」
だって、それも非常事態でしたからね。タガネさんにただ連れていかれてましたよ。ええ。
「遠浅の国はアドレンスや岩山の国からはいけなくて、帝国とケモノの国跡地の間にあるんだよ。崖とかキツくて街道がひけないからさ」
どこかで見たことのある気がする男の子が教えてくれましたよ。
つまり、取引きはないようです。
「聞いたことあるわ。川も勢いが強いから橋もかけられないし舟も渡せないんですって。西側の流れは緩いところがあってなんとかなってるって。あと、迷宮が出口を作ってくれてるんですって」
ティカちゃんの追加情報ですよ。
尊敬の眼差しで見ると、学都滞在時に移動先を探していたからだそうです。
「生きるためにいろいろさまよったもんな」
男の子がしみじみとこぼします。
物心ついた頃からの旅暮らし。親は「いつか故郷に帰りたい」と迷宮なく帰れない地を思いながら動けなくなったことをよくあることと彼らは語ります。
自分たちは故郷なんて覚えていないけれど、この国は彼らの親が生まれ育って出会った、確かに故郷なのだそうです。
「迷宮前の町に一泊はするんだろ? 興味あるならその時にどうだ? 今は移動時間だろ」
促されて、そうでした。とお仕事に戻りますよ。
えい。伐採です。
「だから、どこを狙ってやるか、一応口にしろっての!」
あ。
思い出した!
枝拾いしていいか聞きにきた子だ!
ちょっと仕切り屋さんの。
「知ってる子だった……」
「え。気がついてなかったの? 町の中でもときどき顔合わせてたわよ? 手を振ってくれたり、軽く挨拶してくれてた……。しかたないわね。ネアはよくボケっとしているものね」
ティカちゃんがため息吐きましたよ。
覚えていれていない私が悪いんですけど、自分に挨拶されているなんて想定外ですよぅ。
「一気に顔見知り増えるし、それぞれクセが強いし、覚えるのが苦手でもしかたないでしょ。これからもう少しまわりを見たら?」
「気をつけるぅ。じゃ、あそこらへんを伐採!」
宣言して風を飛ばします。
がつりと土が削れ飛びましたね。
このあたり、蔓草や茂みで隠れていますが実はかなり急勾配ですね?
「このあたり、一旦全体的に削ってくれ。下があるかも確認したい」
ドンさんの要望に頷き、一応周囲確認ですよ。
さっき削ったあたり、枝が茂みに沈んでいく様子からわかるのは、足を踏み入れれば落ちるということですね。道、実はかなり細い?
「ここまではそれなりに幅があるし、壁沿いにまわって進んでいたが、少し足場を補強した方がいいかも知れないな」
グッと吊り下がっている蔓を支えに動くティクサーの狩人さんです。
「テメェはほとんど下歩かねぇからな。もうすこし真面目に案内しやがれ」
「ひどいな。とりあえずお嬢はあっち方面を地面見えるように削れる?」
削り指定が来たので伐採ですよー。
背後でヒュッと息を呑む音が聞こえてきましたよ。わかります。地面の上の蔓草やそこに地面があるように偽装工作していた茂みや枝が無くなるとそこは切りたった岩壁(もろもろと土がこぼれ落ちる脆さ)戦士装備は大丈夫でも騎士の鎧甲冑荷物付きであったなら踏み外して落ちるんじゃないの。としか思えない細い道(ところどころ削れてる)です。
「この辺ならティクサーの方に担当してもらうさ」
「あー、すんません。おれちょっと怖いんで足場『固定』していいですか?」
移住予定者の一人がおずおず挙手して申告ですよ。
「どのくらい維持できる? 短いんなら問題なく通れる奴は先に行かせる」
「あー、その使用素材によりますが半日くらいっす」
「一人ティクサーからの確認者が来るまで残って伝達、足場の補強依頼してから追いかけてこい。で、タッズ、必要な資材は?」
「あ。今できた木材と蔓で」
「じゃあ、よろしく。あとは周囲警戒しつつ、拾えるもん拾っとけ。チビどもは大人の囲いから出んじゃないぞ」
ドンさんが道の一時補修をすると言うお兄さんに許可を出し、安全な道を子供達に用意できるならその方がいいという判断は素敵だなと思います。
「クズ狩り幼女はちょっと先行って刈っといてくれ。弟くんとお供は連れてっていいし、案内人の狩人もつけとくわ」
いいけど、さ。
「十歳は、もう幼女ってほどじゃないしぃ」
そう言い返したら、弟くんが笑いを噛み殺してましたよ。なんで弟くんなんですか!?
私が幼女なら弟くんは赤児ですか!?
「ごめん、姉さん。行こうよ。夕方までに『たまちゃんチ』につかなきゃ」
そうなんですけど、なんか釈然としないですよ。ええ。
道。
本当に難所続きなんですけど、夕方までにたどり着けるんですか?
え?
イゾルデさんやルチルさんならイケる?
それ、普通の人には無理案件ではないでしょうか?
ゆったり朝食をとり、補充護衛として追いついたイゾルデさんに「なんでまだここなんだ?」と言われてイラッとしましたよ。しかも、道の保全連絡にさっさとティクサーに戻って行きましたよ。移住予定者におやつの差し入れを残して。
イゾルデさんなのに。
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