ep40 巨大怪鳥にお仕置きしてやる!

「空色の魔女! ただいま参上! あのタイミング最悪クソッタレ巨大怪鳥はどこだー!?」

「おお! 来てくれたか! ……なんだか、荒れてないか?」


 アタシはタケゾー父の連絡通り、空色の魔女として研究施設の屋上へと姿を現した。

 タケゾー父にも指摘されるが、仕方ないじゃん。

 無料の昼食は食べそびれたし、洗居さんは清掃用務員の奥義を使って犠牲(?)になったし、こっちだって怒り心頭だ。

 いつもいつもタイミング悪く現れるし、今度こそあの巨大怪鳥をとっちめないと気が済まない。


「グゲゲェ!? 空色の魔女だト!? どうしてもうここニ!?」

「生憎、アタシはあんたをぶっ飛ばすためならば、地の果てにだって飛んで行ってやんよ! さあ! 今度こそ覚悟してもらおうか!」


 そして問題となる巨大怪鳥も、アタシが屋上にやって来たのとほぼ同時に登場。

 もうこいつに振り回されるのもうんざりだ。ここで決めるためにも、まずはデバイスロッドをガジェットから召喚し、腰かけてこちらも上空へと舞い上がる。


「いつもは金目のものばっかり狙ってるのに、今日はどういう風の吹き回しだい? ここがどこだか分かってんの?」

「こちらとて、事情があるんダ! どの道、貴様は始末しておかないと面倒ダ! 役目よりも先に、ここで葬ってやるゾォオ!!」


 互いに同じ高さまで来たところで少し言葉を交わすも、どうにも今回の巨大怪鳥はこれまでと目的が違う。

 ここに金目のものなんてないし、そもそも警察の施設だ。おまけに『役目』なんて言ってる辺り、誰かに動かされているのだろうか?

 誰かに命令されているにしても、なんでわざわざ警察の施設なんて狙うのかね?


「まあ、今は気にすることじゃないよね。赤原警部! アタシもちょっと派手に暴れるから、今は人をここに立ち入れないでねー!」

「ああ、分かった! 多少は加減して欲しいが、その巨大怪鳥の相手を優先してくれ!」


 アタシは宙に浮きながらタケゾー父にも許可を取り、早速巨大怪鳥に挑み始める。

 もうこれで三度目の対峙だったっけ? アタシとしても、これで三度目の正直としたい。

 この屋上は特別なものなどない、実にシンプルなバトルフィールド。ある意味、決戦の場としては最適か。


「でも、こうもシンプルとなると、こっちでの工夫が必要か。あんまり長く時間はかけられないし……ね!」


 裏を返せば、今回は鉄板などで羽根の弾丸を防ぐ手段もない。ここは余計な時間をかけず、速攻勝負に出るのが一番だ。

 まずは腰かけていたロッドの上で立ち上がり、巨大怪鳥目がけて蹴り飛ばす。



 ビュンッ!



「フン! ワンパターンな小娘ガ! そう何度も同じ手を――ガフッ!?」

「そっちこそ、アタシの能力を把握しきれてないじゃん? もうちょっと相手を観察するこったね!」


 蹴り飛ばしたロッドミサイルは躱されたが、これは陽動。本命はこのアタシ自身。

 ロッドにトラクタービームを接続し、アタシを巨大怪鳥の方に引き寄せながらのグーパンチ。

 強化した身体能力に速度が上乗せされたパンチを、憎たらしい巨大怪鳥の頬に叩き込んでやった。


 相変わらず魔女のくせに肉弾戦ばっかだとは思うよ? でもね、この戦法って便利なのよ。

 デバイスロッドとトラクタービーム用のガジェットがあれば、どこでだって通用するわけよ。

 おまけに今回は見晴らしのいい屋上でこれをやるにも最適だし、さっさと勝負を決めちゃいたいしね。


「ほれ! もういっぱーつ!!」

「おのレェ! この忌々しい魔女ガ! だがこうすれば、その力も振るえまイ!」



 ヒュゥウンッ!


