第40話 $#&%126


 新たな謎の天体に向けドローン4号機D4を向かわせたところ、開口部らしき個所を発見したのだが、少し前の録画を確認したところ、その個所は開いていなかった。謎の天体は生きていた。


 開口部の大きさは60メートルほどで、形は真円と言っていいだろう。


「D4をあの開口部に入れてみる?」


「そうしよう」


 翔太と圭一はD4を操る明日香の後ろから、D4から送られてくる映像を凝視している。



 D4が謎の天体に接近することで、D4のライトの光芒が天体に届き、さらに詳細が明らかになった。


「表面は銀色。何らかの特殊鋼だろうがこの天体が宇宙船であることは間違いないな」


「開口部の脇に模様が見えるわ。へこみ? 何かの衝突痕?」


「へこんではいないようだけど、そこらの隕石が衝突した痕じゃないかな?」


「そんな感じもするわね。

 D4が中に入るわ」





 D4がゆっくりと開口部の中に入っていった。D4のライトの光芒に照らされた先にはかなり広い空間が広がっており、四方を囲む壁に何かの機械らしきものが整然と並んでいた。


「どこかのSFで見た宇宙空母の格納庫に見える。並んでいるのは宇宙戦闘機かも知れないぞ」


「確かに見ようによってはそう見えるよな。もしそうなら、この球体は宇宙人の作った宇宙空母か?」


「空母かどうかはわからないが、戦闘艦の可能性はあるよな」


「D4がその戦闘艦に近づいたから、帰還する艦載機のために格納庫へハッチを開いたってことかな?」


「それはないだろう。少なくとも敵味方の識別くらいしていないと、戦闘なんてできないからな」


「それもそうか。

 ということはD4は招き入れられたってことか?」


「何とも言えないが、可能性は高いな。だが、ハッチらしきものが開いたことぐらいで、他に動きが全くないし、宇宙人の気配どころか何の気配もない」


「待って! 少し前からD4が何か信号を拾ってたようよ。何かのデータかも知れないけれどいまのところ意味は不明」


「出せるか?」


「出せるけど、何の意味もない雑音に見える・・・わよ。いちおう16進数に当てはめてみる?」


「やってくれ」


「了解。1000倍に遅らせて表示するわ」


 モニターが薄く白くなり何も見えなくなってしまった。


「もう1000倍遅らせるわ。これでどう?」


 数字の羅列がスクロールしていたが目で追えるようなものではなかった。


「これは見たところでどうしようもないな。切っていいよ」


「了解」


 モニターにはD4のカメラが捉えている格納庫?の様子が再度映し出された。D4が格納庫の全周を移動したところ、格納庫の大きさは、高さは開口部と同じ60メートル、奥行き300メートル、幅100メートルほどの直方体の空間だった。底面?の壁には圭一の言う宇宙戦闘機が合わせて100機以上並んでおり、その反対側の天井にも同じく宇宙戦闘機が100機以上並んでいた。



「今度は、スカイスフィア2から、D4に大量のデータが送られてる。送信速度はD4の受信機の能力を超えている? 送られている先はD4じゃない。あの宇宙船だわ!

 スカイスフィア2のサーバーが勝手に動いてる」


「明日香、サーバーを停止できないか?」


「……。だめ、停止できない。電源を切れば停止できるけど、サーバーの電源を切ると、スカイスフィア2をコントロールできなくなる」


「さっきのデータ再生でトロイの木馬ウィルスを取り込んだ? これは、あの宇宙船・・・が仕掛けてきた攻撃なのか?」


「サーバーが勝手にデータを送っているけど、それ以外何も起こってはいないようよ。その気になれば、スカイスフィア2をコントロールできるはずなのに」


「こっちの情報を抜き出しているだけで、明確な敵意はないということか。しばらく様子を見るほかはないな」と、圭一。


 圭一の言葉のあと、格納庫を映し出していた正面モニターが一度暗くなり、モニターの中心に文字が現れた。


『チキュウ人のミナサン、ワタシは @#+帝国タンサ艦$#&%126のカンリ頭脳デス』



「通信だ! われわれのデータを読んだだけで日本語を理解した上でのものだ」


「これって、ファーストエンカウント? ファーストコンタクト?」


「ファーストコンタクトなんだろうな」


「返事はどうする? おそらく、キーボードで打ち込めばいいはずよ」


「じゃあ、『こちらは民間宇宙船スカイスフィア2、この星系に鉱石の採集にきた。攻撃的意図はない』と打ち込んでくれ」


「了解。

『こちらは民間宇宙船スカイスフィア2、この星系に鉱石の採集にきた。攻撃的意図はない』


 明日香がキーボードに打ち込んでエンターキーを押した瞬間、モニターに、


『了解した。

 スカイスフィア2、当方エネルギーコカツにより移動できず。エネルギーの供給をねがう』


 と文字が現れた。


「エネルギーとは何だろう?」


「水素、かな?」


「こちらで渡せる水素となると、水になるが、それでもいいのか? というか、どうすれば渡せるのか不明だな。

 取りあえず、『飲料水ではなく、用水なら400立方メートルは渡せる』と返事しておこう。用水タンクは100トン分も残っていれば帰還に支障ないだろう」


『飲料水ではなく、用水なら400立方メートルは渡せる』


『ありがとう、

 スカイスフィア2。こちらに1キロまで接近願う。そこで、そちらのタンクからこちらに400立方メートルの用水をテンソウする』


「テンソウって転送だと思うが、転送技術を持っているのか。

 1キロまで接近しろと言ってきたところを見ると、転送可能レンジがあってそれが1キロってことだろう。たしかにそれじゃあ、目の前にガス巨星があっても自分では水素の捕集が上手くできないだろう。

 明日香、スカイスフィア2を先方の宇宙船に寄せてくれ」


「了解。でも大丈夫かな?」


「大丈夫かどうかは何とも言えないが、先方は容易にこの船をコントロールできるんだろ? だったら、そうするしかないだろう」


「そうだったわね。

 それじゃあ、これから先方との距離1キロまでスカイスフィア2を近づけるわよ」



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