第286話 夏。お夕食時の団らん
「期の移ろいの祝日になにかを行うには準備が足りないが、秋と冬には王都や迷宮側の町では祭りをするという旨が決定されてね。ネアとハーブはなにか案はないかな?」
夕食の席でのグレックお父さんの無茶振りに弟くんと同じタイミングをもって「はぁあ?」と返してしまったネア・マーカス、十歳世間知らずですがなにか?
冒険者ギルドに置かれてあった情報誌にちらっと祝祭における依頼の傾向とかいう資料があったなぁというくらいしか知らないんですけどね。私の記憶を探っても引っかかりませんし、情報。
【幼児は外をうろつきませんからね】
五歳からこの街で過ごしてますからねぇ。お祭り騒ぎは好きな人たちでしたが、実際のお祭りって見たことないかも知れません。私の記憶にもありませんからね。
「食べ物の屋台とか、ダンスとか、バザー?」
美味しいものは素敵ですよね。
「あ、各職能ギルドさんでコンテストは?」
コンテスト?
「コンテスト?」
グレックお父さんが代わりに聞いてくれましたよ。
「食べ物の屋台でどのお店の商品が一番人気か決めるとか、作るお題を決めて、どの職人さんの作品がカッコいいとかを決めるの。冒険者や警備隊の人も参加できる的当てとかも楽しそう」
「ついでに町の特産品になれば楽しいわね」
楽しそうに語る弟くんをマコモお母さんが補足しますよ。
「秋に予選をして、冬に本戦。一年間はその勝ち抜いた人にはなにか特典があるといいよね!」
弟くん、よくそんなこと考えつくなぁ。
ちなみにマコモお母さんが賛同した時点でこのコンテストとやら採用されますね。
「会場とお題か」
グレックお父さんがぶつぶつお仕事モードですよ。
「ズルをしちゃわないように注意したり、次の年も同じようにするなら、連続して一番をとれる回数の上限をつけるかつけないかもあるよね。絶対一番とれないのつまんないもん」
楽しそうな弟くんにマコモお母さんがゆっくりと微笑みます。
「ハーブ、楽しそうね。でも、ごはんを食べることが止まっているわ。食べ終えたトロやカシリが食べちゃうと食べられなくなってしまうでしょう。ちゃんとお食べなさいね」
弟くん、ちょっと食が細いんですよね。
貧しかったティクサーの子だからとまわりは納得している風ですが、関係ないと思うんですよね。私、それなりに食べますし、確かに一度の量は少なくなってますが、おやつタイムも日に四回ぐらいとってますからね。
弟くんは声をかけられたら付き合ってくれるくらいの頻度ですよ。おやつタイム。
はたっと気がついたようにお皿を見て少ししか減っていないのを自分でも確認したらしい弟くんはちょっと気まずげな表情で笑い、「はぁい」とつつきはじめましたよ。マコモお母さんの使える素材をしっかり使った料理は美味しいんですよ。弟くんもちゃんと美味しいって感想を述べるのですが、食はあんまり進まないんですよね。
魔力を使えば、おなかが空くものなんですが弟くんはなにか方式が違うんでしょうかね?
ちなみにトロちゃんとトカゲ氏は私やマオちゃんよりよく食べます。
もしや、トロちゃんとトカゲ氏が食べてるから遠慮してるとか?
「ハーブくん、ちゃんと食べないとダメですよ」
それともおなかの中を契約した魔物と共有しているからおなかいっぱいとでも言うんですか?
トロちゃん、生肉好きですよね?
え?
弟くん、おなかだいじょうぶ?
「なに? ネア姉さん」
「使い魔くんたちとおなか共有しているなら大変かなぁって」
「……は!? なにその謎発想! ないから。共有しているって言えるのは魔力の一部分。それで意識の伝達しやすくしてるぐらいだから。飲食は個別だよ。え? 食べた物をおなかできょうゆう!? なにこわいこと言ってるの?」
弟くんに流れるように否定されました。
だって知らないもの。
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