 ――パシンッ!



 今度は屋上に立ったままロッドを槍投げよろしく投げつけるが、流石の巨大怪鳥ももう懲りたのだろう。

 向かってきたロッドを回避せず、その巨大な足でキャッチしてきた。

 うむ。確かにそれをされると、アタシもこのままトラクタービームで突進パンチとはいかない。

 こっちはロッドの位置までしか突っ込めないから、これだとそのまま懐でキャッチされちゃうか。

 鳥頭なりに考えたじゃん。




 ――でも、その選択はマズったね。




「デバイスロッド! 放電!」



 バチバチチィイ!!



「ゲゲガァァア!?」


 アタシの合図により、ロッドはスタンロッドへと変化し、その電撃が巨大怪鳥を襲う。

 デバイスロッドはアタシ専用に作ったものだ。遠隔操作だってお手の物よ。

 その電撃で怯んだところで、今度はトラクタービームをロッドに接続し――



 ドガァァン!!



「ゲビャァアァ!?」


 ――飛び込みながら懐目がけて、魔女式ライダーキック。『魔女式』が何かは気にしない。

 ともあれ、威力は絶大。ロッドを足で掴んでいたせいで、アタシを懐へ導いてしまったのも要因として大きい。怯んでしまえば、こっちが捕まる心配もない。

 移動エネルギーとアタシの全体重を込めた一撃で、巨大怪鳥もロッドを手離して大きく吹き飛ぶ。


「ゲ……ゲェ……! こ、こんなふざけた小娘ごときニ……!?」

「別にアタシもふざけてるわけじゃないんだけどね。これでも大真面目さ。悪いんだけど、間髪入れずに終わらせてもらうよ!」


 戦況はアタシの優勢。それでも、攻撃の手を緩めることはしない。

 ここにはタケゾー父もいるし、ソニックブームや羽根の弾丸を使わせるわけにはいかない。誰かを巻き込ませたりはしない。

 もう巨大怪鳥の方もダメージが重なって、まともに空も飛べなくなってきている。


 ――次の一撃で、完全にトドメを刺してみせる。


「デバイスロッド! フルチャージ! 焼き鳥一歩手前で勘弁してあげるけど、これでおとしくしてもらうよぉお!!」


 アタシは巨大怪鳥の頭上まで飛び上がると、ロッドを両手で握って振りかぶりながら、一気に急降下を始める。

 ロッドには最高レベルの電力をチャージしてある。こいつをまともに叩きつけられれば、いくら巨大怪鳥といえどもひとたまりもないはずだ。


 両手に力を込め、アタシは巨大怪鳥の脳天へと狙いを定める――




 バギュゥゥン!!



「あぐぅ!!?」




 ――その時、アタシの右肩に焼けるような痛みが走った。

 突然のことすぎて、状況が呑み込めない。痛みに堪えながら右肩を確認すると、血が噴き出しているのが見える。

 何かで攻撃された? でも何で? どこから攻撃を?


 ――いや、そもそも誰が攻撃してきたのだ?

 巨大怪鳥は今も怯んでいるし、かといって屋上には他にタケゾー父以外は見当たらない。

 わずかに目を向けてみても、突然の事態に唖然とするタケゾー父の顔しか映らない。

 ただ、何よりもマズいことがある――




 ――アタシは完全に態勢を崩し、屋上に真っ逆さまに墜落している。




「こ、これは……終わったかも……」


 ロッドで再浮上しようにも、右肩の痛みで制御が利かない。

 態勢を立て直すこともできず、そのまま頭から屋上へと落ちていく。

 いくらアタシが超人的パワーアップをしているとはいえ、かなりの高さからの墜落だ。正直、助かるか不安。


 それでも、アタシにはどうすることもできない。

 体の自由を失ったまま、どんどんと屋上の床が近づいてくる――



 ガシィイッ!!



「だ、大丈夫か!? 空色の魔女!?」

「タケ……あ、赤原警部……?」

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