第10話

 チロシです。


 僕のクーラーボックスが意味が分からんとです。


 五年前にキャンプをする為に買ったクーラーボックスとです。


 この五年間にクーラーボックスに詰め込んだ事のある物なら何でも取り出せたろですよ。


 2Lのペットボトルや一番小さいホールケーキ、食材は無論の事、調味料も何でも出てくるとです。


 粉末紅茶・インスタントコーヒー・牛乳・砂糖・蜂蜜・ホットケーキミックスなども出てきたとです。


 もう僕のクーラーボックスは何でもありとですよ。




~*~*~*~




 二人の女の子は、オッサンのチロシに泡を洗い流され、目を開く事が出来たのはいいが、全裸であった事が不幸である。二人の肉付きの良い身体がオッサンにガン見される状態だったからだ。


 二人はチロシに向こうに行けと促すが、チロシは黙って狐獣人の女の子の頭にシャンプを泡立てて洗い出すと、俯いたままの状態をキープさせたまま泡を洗い流して、泡が目に入らない洗い方を教えた。仲間の女の子にも教える為にチロシは洗ってあげていた。


 続いてリンスも同じ要領で、二人の髪を洗い、そして泡を流してから顔に残った水分を手で拭ってあげた。髪が終わると次は体を洗うのだが、この時にチロシは必要は無いのにチロシは居座り、二人の身体をナイロンタオルに洗い出している。


 完全にチロシのセクハラであったが、チロシの内心では違っていた。


(頭も洗い方を知らないのなら、体の洗い方も教えないとわるいな)


 などとチロシは勝手に解釈をして、二人の身体を交互に洗い始めていた。此処で背中だけ洗えばいいのに、チロシは遠慮と言う言葉を持ち合わせていない様だ。


 二人の背中を洗い終わると、今度は前を向かせてから、腕を握り洗い出し、そして胸も洗い出していた。胸を洗い終わると足を洗い、手を泡立てると女の子二人の股間に泡立てた両手が伸びるが、二人のダブルパンチがチロシの顔面に決まる。


 流石に女の子の大事な部分は洗わせて貰えなかったが、チロシはナイロンタオル越しに彼女達の豊満な胸を堪能してしまう。二人の女の子の胸の大きさはEカップ異常である。その胸をチロシは堪能したのだ。


 身体を急いで洗った二人は、バスタブに浸かるとチロシに桶を投げつけて、向こうに行けと促していた。


 二人がお風呂から上がると、チロシは二人の女の子にフルーツ牛乳を手渡してあげた。二人はフルーツ牛乳の匂いを嗅ぐと、口をゆっくりカップに近づけフルーツ牛乳を飲みはじめる。


 二人から歓声がが上がり、何やら言っているがチロシには残念ながら理解出来なかった。そうこうしている内に、焚き火の前で二人の女の子はウトウトとしてきた様で、お互いに肩を揺らしはじめる。

 

 チロシはテントに二人を入れると、一つのシュラフに二人を入れてチャックを閉めたが、チャックは胸の所で止まりストライキを起こしてしまった。仕方が無いのでチロシは毛布を取り出すと二人に掛けてあげた。


 チロシは、バスタブや桶やスノコを片付けはじめ、カーゴトレーラーに立てかけて干すと、使わない物もカーゴトレーラーに積み込みはじめた。それが終わるとチロシはカーゴトレーラーからデッキブラシを取り出し、折り畳みバケツに、お風呂の残り湯を汲んでおり。バケツを持ってカーゴトレーラーに括り付けた荷馬車の荷台に乗り込むと、バケツに汲んでいたお湯を荷台に掛け、徐に血糊が付いた荷台を洗い出していた。


 荷馬車の掃除が終わり、二人も寝かし終わったいたチロシは、クーラーボックスから缶チューハイを取り出すと、プシュと音をたて酒を呑み始めた。ツマミはスルメの一夜干しであった。


