22・決着
「ハアアア!!」
「オオオオ!!」
互いに突っ込み、鍔迫り合いを始めるラウルとアウスト。
「グオオオ!!」
「グゥ……この……デカブツ……!!」
それに合わせるようにヘリオスとメレスもぶつかり合う、メレスは聖剣のダメージで大きく弱体化しており、先程の力は失っているようである、しかし、ヘリオスも先程のダメージにより思うように力が出ない様子だった。
「クッ……!」
「ハアア!!」
一方、鍔迫り合いから激しい斬りあいを始めるラウルとアウスト、しかし、戦いはアウストの方が優勢だった。
(くっ……かなりのダメージを受けている筈なのに、こんな……)
「舐めるなよラウル、私とて、悪魔の力だけに頼っていたわけではない!」
「ぐぁ!」
アウストの力ずくの一閃に吹き飛ばされるが、なんとか体勢を立て直すラウル。
「オオオオ!!」
さらに激しく攻めるアウスト、ラウルは防ぐだけで精一杯のようだった。
「クッ……!! グァ……!!」
「どうしたラウル……我々を倒すのではなかったのか!?」
挑発するアウストに対し、ラウルは無言で応戦を続ける。
(なんだ……何を狙っている……)
アウストはそんなラウルの様子に不信感を抱いていた。
(!? あれは……)
いつの間にか聖剣の放つ光が増している事に気付いたアウスト、そして、斬りあっている間にアウストの背後にメレスが並ぶ。
「ウオオオオォォ!!」
「!?」
ラウルはこの時を待っていたかのように走り出し、聖剣の切っ先をアウストに向ける、アウストはその突きを避けるが、ラウルはそのまま剣を突き出し、貯めていた魔力を解放、聖剣から聖光を一直線に放つ、その聖光は真っ直ぐメレスに向かって行く。
「メレス! 後ろだ!!」
「!?」
後ろから放たれる聖光に気付いたメレス。
「クッ!!」
間一髪でその聖光を避けたメレス、その聖光はヘリオスに命中した。
「まさか……私ではなくメレスを狙っていたとはな……」
「けど残念だったわね……不意打ちは失敗、挙句にその不意打ちを仲間に当てるなんて、お馬鹿さん。」
得意げに笑うメレス。
(……?)
しかし、アウストは尚もヘリオスに聖光を打ち続けるラウルに再び不信感を抱く。
(……!? あれは……)
そして、アウストは聖光がヘリオスの胸の魔法陣に当たっている事に気付いた。
「!? まさか……」
ラウルの目的に気付いたアウスト、その時、ヘリオスの身体が輝きだした。
「まずい……そうはさせんぞ!!」
「!?」
ラウルに斬りかかるアウスト、ラウルはそれを避ける。
「……気付いたようですが……もう、手遅れですよ。」
得意げな笑みを浮かべるラウル、そして、ヘリオスの身体が神聖な光に包まれる。
「!?」
「まさか……契約を通じてドラゴンに聖剣の力を与えた……!?」
メレスの表情に驚愕と恐怖が浮かんだ、ヘリオスはメレスを睨む。
「蜥蜴風情が……舐めるんじゃないわよ!」
メレスは左腕を槍に変えてヘリオスに突き刺そうとする……が、その槍はヘリオスに突き刺さる瞬間、石灰のようになって崩れ落ちた。
「な……!?」
(ドラゴンは無限の魔力を生み出せる……それで与えられた聖剣のエネルギーを増幅させたのか……)
「ヒ……ヒィ……!」
メレスはヘリオスに対して怯えている様子だった、ヘリオスはさらに右手をメレスに対して振り下ろす、すると、その手はメレスの身体を容易く切り裂き、メレスの身体が崩れていく。
「ギャアアア!!」
「グ……グアアアア……!!」
メレスは悲鳴を上げながら仰向けに倒れる、さらに先ほどと同じようにアウストにも傷が現れる。
「グルルル……」
ヘリオスは唸りながらメレスに迫っていく。
「クッ……冗談じゃないわ、こんなところで……!!」
メレスは翼を広げ、空に逃げる。
「!?」
しかし、ヘリオスも空に飛び、メレスを捕らえた、そのまま地面に投げる。
「ギャッ!」
さらにヘリオスは上空からメレスを踏みつける。
「グゲ!」
そしてヘリオスはメレスの頭を掴み、持ち上げる。
「ア……グ……」
弱々しい声をあげるメレス。
「グルルル……」
ヘリオスは自身の体内に膨大な魔力を貯める、ヘリオスの腹部、喉、口内が金色の光を発する、そして、ヘリオスはメレスを上空に投げる。
「グゥオオオオーーーー!!!」
そして、ヘリオスは上空に投げたメレスに対し、体内に貯めた魔力をブレスとして吐き出す、その神聖な金色の光が混ざった赤い炎は、メレスの身体を包み込んだ。
「ギャアアアーーー!!! あ……熱い……熱いぃぃぃ!!!」
メレスは神聖な炎に焼き尽くされていく。
「グ……グァアアアアーーー!!!」
さらにアウストもメレスと同じように苦しみだす。
「な……何故だ……何故……こんな……」
アウストは体を焼かれるような痛みに苦しんでいた。
「い……嫌……こんなところで死ぬなんて……こんな……所で……ギャアアアアーーーーー!!」
天へと上る神聖な火柱は、メレスを一片残らず焼き尽くした。
「!?」
その光景を、リリーを連れて物陰に隠れていたシェリーも見ていた。
「……勝ったのね。」
シェリーは笑みを浮かべる。
――――――――――
一方、ペンタレスタ王国から遠く離れた森で白い毛を全体に生やした竜が、何かを感じ取ったように首を動かす。
「どうした、ナハト。」
白い竜と一緒にいた白いフードを被った男が、竜に尋ねる。
「……」
白い竜は、黙って一方を見つめる、その方角は、ペンタレスタ王国の方角だった。
――――――――――
「……」
ラウルは座り込んだまま上空を見上げていた、メレスは炎に焼き尽くされ消滅、アウストは横たわって動かない。
「……終わったか……」
ラウルは仰向けに倒れ、目を閉じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます