第2話 猛毒の医者

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【登場人物】



[サンダー・パーマー=ウラズマリー]

 金髪の活発な青年。電撃の能力を持つ。

 サンダー・P・ウラズマリーから「プラズマ」というあだ名で呼ばれる。

 遺伝子能力養成学校高等部を卒業し、輸送船に忍び込んで宇宙へと旅立った。



 ▼ヴィスタ診療所


[ヴィスタ]

 医星で医者をしている若い女性。


[バリス・スピア]

 医星で医者をしている青年。

 目つきがとても悪い。



 ▼その他


[セリナ]

 プラズマの幼馴染の女の子。

 勤勉で真面目な性格。氷の能力を操る。



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 ~医星・ヴィスタ診療所前~



 バリスが診療所から出ると、お手本のようなチンピラ二人が立っていた。


「おやおや、これはバリス・スピア先生。」



 バリスは深いタメ息をこぼす。

「悪いが、バカにつける薬はねぇぞ。」


 バカと言われたチンピラは真に受けて頭に血を上らせた。

「てめぇ!元軍医だからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!?」


「お前らこそ、神立しんりつ病院が後ろ盾になってるからって調子こいてんじゃねぇぞ。」


「なんだとてめぇ!!」


 一触即発の雰囲気。

 そこに診療所から出てきたヴィスタが割って入った。


「やめて!!うちには今患者さんがいるの!」


 彼女の言葉を聞いた金髪のチンピラが粘着質な笑みを浮かべる。

「なるほど、じゃあ今のお前達には“人質”がいるということか。」


 そしてもう一人の茶髪のチンピラが続いた。

「もう観念してうちの病院の系列に入れ。金だって悪くない条件のはずだ。」


 その言葉にヴィスタはうつむきながら両手の拳を振るわせている。

「お断りします!私はね……金儲けのために医者をしてないの!!」


「じゃあ人質もろとも、ヴィスタ診療所は今日をもって廃業だ。」



「誰が人質だって?」

 院内に一人残されたプラズマは、居ても立っても居られなくなって、院外へと飛び出したのだ。



「お前も運が無ぇなぁ。ここの診療所に来たばっかりに死んじまうんだからよ。」



「死………」

 ヴィスタは“死”という言葉に体を強張らせた。


 すると茶髪のチンピラが前に出た。

「俺の能力は爪を硬化させて……」


 茶髪チンピラの爪が重力に負けることなく長く伸び始めた時だった。


 バリスの右手から、濃い緑色の液体が勢いよく射出され茶髪チンピラの顔面に直撃した。



「な、なんだ……!?」

 自身の顔にかかった液体を前腕で拭って確認している。


「バリス……」

 ヴィスタは不安そうな顔でバリスに目を向けた。



「な……何をかけた!!」


「お前、俺の二つ名を知らずに来たのか?」


「二つ名だと!?」


「お前ら本当にただの遣いっ走りなんだな。」


「誰が遣い走り……」

 すると茶髪のチンピラは、急に目元に手を当ててふらつき始める。


 突然のチンピラの異変にプラズマはヴィスタに尋ねた。

「アイツ何をしたんだ?それに二つ名って……?」


「彼は……【猛毒】の異名を持つ、バリス・スピア。」



 ふらつく茶髪のチンピラを見て、バリスは不気味な笑みを浮かべている。

 そして、チンピラに向かって走り始めた。



「猛毒……?」


「そう……Gene of Poison、毒の遺伝子能力を持つ医者。」



 バリスは走りながらジャンプすると、ふらつくチンピラの顔面に右膝をめり込ませた。


 医者が飛び膝蹴りをしている光景に、プラズマは目を丸くしている。

「あ……あいつ、本当にただの医者か?」


「彼はね……一年前まで軍医をしていたの。それも最前線で戦闘をしていた……ね。」



 茶髪のチンピラは数メートル吹っ飛ぶと、そのまま意識を失った。


「ただの医者だと思って舐めやがって。」

 バリスが倒れている茶髪チンピラを見下ろしていた時だった。


「死ねやぁ!!」

 もう一人のチンピラが小型ナイフをバリスの顔目がけて振りかぶる。


「バリス!!」



 プラズマからチンピラに向かって一条の閃光が走った。


「ぐはっ……!」


 プラズマの電撃がチンピラの持つナイフを伝って感電する。


「お前……!電撃の能力者か……!」


気絶するまでには至らなかったが、チンピラは引き腰になっていた。



「く、くそ!!覚えてろ!!トーレさんが黙ってないからな!!」

 そしてチンピラ達は分が悪いと感じたのか、お手本のような捨て台詞を吐いて逃げていった。






 ~ヴィスタ診療所内~



