第14話 美味しいお肉が好きです



 ネア・マーカス。

 お肉大好きです。

 味が違いました。

 ルチルさんのおうちで食べたお肉(アッファスお兄ちゃんが狩ってきたお肉)とトルファームの宿屋さんで食べたお肉。種類が違うと言うだけではない旨味差を感じたのです!

 タガネさんは国が違うからなぁと言っていましたがお肉の味って国によってそんなに変わるんでしょうか?


【味の差は魔力の濃さの影響を受けます。迷宮核を複数破壊されたあの国は国自体が魔力欠乏症です。魔力の強い猛者は主に国の中枢か闘える迷宮そばに集約されます】


 それ、うちの国衰退一直線では?


【その通りです。そして迷宮の壊死は迷宮と国境でしか止めることができないのです】


 ティクサー薬草園と森?


【多少の抑止にはなりますが、『水源』も『山』も大迷宮と呼ばれる迷宮であり、過去栄えた分反動も大きいのです】


 つまり、国が滅んでも国境で事態は落ち着くから他国は侵略してこない?


【おそらく。生かさず殺さず支援が出ているのだと推察されます】


 下手に迷宮がうまれたって周辺国にバレたらまずいのでは?


【魔力濃度が安定するのなら問題はないのではないかと】


 天職の声さんは存外親切に教えてくれるのである。

 王都からこのトルファームにたどりつくまでに狩った魔物は率先して荷物袋につっこんだ。バッタと草原ネズミ。痩せた鼬。その辺の雑草一掴み。

 トルファームのギルド前でタガネさんに草原ネズミと鼬を返却した。

 創生生物に鼬とバッタ、鼠が追加されていた。

 鼠と紅花、楓と合歓の木を森に追加登録しておく。


【現在、『旧・大深林』の魔物を掃討しその魔核石・魔力をもって『森』の迷宮維持保守が行われています。余剰魔力は『ティクサー薬草園』が構築している結界維持に。結界維持には限界があります。限界をむかえる前には帰還することが望ましく、『水源』も『山』も猶予があまりないとご理解のほどを】


 鬼畜か。天職の声さんめ。


【そしてそこに見えますのは『回遊海原』です。干渉するには経験不足です】


 帰ったら魔力を増やして美味しいお肉を育てないといけないんだな。

 翌日、アッファスお兄ちゃんに迷宮『回遊海原』ではたくさん美味しいお肉がとれると聞いてお肉がまるで麻薬のように私を苛むのでした。


【美味しいと思える魔力の濃い食品はどんどん摂取することがよろしいかと。『回遊海原』迷宮は定期的に入り口が変わります。このような迷宮を回遊迷宮と呼びます。国内の民により高魔力の食材を撒き、魔力の高い強者が迷宮へと狩りにこれるようにとの配慮でしょう】


 誰の!?

 入り口が変動する事で国内の供給源として存在する迷宮。地区間の不公平感が軽減。

 上級の食肉および希少品は王室に召し上げられる。

 それでも入り口があればその町に迷宮での狩り物は流通する。一攫千金も狙えなくはない。

 やはり迷宮は人とともに生きているんだなと思える。

 事実、天職として『迷宮守護』とか『迷宮創生管理者』なんて私みたいな天職持ちもいる。つまり同等の職持ちが他にもいるんじゃないかと思えるのだ。

 管理者ってもしかしたら国毎にいるよね。とも思ったり。

 ……天職の声さんからの反応は気まぐれだなぁ。

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