第306話 踏んじゃいけないポイントってありますよね

 うさたまちゃんもカメ天水ちゃんもマイペースで仲良しさんのようでなによりだなぁと思っている迷宮管理者ネアです。

 迷宮として『魂極邂逅』の階層内訳を問いかけるときょとりと垂れ耳が揺れました。

『フロアとフロアは通路と転移陣で結んでいます』

 ふんふん。

『入り口付近は坑道型迷宮でまっすぐではない一本道が少々ですね』

 うねる道の先からゴーストとボーンアニマルのお出迎えですか。

『ところどころ広めの場所があり、そこに採掘ポイントが複数。今は銅鉱石と肉岩石が主体。ちょっと奥に鉄鉱石ですね。宝箱には月影宝珠や夜香きのこ、渋芋、じゃらじゃらの銅貨を突っ込んであります』

 広めにとってある場所は複数ある感じですね。砂糖と塩はドロップで獲れますし、宝箱に芋や香りのいいきのこ、月影宝珠ってなんだろうと調べるとまんまるつるりとした殻を持つ果実で甘酸っぱいらしいです。そして、拾えるじゃらじゃらの銅貨。

『たまちゃんが強くなればいつかはじゃらじゃらの金貨ですよ』

 金貨とは。

 欲の皮が突っ張った人が寄ってきそうなので要注意ですね。

「肉岩石って面白いね」

 どういう仕組みなんだろう?

『深層で生産している娯楽材の配布ですね。骨狗や屍女たちは生前の習性や趣味の残存が多いのですよ。ですから、村里を作って生前に近い生活を送っているのですよ』

 へぇ。

『つまり、畜産も希望により行なっております』

 畜産……?

 屍女と骨狗たちの希望。生前の記憶も多少あるのかな?

『工房区画だけでなく、放牧エリアを構成し、牛や豚、山羊や羊、鶏や鼠などの食肉家畜や鳥馬種と呼ばれる大犬鷲や天鳥馬などを放し飼っているのです。ただ、現状そこまで広い範囲ではないので育てつつ、増え過ぎないよう間引くわけです。そこで加工肉が生じますが、本来魔物に食事は必要ありません。地上反映した時は別ですが』

 いつの間に牧場……。

『魔物にとって食事は趣味の範囲です。彼らはこだわって育て作るのですが、さほど、食べません。つまり、つまりですね』

「増える」

『そうなのです!』

 つまり貯蔵庫とルートを結んでアクションがあれば転送することで採集ドロップ品となる訳ですね。

 てっきり!

 なんでもありませんよ?

 ええ。なんでもないですとも。今度、分けてもらえるか聞いてみようと思います。今度、今度ですよ。

「随分と凝った転送陣なのでは?」

『ゴーストの中には術式スキルに長けた死霊術師もいますから。アドレンス王家嫌いの方々が』

 ツっとたまちゃんも好まないらしい王家の名を口にのせましたね。

「そうですねぇ、クノシーもティクサーも今の王様の弟さんが領主に着任されましたからねぇ。迷宮があるせいでしょうけどね」

 どうなるんでしょうかね?

『ヌシ様』

 ん? 天水ちゃん?

『最近意識、獣ノ迷宮……。支配?』

 獣の迷宮?

 あ、荒野、元『獣の国』ですね。天職の声さんがけしかけてくるから気にはしているし、できれば出かけるまでになんとかしておきたいところなんですよね。

「あー、うん。考えてる。私、ティクサーの町を維持したいし、危険なんでしょう?」

 迷宮である天水ちゃんの方がより危険性を感じてるかもしれないよね?

『是。……ブチノメス階位不足。絶悔』

 え?

 ブチノメス?

『集団? 否。絶悔。たまちゃん貧弱』

『ほぁ!? たまちゃん強くなりますぅ!』

『蒼鱗樹海、階位不足。残念。園長、役割違。ヌシ様負担増。否』

 おお。対策を、考えてくれている?

『いざとなればアドレンス王家に屍女けしかけます?』

『否。自立大事。孤立、否。国境大事』

「王家を潰しちゃうと他の国が動く可能性があるからよくないんですよ。アドレンス王国はネアが学都で学習を終えるまでは頑張ってもらわないと。ただ、お隣の危険度関連で学都出発までに抑えておきたいんだよねぇ」

 別に滅する気はありませんけどね。普通に暮らしていけるなら。

『生贄、有効。要、魔力補充』

 うっ。やっぱりそっち系になるのかぁ。

『蒼鱗樹海、天水峡連、隣接。魔力強奪弾く。最近多発。ウザイ』

 え。

 なに?

「え? うちの迷宮に手ぇ出してきてたの?」

『弾いてる』

 そっかぁ。

「手、出してきてるんだぁ。ごめんね。気がついてなくて。そっかぁ。なんとか、しなきゃね」

 どうしようかなぁ。やりようは、いくらでもあるよね。

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