第11話 はじめてのBで耳たぶ以上にあらゆる部分が燃えた件①

⭐️はじめてのB①⭐️


 俺の初チューは遅い。20代中盤の頃、俺はまだそれを体験していなかった。


 いきなりで申し訳ないが、まずはこれをカミングアウトさせて欲しい。


 そう、何を隠そう今回は俺の初チューの話。


 アラフォーおじさんから発せられる“初チュー”という言葉、どう考えてもキっツい。こんなキっツいワードを聞かされてる諸君には申し訳ないが、頑張って耐えてくれ。思い出して発している俺はもっとキツいのだから。


 さて、あれは俺が25歳の頃の話。22歳で大学を卒業した俺は就職はせず、別学科の大学院に行きたいと言い出して予備校に通ったり(バイトで貯めた50万を払ったのに予備校はすぐ辞めた。タイムマシンがあるならまずはあの時の俺をぶん殴りにいきたい)、家庭教師のバイトをちょろっとしたり、ニートってる仲間と一緒に夜の繁華街を徘徊したりと自堕落な日々を送っていた。


 そして自堕落ながらも退屈だった俺は、前々からやってみたかった塾講師のバイトをすることにした。


 そこはチェーンのフランチャイズな塾で、バイトをするには本部で面接と試験を受けて、合格すれば本部から店舗を紹介されてまた面接って感じのシステム。


 本部での試験は楽勝受かった(テストと喋りは得意なのだ)けど、店舗での面接には一度落ちた。大学時代に開けた7つのピアス穴(00ゲージの拡張アリ)がいけなかったらしい。当たり前である。耳が穴だらけの塾の先生なんて見たことない。そこの塾長さんには『いやー、僕はいいと思うんだけどねー、 ほら? 保護者の方がね、ごめんね』って申し訳なさそうに言われた。そりゃそうだ。こちらこそ申し訳ない。


 そこで俺は『そうか、俺、もう塾で働いたりできないのか、もうこの穴多分戻らないし……』と少し落ち込んでいた所、次の店舗を紹介され、そこは普通にあっさりと受かった。


 後で塾長に聞いた話、最初は見た目がチャラいから落とそうと思ったけど面接で喋ってる内容が気に入って採用してくれたらしい。もうその時何を喋ったのかなんて覚えてはいないが、『まあどうせ落ちるんだろ』とか思ってその場で浮かんだ思想をそのままの勢いで喋ったことだけはなんとなく覚えてる。意外と成せばなるものだ。ビビらずに、自分を信じている方がやたらと誠実に縮こまってるよりも結果を運んできてくれるらしい。


 そして始まる塾ライフは夢と希望に溢れたままに始まった。


 家庭教師をしたことはあったけど、教室に通って授業をするのはなんかこう、「先生!」 って感じがして気分が高揚したし、同僚がいるってのもなんかうれしかった。その塾は今から立ち上げで俺たちはオープニングスタッフ。有名大を卒業したけど仕事は揉めてやめた小山さん、資格取得に向けて勉強中の両橋さん、小柄なJDの川嶋さん。同僚達との関係もそこそこ上手くいっていて、毎日が楽しかった。


 そんな中で何より楽しかったのはもちろん、JDの川嶋さんと少しずつ近づいていく距離感だった。失礼な話だが、最初パッと見た時タイプではなかった。川嶋さんは地味目な顔付きに化粧と服装はちょいケバで、田舎のスナックとかにいそうな感じ。当時の俺は身の程知らずにも清楚系のお目目ぱっちりが好きだった。


 だけど話している時にコロコロと変わる表情が可愛くて、話している時に真っ直ぐ目を見てくる感じが『あれ? この子もしかして俺のこと好きなの?』感あるのも相まって、俺は次第にこの“川嶋さん”の事が気になっていった。


 ニート野郎が浮かれ始めたところで話は次回へと続く。

 

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る