純潔は甘い味をしていない
沖伸橋
純潔は甘い味をしていない
流れやすい娯楽がある。異性、酒、賭博。少しの労力で強い快楽を得られる存在。人間は自律を失うと必ずこちらに流れるというのは、世の常である。これらに溺れるとき、堕落と貧困が伴うことも常識と言っていっていいだろう。人間として自らを律して、これらから離れて物と対峙しようとするとき、必ず孤独を伴う。孤独とは人間という生物の基盤に刻まれた、アラートである。自然界では孤独は誰からも助けを得られない状態、即ち死が近い、自然選択、神の手が己を社会から排除しようとする。人間はその大きなたなごころに攫われないように群れ、騒ぐ。私はこんなに社会にとって大事な存在ですよと。だがその姿は、人間社会が形作ってきた理性という最も重要なファクターの視点から見れば、非常に哀れである。願うだろう、堕落せず、女に溺れず、酒に溺れない、客観的に高潔な存在になるためには。ならば己をその神の掌の上で踊らせねばならない。連れ去られてしまうかもしれないという恐怖と手を繋ぎ、神を欺く。狂うしかない。死を越えるような強い衝動で孤独と向き合う。それが可能になったとき、本物の理性を手に入れることができるだろう。その時人間はひとの形をしているか?
純潔は甘い味をしていない 沖伸橋 @tgf
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