 チロシの側には手斧が置かれており、そして真っ直ぐな枝がチロシの手に握られている。チロシは太い枝で槍を作ろうと、森に入り太い枝を鋸で切ってきた。


 枝の先端を鋭利に尖らせ、投げても刺さる様に仕上げる。


 槍が完成して時間を見ると、深夜の一時を回っていた。狐獣人の女の子を起こしにテントの中に入ると、寝相が悪いのか二人はシュラフから脱走しており、お尻を丸出しにして寝ていた。


 それを見たチロシは、二人をもう少し寝かせる事にする。


 そして、焚き火に薪を足して時間を潰していると、二人が起きだしてきており、チロシは手斧と木槍を二人の女の子に手渡すと、テントに入り眠りに付いていた。




~*~*~*~




 チロシが目が覚めると、外からは何かが焦げる匂いがしてくる。急いでチロシは服を着ると外に出てみたら、狐獣人の女の子が目玉焼きを焼いているが、煙が黒かった。


 チロシは狐獣人の女の子からフライパンを取り去ると、急いで目玉焼きをフライ返しで裏返し、焦げた部分をこそぎ落とそうとしたが無理であった。この食材はチロシが朝食で使おうと、昨夜の内に準備をしていた物だ。


 その食材を見た狐獣人の女の子が、慣れない手付きで調理をした結果だと直ぐにわかった。狐獣人の女の子はフライ返しを使わず、目玉焼きを裏返そうとしていたみたいで、指が赤く火傷をしていた。


 フライパンを台に置くとチロシは直ぐに、シムニ゛から救急鞄を取り出してきた。そしてオロナイさんの出番であったのだ。オロナイさんは凄いのです。切り傷や火傷にデキモノにも利く凄いお方なのです。


 オロナイさんを塗られてテイピングされた手の指を眺めていた狐獣人の女の子は、チロシの方を向き一言だけ何かを伝えていた。その顔は赤面しており、恋する乙女の様に見えなくも無かった。


 そんな二人の遣り取りを竈の前で見ていた、仲間の女の子は面白くなさそうに、土鍋で作ったスープを台に運ぶ途中にいたチロシの脛を蹴っ飛ばした。


「いったぁー」


 チロシの叫びに驚いた狐獣人の女の子がチロシを見た時には、仲間の女の子が何回もチロシの脛を蹴っている所だった。


 狐獣人の女の子は、仲間の女の子に何か言うと、蹴るのを止めてくれ、チロシは脛をさすっていた。


 チロシは焦げた目玉焼きを半分に切ると、クーラーボックスから食パンとマヨネーズを取り出し、食パンは半分にカットしてからマヨネーズを掛けた。その上に焦げた目玉焼きを載せてからパンを載せ簡単サンドの出来上がりであった。


 少し焦げて苦いが、苦味も直ぐに消えてマヨネーズの味で誤魔化されいたのだ。そのサンドを口にした狐獣人の女の子は、少し苦そうな顔をしたが、直ぐに口の中に広がるマヨネーズの味に歓喜になっていた。


 仲間の女の子も同じである。因みにチロシは一人だけ新しく自分で焼いた目玉焼きでサンドを作って食べていた。


 朝食も終え、三人は出発の用意を済ませると、用を足す為に、少しだけ森の中に入って行く。チロシと女の子達とは距離があるが、静かな朝の森である。何も喋らなければ音が聞こえても不思議ではない。


 チロシは、気を利かせて歌を歌いだしていた。


「かんとりーふぁーむ、なんちゃらかんちゃら」


 この男は歌詞を覚えてないのに無理に歌っていた。


 用を足し終えた三人は、シムニ゛に乗る為にチロシの後ろで待機していたが、チロシは二人に助手席に行く様に促すと、即席でシムニ゛の乗り降りの講習会を始めだした。


 レッスンワン、ドアの開け方。レッスンツゥー、後部座席の乗り降りの仕方を二人に教えて、そして実践して見せた。二人の女の子も理解した様で、乗り降りの仕方を完璧に覚えてしまう。此れにはチロシもホッコリであった。


 そして三人が乗り込んだシムニ゛は、ゆっくりと力強く歩みを進めて行く。


 何処までも何処までも、シムニ゛の音が空に木霊していた。


(第一部・完) 





 

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