04. 第四章
攻撃
「
「おはよう、
今日もまた、台所で
「あれ?
「うん。
先日
主に衣食住の衣に関するものがメインで、
新しい世界でゼロから新生活を始めた私にはとても助かるものばかりだ。
春から夏にかけて着られる
「すごく似合ってるよ、その色。」
「えへへ。ありがとう。」
たすき掛けをして、ご飯の準備をしようとしていると、
「な、何?」
「いやー、
「え? いい感じって?」
「とぼけないで、昨日、
――
「そ、そんなことないよ。
「またまたぁー、色々聞きたいなー。」
私は適当にごまかしつつ、朝食の準備を始める。
「おぃ、腹が減ったぞー」
そのうちに、寝ぐせのついた、ぼさぼさ頭のままオババ様が起きてきて、ご飯の催促をする。
毎日私の一日はこうやって始まる。
朝ごはんが終わって、片付けをしたら、私はカムナリキをコントロールする修行を始める。
修行を始めて1週間がたった。
「お、オババ様、見て下さい!
「おぉーやっとダダ漏れカムナリキの栓を閉めたな!」
最近ようやく、自分や人の中に流れる気というか、そんなものが分かるようになってきた。
それに伴い自分のカムナリキの流れや色や温度まで感じられるようになった。
「なんか、不思議な感覚。」
「じゃあ、今日からは別の修行を始めなければな。」
「次はどんな修行ですか?」
「カムナリキを攻撃に使うことだ。」
「攻撃?」
不穏な響きに少し戸惑う。
「
「そ、そうなんですね。」
「生きていく力をつけるには、自衛の術を持たねばならん。そして、攻撃は最高の防御じゃ!」
「た、確かに。」
私は現代日本で通り魔に殺されそうになった。
もしあの時、自分に戦う力があったら、あれほどの恐怖心を感じずに済んだかもしれない。
「やります。教えて下さい!」
うむ、と言ってオババ様が
「オババ様の言いつけだからお前の修行に付き合うが、俺は忙しいのだぞ!」
「
「まぁ、そういうことなら仕方ないの。」
「
オババ様はそう言うと、
「わっ!」
その瞬間に空中に水の塊が出来て、
「げぇー。。い、息が!」
オババ様がパチンと指を鳴らすと、水の塊は一瞬で霧散した。
「わー凄い!!!」
私は思わずパチパチと拍手する。
「ゲホ、ゲホゲホ。拍手しておる場合か。俺は死ぬところだったぞ。」
「息を止めておれと言ったであろうが。」
「俺は水鳥ではないのだー。」
「
「はい。」
「今までダダ漏れだったカムナリキがようやく体内に溜まりはじめておる。その抑制しているカムナリキをしっかり丹田に溜め込んで、石を媒体にし、一瞬で放出させる。そうする事で相手を攻撃できる。」
「やってみます。」
私は
「力加減を間違えれば殺してしまうので気をつけろ。」
オババ様がそういうと、
「お、俺はお前の実験台にはならんからなー!」
「ちと、からかいすぎたかのー」と言いつつも、ゲラゲラ笑うオババ様。
「まぁ、この岩を相手にでも練習せい。」
オババ様は近くにあった大きな山岩を指さした。私の背丈ほど大きい。
「はい!」
私も自分のカムナリキを
その瞬間、
ドカーン!!
と物凄い音がして、
バキバキ!!と物凄い音がしたと思ったら、岩にヒビが入っていく。
―― え?
そして、ガラガラ、と岩が細かく砕けながら地に落ちていった。
あっけに取られる一方で、それを見たオババ様はケラケラと笑っている。
「攻撃は最高の防御と言ったが、人を殺さぬ程度にしなければなぁ!」
オババ様は愉快そうに言った。
―――
修行でカムナリキを使い果たし、ヘロヘロになり、タカオ大社の本殿まで歩いた。
鳥居をくぐり、社務所に入る。
「
「
「お豆たくさん入ってるぅ。美味しいー!」
「さっき凄い音が聞こえたけど、何だったの?」
「あ、それ、私の修行のせい。岩をこっぱみじんに壊しちゃった。」
「え?」
「カムナリキの丁度いい放出量が分かんなくて。」
「それで岩を砕いたんだ。怖ー!
「自分でもびっくりした。最初に
この時、この言葉を聞いて
おにぎりをつまんでカムナリキを回復させていると、
「あの人、ほぼ毎日来るね。」
「うん、オババ様いわく、突然いなくなったお姉さんが見つかるように願ってるんだって。」
そういえば、最近、若い女の人がかどわかされる事件が多いって聞いた。
「オババ様や、龍神様はそういう、いなくなった人たち、見つけてくれるの?」
「ううん。人探しは龍神様の管轄外だよ。」
「龍神は水の神様だから、稲作とか水の生き物とか、そういうのが管轄。」
現代日本では、急にいなくなった私を探してくれてる人はいるのかな。
私はふと思ったけど、家族も親しいと言える友人もいなかったしな、と諦めに満ちた思いを抱いた。
「あのう、すみません。」
さっきまで熱心に祈っていた
「これ、オババ様にお渡しできますか?」
「うちで作っている小豆です。いつも、オババ様が悩みを聞いてくれているお礼です。気持ちばかりですが。」
「わかりました。ありがとうございます。渡しておきますね。きっと喜びます。」
こんな感じで、オババ様には色々な貢物が毎日のように届けられる。
こういう小さい贈り物もあれば、米俵が何俵も届くこともある。
たいてい昼過ぎに日が傾くころには社務所を閉めて、
掃除をしたり、お散歩したりして夕方まで思い思いの時間をのんびり過ごす。
日が暮れ始めると、お風呂の準備をしたり、夕飯の準備をしたりして、
夜にはもうすることもなく、さっさと寝る。
私がここで暮らし始めて、そんな平和な毎日が続いていた。
でも、この平和な暮らしもちょとした事件がきっかけで、変容を遂げることになる。
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