第72話 金田光、迎撃態勢
金田光率いるコルセア拠点星系では、総力を挙げ、核融合機雷の生産を開始した。
機雷を設置するゲートは、本拠地星系に通じるゲートの正面だ。完成した機雷は順次設置されて行く。
HK号はコルセアの拠点惑星を周回中だが、惑星に向かって常に1Gの加速をかけているため、金田の副官となった
「コルセアの拠点までやってきて一番の収穫は、いつも自分の重さを感じることができるってことです」
「見るべきものなど何もないこの星系の中で、そこかしらいいところをどこでもいいから見つけることは大切だ。
悪いところや気に入らないところを見つけるより、どんなくだらないことであれ、いいところを見つけること方がよほど精神衛生上好ましいからな。精神が安定すれば自然体調も上向く」
「褒められている気は全くしないけど。わたしの体調は上々です。
そういえば、提督、スカイスフィア3が現れるとして、いきなり現れますかね?」
「うん? そうだな。まずは、ドローンで偵察してから乗り込んでくる可能性の方が高いな。
こっちの仕掛けに気づかれると対策を取られる可能性もある」
「対策というと?」
「例えば自爆ドローンを無数に送り込んで地雷原を啓開して、こっちの切り札の超大型核機雷を破壊するためにミサイルを撃ちこんでくるとかだな。それこそ俺たちが前回考えたように小型の遊星を突っ込ませてくることもあり得るな」
「マズいじゃないですか?」
「ああ、相当マズい」
「どうするんですか?」
「われわれには超空間通信技術がないが、スカイスフィア3にそういった技術がないと言い切れない以上、超空間通信技術を連中が保有している前提で対応する必要がある。
超空間通信可能な偵察ドローンが侵入してきたら、そこで撃ち落としたとしても、ある程度の情報を送られてしまう。
なので、偵察ドローンがこの星系に侵入する前に撃ち落とす」
「こっちから見てゲートをくぐった先、連中から見ればゲートをくぐる前にドローンを撃ち落とすということですか?」
「そういうことだ。
相手はドローンだし、偵察用となれば武装はあっても貧弱なもののハズだ。使用するのはコルセアの軍艦2隻もあれば十分だろう。待てよ、通常戦力を抜けた先に機雷原があるとはだれも想像できないだろうから、ある程度まとまった戦力にしておくか」
「だけど、向う側にある程度の戦力を置いていたとして、その戦力でドローンは叩き落とせたとしても、マトモな相手、それこそ、スカイスフィア3がやってきたら蹴散らされるだけじゃありませんか?」
「蹴散らされることが前提だ。通常戦力を抜けた先に機雷原があるとは誰も想像できないだろう」
「提督らしい作戦ですね」
「誉め言葉ととっておこう。少々の犠牲で勝利がつかめる可能性が上がるんだ。コルセアの連中も本望だろう。一月ごとにローテーションを組んでおけば、不満も溜まらないだろう。そうすれば、わざわざ俺たちの大切な補給艦を使って補給しなくて済むから一石二鳥だ」
「提督らしいとさっき言いましたが、俺の想像以上でした」
「今の作戦をセンターに教えてやって、小艦隊をゲートの先に送らせよう」
金田の指示に従い、拠点から小艦隊が派遣された。小艦隊が撃破されることは織り込み済みではあるが、中継器による連絡はとるので、撃破されたとしても何らかの情報を得ることは可能と考えていた。
もちろん金田自身は、状況によっては補給艦だけを引き連れHK号で拠点星系からの離脱も視野に入れている。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
宇宙海賊の根拠地と目される星系に突入したスカイスフィア3は、迎撃のため接近してきた宇宙海賊の第1群を一蹴し、人工衛星や、人工惑星などの宇宙海賊の宇宙施設を破壊してしまった。惑星上のラシイ施設も当然破壊している。
「圭一、地球は宇宙海賊たちによる被害は全くなかったのに、ここまで報復していいのかな?」
「翔太、
断てるなら禍根は断った方がいい。今回俺たちが巡り合わせでスカイスフィア3を手に入れていたから地球は無事だったわけだが、そうでなければ俺たちは宇宙海賊たちの奴隷になっていたはずだ。
拠点を潰したとはいえ根絶やしにしたわけではないから、将来的に復活して、今度は地球を根絶やしにするため復讐に現れるかも知れない。
そうならないように、太陽系の防備は十分固めておく。
今回分かったことだけど、敵の衛星は単純に浮かんでいるだけで、完全なすえもの切りだっただろ? 今まで、人工衛星をプラットホームにした地球防御を考えていたけど、飛び回れる宇宙船の方が少々コストは高くついてもコストパフォーマンスは高そうだな」
「そうだな。宇宙船なら攻守に役立つものな。
それで、逃げ出した宇宙船団はどうする?」
「この星系にゲートで連絡している星系の探査は探査艦で行なうがわざわざ追いかけなくて、放っておいてもいいんじゃないか?」
「それじゃあ、地球に帰るのか?」
「日本政府からも特に連絡もないし、地球のニュースを見ても問題は起こっていないようだが、そろそろ帰った方がいいだろう」
「わかった」
スカイスフィア3は逃げ出した宇宙海賊を追うこともなく、太陽系に向けて航行を開始した。この結果、金田光の対スカイスフィア3の迎撃策は空振りとなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます