声
「オババ様ー!オババ様ー!」
少し甲高い声が聞こえた。
子供みたいな声だ。
「どうした?」
「武士が来るー!」
―― え?え?どこから声がするの?
私はわけがわからず、部屋の回りをキョロキョロ見渡す。
オババ様は水晶を片付けつつ手元を見ながら応対しているのでわからない。
「
開いた窓に丸々太った白い鳩がちょこんと停まっている。
「武士が馬に乗ってくるー!
―― うわぁー鳩がしゃべってる!
「そうか。面倒じゃなぁ。」
ビックリしている私をよそにオババ様はサッサと水晶をしまい、鳩と会話している。
「あの鳩もオババ様の
と、
「
「はい。」
―― やっぱり秘密にした方がいいのか。
「じゃ、私は消えてますねー。」
「え?」
―― そんなことが出来るんだ。便利だな。
馬に乗ってやってきた武士は
私は、武士とオババ様にお茶を出した。
時代劇で見る侍と違うのは、着物がとてもカラフルだということと、
パッと見は私と同じくらいか少し上くらいの年齢に見えた。
その人は私の方をチラリと見た。
目が合ってしまったので、慌ててお辞儀をした。
「こちらの方は?」
「新しい巫女じゃ。
「よろしくおねがいします。」
「ご出身はどちらかな?」
「え、えっと…」
「
と、オババ様がすかさず助け舟を出してくれた。
「あの、私はこれで。どうぞ、ごゆっくり。」
これ以上いるとボロが出そうだったので、台所に引っ込んで待機することにした。
台所の横にある円卓に座ったら、ボンと目の前に煙が出て、
「ビックリした―!」
「私は、
「え? どうして?」
「異世界から来たというし。
「す、すみません。」
「それより、オババ様の恋の話、もう少し聞きたかった。」
「
「タイプって?」
「好みの人はどんな人かなって。」
「
「
「
―― イケボ好きか!
「見た目はどうなの?」
「んーあんまり好みの見た目ではないかなぁ。
話していてだんだんわかったことは、どうやら
「でも、私、まだ95歳だから、
「そっか、まだ95だもんね…」
色々つっこみどころがある発言だったけど、どうやら
そんなこんなで、
馬の足音が遠のいていく。
「おーい、
オババ様が台所に入ってくる。
「明日、城に行くことになった。
「私もですか?」
「オヌシ、この屋敷の敷地からまだ一歩も出ておらんだろ。外を見る良い機会じゃ。」
「
「へ?」
「わぁ。」
私の着物の
「ほう、オヌシ、
「これは、小さい時に人からもらった
私は
ふむふむとあちらこちら見ていたオババ様が私に
「よき願いが込められたものじゃ。だがそんなに光っては悪目立ちするな。当分、オヌシの修行はその光を弱めたり強めたり制御できるようになることじゃな。」
「そんなことできるんですか。」
「できなければいかぬ。カムナリキを
「あー、だから
異世界に来て三日で食いしん坊というレッテルを貼られてしまった。
「でも昨日までは光ってなかったのに。」
「オヌシの弱っておったカムナリキがいよいよ回復した証拠じゃ。」
「そういうことか。」
こうして私の修行メニューが決まり、この日は一日、光の加減=カムナリキの流出加減を調節する修行を行った。
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