第145話 復活⑬
フェリクスは剣を握り直すと再びアイリーンへ向かって突進する。アイリーンは体の前で腕を交差させて僅かに悩んだ。
『また突っ込んで来るか。セシルはまだ倒れたまま。特に策は無いか』
周りを冷静に見渡しながらアイリーンが待ち構える。
「取り付いたぞアイリーン」
懐に入り込んだフェリクスが剣を振りかぶって叫ぶがアイリーンは片方の口角を上げて不敵な笑みを見せる。
「呼び込まれたと思わんか? フェリクス・シーガー」
アイリーンが腰に携えた剣を引き抜くと、迫るフェリクスの剣を受け止めてみせる。鍔迫り合いを繰り広げながら互いの顔が近づく。
「剣術もいけんのかよ?」
「なんだ、私を魔法しか取り柄のないただのウィザードだとでも思ったか? 私の身体能力は並のソルジャーの比ではないぞ」
「まさかハイブリッドってやつかよ」
「そう言われる事もあるな。セントラルボーデンのナンバーズを舐めるなよ!」
フェリクスとアイリーンが激しく剣を交わらせる中、やや離れた位置で倒れていたセシルが体を起こす。
「いてて、ちょっと怒らせ過ぎたかな? フェリクスと接近戦で互角って化け物じゃん。まぁだからって指くわえて見てる訳にはいかないけどね」
激しい金属音を響かせ火花を散らせながら接近戦を繰り広げるフェリクスとアイリーン。そんな二人の目まぐるしく変わる攻防をセシルは遠巻きに見つめながら参戦するタイミングをうかがう。
しかし攻撃範囲が広い風魔法を得意とするセシルは二人がショートレンジでやり合っている為、援護するタイミングを見い出せずにいた。
セシルが援護出来ずに手をこまねいていると、少し離れた位置でジョシュアもようやく立ち上がる。
「くそっ、結局後手を踏んだか。セシルも戸惑ってるな。どうやってあの化け物二人の間に入るかな」
ジョシュアもまた遠くから見つめながら割って入る機会をうかがう。
そんな激戦が繰り広げられる所から少し離れた位置を、リオは必死に走っていた。
『一体何が起こっている? 早く大尉の元へ』
「ライデル、早く! 大尉達に知らせないと!!」
「わかってる! これでも全力で飛ばしてんだよ! 遂に隊長さえ付けてもらえなくなったか」
離れた荒野を駆けながらリオがライデルに叫ぶと、愚痴を交えながらライデルもついて行く。出来るだけ戦場を見渡せる様にとフェリクス達から離れた位置にいたが通信が遮断された今、それが仇となってしまったのだ。必死に走るリオだったが、戦いは構わず進んで行く。
相変わらず激戦を繰り広げるフェリクスとアイリーンの間にジョシュアが飛び込んで行く。
「ちっ、邪魔すんなよ」
「やられっぱなしで引き下がれねぇんだ」
入ってきたジョシュアを邪険に扱うフェリクスだったがジョシュアはなんとか食い下がってみせた。
「新兵、そいつを少しは引きつけろよ」
アイリーンが笑みを浮かべ僅かに距離を取ると、すぐに片手を上げ詠唱を唱え始める。アイリーンの詠唱が進むについて上空を真っ黒な雷雲が覆って行く。風が吹き荒れ、大気の状態が不安定になってくると雷鳴を轟かせて稲妻が空を走る。
「新兵よく粘ったな」
アイリーンが笑みを浮かべたが、それと同時にセシルも微笑む。
『
「させないよ
一足早くセシルの
接近戦を繰り広げていたフェリクスとジョシュアは地中に剣を突き刺し、竜巻に飲み込まれまいと必死に耐えていた。
そんな二人を見てフェリクスにも身の危険が迫ると思いセシルは
巨大な竜巻は上空を覆っていた雷雲と共に去り、視界を遮っていた砂埃が晴れていく。剣を突き刺して耐えていたソルジャー二人が姿を現すと、なんとアイリーンも地中深くに剣を突き立ててその場に踏みとどまっていた。
「あれで耐えるなんて嘘でしょ?」
セシルが呆れた様に呟くと、アイリーンはセシルの方を睨む。
「セシル貴様、私が起こした大気の不安定化と気圧の変化を利用したな?」
「ふふふ、正解。アイリーン大佐と私の魔法の相性は中々良かったみたいですね。おかげで魔力の消費も半分で済みましたよ。ただ威力が上がり過ぎて途中でキャンセルしちゃいましたけど」
「ふん、それが仇となったな。そのまま最後まで押し切ってれば私を吹き飛ばす事も出来たかもしれんのに、その男を心配するあまり中途半端になったな。恋だ愛だと、そんな物にうつつを抜かすから折角の貴様の力も宝の持ち腐れになる! それがわからぬなら貴様も所詮二流だなセシル!」
「人を愛する事が二流だと言うなら私はそれで結構! 貴女とは分かり合えませんねアイリーン大佐!!」
再びセシルが構えるとセシルの周りで風が舞う。それと同時にアイリーンも構えて詠唱に入る。
セシルを援護すべくフェリクスが動くがジョシュアがそれを阻んだ。
「俺の事忘れ過ぎだろ? 死神さん」
「だから邪魔すんなって」
フェリクスとジョシュアも再び剣を振るい火花を散らす。
そんな時、リオがようやくフェリクス達の元へとたどり着いた。
「間に合え!! 全員その場から離れろ!!」
リオの叫びに全員が振り返る。
「なんだ!?」
「リオさん!?」
「リオ!?」
「糸目女!?」
全員の視線がリオに集中した次の瞬間、上空から巨大な火球が落下し、辺りに熱風と炎が吹き荒れた。
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