第1章 Revolution

第1話 時代遅れの侍と盗賊達

「さて、どうしたものかな?」


木の上から見学している俺は、目を細めながら盗賊たちを見ていた。

盗賊たちの武器は小型ナイフで、それに比べて護衛の騎士たちの装備は立派だったが、盗賊たちは素早い動きで騎士達を翻弄し、甲冑の僅かな隙間に斬撃を入れ着実に倒していってた。


「…騎士達の剣術はまぁまぁだが、盗賊たちの方がめちゃくちゃだが、騎士よりは高いな…」


仕方ない、助太刀と行こう。

俺は冷静に両者の剣術を見て、騎士に加勢することに決めた。

俺は、木から飛び降りそのまま、盗賊たちに向かって走り出した。


「おい、まだ開けねぇのか」


騎士達を倒した盗賊達が馬車の中にいる少女を狙って扉をこじ開けようとするが扉は

固く苦戦していた。


「……天神一刀流てんじんいっとうりゅう神風乱舞シナツヒコ


走りながら春夢を抜刀した俺は、一度呼吸を整え、俺が使う流派、天神流を盗賊達に向けて繰り出した。

俺の使う天神流は、伝説の剣術として知られておりすべての技目には日本神話の神々の名が付けられている。だが、すべて使えるようになるためには、数十年間毎日厳しい修行をする必要がある。でも、俺はたったの数年ですべて使えるようになり、天神流を使って世界一の剣豪に成り上がった。

神風乱舞シナツヒコは、一本の刀で風のように素早く、無数に斬り裂くの技。

斬られた盗賊達は、全身を斬られ次々と倒れていく。


「な、何だこのガキ!」


全く、もう少し練習してから来いよ。

盗賊達は、応戦する為に小型ナイフで騎士達と同じ方法で俺を倒そうとしてくるも、全くもって当たらない。

俺はこうみえても、世界一剣豪だ。

剣術を見ただけですぐに見極める事ができるから、簡単に避けることができる。

さて、やりやすくするためにも逃がすか。


「ほら、早く逃げたほうがいいぞ」


俺は、馬車の中にいる少女と執事らしき男にそう言い逃げれるように盗賊達を退ける。

すると、中から執事が出てきて馬を操って馬車を馬に引かせながら、颯爽と去って行った。

よし、邪魔がいなくなったしあとは、叩きのめすだけだな。


「…チッ…邪魔ばかりしやがって…!」


俺が構えをとった瞬間、街道の並木から目付きが悪い、マフラーを付けている少年が他の盗賊を連れて現れた。

親玉か?それにしては、若すぎるような…?なんなら、俺より年下のような…

少し考えていた俺に、少年は玉を取り出し思いっきり投げてきた。

すぐさま、春夢で真っ二つに斬ろうとするが、玉に刀の刃が当たった瞬間、玉が爆発し、俺は黒い煙で包まれた。


危険な煙デンジャラス・スモーク


少年が技名を言うと、部下であろう盗賊達が歓喜の声を上げる。

少年は投げナイフを取り出し、黒い煙幕の中に居る俺向けて、投げナイフを投げ飛ばしてきた。


「さぁ。暗闇の中で串刺しになれ!」


暗い煙の中、俺は神秋も抜刀し、構えた。

神秋を抜刀した理由は簡単だ。


「天神ニ刀流にとうりゅう月神三日月舞いツクヨミ


俺が繰り出した技、月神三日月舞いツクヨミは、視覚が悪い中綺麗に舞いながら相手を斬る技。

月神三日月舞いツクヨミは、集中力と視界が悪い中でも相手を察知できる力が必要であるため、覚えるのが難しく難関な技の一つだ。

暗闇の中、俺は綺麗に舞いながらナイフを避け、そのまま煙幕の外に出て急所を外して少年を斬った。


「勝負ありだ…」


刀を鞘に収め少年に近寄ろうとするも盗賊達が立ち塞がる。


「若には、手出しさせねぇ!」


「そうだ!若は俺らの命の恩人なんだ!」


……何、この俺が悪者扱いされる展開…めっちゃ胸が苦しいんですけど。


「…お前ら、下がれ…」


フラフラになりながらも少年は立ち上がり、何個かの玉を取り出し構える。


「で、ですが…若…」


「お前らだと…そいつには勝てない…殺された奴らの仇を討つ為にも、俺にやらせろ…!」


…うん?…待って、勘違いしてない?!俺、別に殺してないよ!血は出てるけど、傷は浅いし気絶させただけだよ!


「あの~…アイツら生きてますよ…?」


俺は誤解を解こうとするも、少年は信じてないのか俺を睨みつけた。


あっ…駄目だこりゃ。説得失敗だな~。


「若!そいつが言う通り、生きてます!傷がありますが浅いです!」


確認しに行った仲間の盗賊だろ男が、俺が倒した盗賊達が生きていると言ったため、少年は目を見開いて驚いた。

ナイス!盗賊A!

俺は内心でガッツポーズをした。

そんな俺に対して、少年はただ呆気ない顔で見ていたが、我に返り


「お前は、一体何者なんだ?まさか…女王の刺客じゃないだろうな…!」


威圧を出しながら、俺に問い詰めた。

女王?何のことだ?

俺は疑問に思いつつ、自己紹介をした。


「俺は、秘密結社ラグナロク 第一柱ファーストの神雷 牙王…!時代遅れの侍さ」


と、陽気な笑顔で言った。


「さ、サムライ…?」


聞き慣れない単語に戸惑う少年と盗賊達。

あ~…剣士の方が良かったか?


「…どうします?こいつ…」


声をできるだけ抑え盗賊が少年に話しかけた。


「…取り敢えず拠点に連れて行く……」


「えっ?!危険すぎませんか?!」


「あほ、拠点に連れて行って武器を取り上げてから、色々と問い詰める…俺らに害すると分かった瞬間、速攻処分…それ以外なら無理やり仲間にする…それでいいか?」


「俺達は若の意思に従うまでです…反論なんていたしません」


そう言い盗賊は引いていった。


「ついて来い、お前には、色々と聞きたいことがある」


「……分かった、行こう」


俺は、少年達の後をついて行った。

そして、この出来事が世界中だけでは、なく神々までも巻き込む事件の始まりとなるとは、ラグナロクメンバーは勿論、天空神ゼウスさえ思っていなかった。

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