第2話

 ガイアンと呼ばれた男は、立ち止まって首だけ振り向いた。表情は、冷静だった。


 いわゆる三大種族、即ちドワーフ、人間、エルフが均等に暮らしている場所というのは実の所、そこまで多く無かったが。

 アイカリアは、そういった街の一つだった。北の、要衝。独立都市。雪国の厳しい環境が、街の特質をもたらしたのかもしれなかった。

 無法や無秩序も、あちこちに見受けられた。市壁は分厚く、城門は恐ろしげに、頑丈だった。

 何本かの大通りと、入りくんだ無数の路地。

 行き交う者達は皆忙しそうだったが、逆に言えば、穏やかにしていては此の街では、やっていけないのかもしれなかった。


「友人様!」


 足早に近付いて来たのは、細身の金髪のエルフだった。

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