「お前すごいな!医者のくせに!」

 プラズマは目を輝かせていた。


「その“くせに”ってのは気に障る、やめろ。」


ってのも結構やるんだな!」


 バリスは隣に座るヴィスタに『お前言ったんだな』の冷たい視線を向ける。


「ご、ごめんって……」



「でもお前、まだ俺と同い年くらいだろ!?」


 バリスの機嫌を取り戻すべく、ヴィスタが代わりに説明を始めた。

「軍にも遺伝子能力学校があるの。」


「学生でありながら、有事のときは兵士として運用される。バリスは中等部、高等部の6年間軍医だったの。そして去年の秋に卒業して、私の診療所に来た。」


「私の診療所ってお前も若く見えるけど?」


「これは私の両親が開業した診療所なの。元々はドーンズ診療所って名前だったんだけど、一度潰されちゃって……」


「私の両親も神立しんりつ病院と研星会けんせいかい病院の圧力で……」

ヴィスタの表情が曇っていく。



「てことは、さっき来てたあいつらも………?」


「あぁ、この星を牛耳る二大病院の内、神立しんりつ病院の方だ。」



「そうなのか?」


「この星の構図としては、神立しんりつ病院と研星会けんせいかい病院VSヴィスタ診療所だ。」


「二つの病院が協力して最後の邪魔者おれたちを何とか潰そうとしてる。」


「だが、奴らも仲良しこよし、ってな訳でもない。」


「患者の取り合い、政府からの補助金の獲得、知名度、人材の引き抜き……」


「表向きは協定を結んでいる二大病院だが水面下ではお互いが優位に立とうとバチバチにやり合ってる。」


「そりゃ最後の邪魔者おれたちを排除すりゃあ相手にでかい顔はできるだろうからな。」



「で、俺らを潰すのに躍起やっきになってるのが、神立しんりつのトーレという幹部役員。さっきのチンピラはトーレの部下だろうな。」



「なんか医者も大変なんだな。」


「その上、うちの診療所はなぜか稀に来る患者の治療費が入ってこないからな。大変なんてもんじゃない。」

 バリスは、分かりやすく顔を背けるヴィスタを睨みつけている。


「よっしゃ!なら俺がアイツらやっつけるの手伝ってやるよ!!」


「当たり前だ。そんだけ食ったんだ。その分働け。」



「バリス…!病人だよ!?」


「あんなに食っちゃ寝してる奴が病人だと?」


「食うだけで寝てばかり。ヴィスタ、お前メシに睡眠導入剤でも入れてんじゃねぇだろうな?」


「ひ、ひどいっ!」

言われなき罪を被せられたヴィスタは抗議の意味を込めて立ち上がった。


「じゃなきゃコイツは天性の自堕落やろうだ。」


「まぁそれは否定しないけどさ。」

プラズマはのんきに鼻くそをほじっている。


「とにかく、次にチンピラどもが来たときはお前も率先して追い返せよ。」


「おう!任せろ!」


「ったくホントかよ……」




▽▽▽

▽▽




~医星・某所~



ヴィスタ診療所を襲ったチンピラ2人。

2人はある人物を前に萎縮していた。


「で、お前達はノコノコと尻尾撒いて逃げてきたわけか?」


「い、いえ……逃げたわけでは……ただ分が悪…」

茶髪のチンピラが言い訳を始めた瞬間、その場から大きく吹き飛ばされた。

吹き飛ばされた茶髪のチンピラは吐血しながら立ち上がろうとしている。


「ず……す゛み゛ま゛……」


謝罪する茶髪のチンピラに直径1メートル程の砲弾が撃ち込まれた。

砲弾は顔面に直撃し体ごと大きく吹き飛ぶと、彼は永遠に沈黙することとなる。


「さて、次はお前もだ。」


「ト、トーレ様……!」


もう一人のチンピラは、地面を伝って足先から徐々に凍らされ、瞬く間に全身が凍りついた。

そしてその上で砲弾――氷の大砲を打ち込まれ、赤い氷の結晶となり粉々に散っていく。



「バリス・スピア……」


「パーマー・ウラズマリー………!!」




To be continued.....







【EXTRA STORY】


~ヴィスタ診療所・テレビの前~



「プラズマ、待ってて。」


「あ、あぁ……」


バタンっ


「大丈夫か……?」



テレレレ~♪


『オール大元帥!どうされました?』


『どうも最近、胃腸が悪くてね……』


『それなら……』


ペッペペ~~ン♪


パカッ


『こ、これは……!』


『ストマック・ストップです!!』


『さっと効いて、水要らず!!』


『大元帥も使ってます。』


神立しんりつや~くひん♪』



「流石医療の星……このCM、もう30回は見たぞ……?」



――なんだとてめぇ!!――


――やめて!!うちには今患者さんがいるの!――



「やっぱいくか……」



To be continued to next EXTRA STORY.....?

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