第42話

 三対一では勝ち目が無い、という思いも頭を掠めた。魔法を使うのか、という思いも掠めた。

 わざわざまず、部屋を明るくするのら、命を取りに来たというのでもないのか、というのも掠めた。

 とにかく枕元の剣に、手を伸ばした。寝床から転がる様にして、立ち上がった。


 その時点で、三人の内二人は人間である事、もう一人はエルフな事に気が付いた。人間の片方は禿髪で大柄な事にも、気が付いた。


「来たぞ!」


 大柄で無い方の人間、ガイアンが言った。


「…?」


 戸口から音も無く、宙に浮いて現れた銀色の物体が司令官の目に、入った。

 人間の頭位の丸い物に、同じ位の大きさが有る、手の様な物が左右に付いていた。その、手の様な物は良く見ると、全ての指の先端が極めて鋭く尖り、刃物の様な細身に成っていた。

 と、気が付くと物体は、襟元近くまで接近していた。鋭い指先の手が、殺気を放った様に感じられた。

 声が、出なかった。


 激しい、金属音が響いた。

 司令官には、殆ど何も見えなかった、というより何かがはっきり見えてはいたのだが、何なのか全く掴めなかったと、言うべきであろう。

 銀色に光る物が目の前で、交錯した。突然現れたかの様にエルフの背中で視界が、塞がれた。シャウタールは、双剣使いだった。

 気が付くと、大きな鋭い手の付いた銀色の球体は、部屋の隅でゆらゆら、浮いていた。


「懐かしいぜ」


 ガイアンが、呟いた。

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