第125話 再会
翌日。手掛かりを求めて朝からリオ達は大滝を中心に捜索を続けていた。しかし日が傾きかける頃になってもフェリクス達の手掛かりを得る事は出来ずリオも困った様にため息をついていた。
「リオさん、駄目です。手掛かりなんて一つも見当たりません……あと、リオさんが連れて来たボランティアの人何なんですか? 頑張ってはくれてますけど、隙を見ては『この後ご飯一緒にどう?』ってしつこく誘ってくるんですけど」
ユウナがほとほと困った様に訴えかけると、リオは腕を組んだまま静かに聞き入っていた。
「ほほう、ごめんねユウナ。ちょっとヤキ入れとくわ」
静かな口調で微笑みを浮かべながらリオはゆっくりとライデルの方へと歩んで行く。草木をかき分け、必死に手掛かりを探すライデルの横でリオが静かに見下ろしていた。
「どう? 何か見つかった?」
「おおリオか。いやぁ足跡すら見つからないな」
横で微笑みながら、何処か冷たい視線を送ってくるリオに対して、ライデルが爽やかな笑顔で返していた。
「そう、残念だわ。それで? 貴方は大尉を探しに来てくれたのよね? それともディナーの相手を探しに来てるのかしら?」
「えっ、いや、そりゃ大尉に決まってるだろ。なんだよディナーの相手って? あっ、あのお姉ちゃんか。あれはほら、あれだ、これからも一緒に頑張っていく訳だから親睦を深めた方がいいかと思ってさ」
「何? 親睦を深めてどうするつもり? どうせご飯食べただけじゃ物足りなくなるんでしょ? 体力有り余ってるんなら夜通し捜索してもらおうかな」
「なんで俺だけ夜通し探さなくちゃならないんだよ? あっ、ひょっとして妬いてんのか? だいたいお前誘っても全然付き合ってくれねぇじゃねぇか」
「誰が妬くか! とりあえず今ここであんたを滝に突き落としても事故で済むよな? ウチの子を守る為だ、仕方ないよな?」
「待て! わかった、二度とあのお姉ちゃんには付きまとわないから、な?」
軽い口調でライデルが必死に弁明するがリオは笑みを浮かべたまま佇んでいた。リオの静かな圧にライデルがたじろいでいると、突然ユウナが駆け寄って来る。
「リオさん! 大変です! こっちにセントラルボーデンの車両が向かって来てるみたい」
ユウナの報告にその場にいた全員が凍りついた。こんな何も無い、占領しても何の価値もないような場所にセントラルボーデンが来るとは思っていなかったのだ。
「ナンパ野郎の相手してたせいで警戒が疎かになってたわ」
リオがライデルを一瞥した後、慌てて
「あの二人、確かセシルを追って行った二人。何か知ってる筈よね。ユウナ、ライデル隊長、武器はある?」
「ハンドガンが一丁だけです」
「こっちは捜索活動って聞いてたから何も持って来てないぞ」
銃を手に持ち不安そうに答えるユウナと両手を広げてみせるライデルに、リオが頭を抱えた。
「くそっ! 全員に武器の確認。敵の襲撃に備えて」
素早く指示を出し、今ある戦力を確認する。全員に身を潜めさせて静かに備える。先程までの騒がしさから一転、打って変わって静寂が場を支配する。張り詰める緊張感の中、アンドレ達が悠々と姿を現した。
「おーい、出て来いよー! 車見りゃわかる、いるんだろー? ルカニードの兵士よー、話し合いしようぜ」
自信たっぷりにアンドレが声を張り上げる。木々が生い茂る自然の中でアンドレの声だけが響く中、リオが一人アンドレ達の前へと姿を見せた。
「話し合い? 他人の国にズカズカと攻め入っといて話し合いしようぜ、とは片腹痛いわね」
「まぁそう言われると返す言葉もないが、俺達は今侵攻云々に興味無くてね。ある二人の行方を探していてな、そいつらが生きてるのか死んだのか確認したいだけでね。何か知ってたら教えてくれないか? 有益な情報が聞けたら君達を見逃してもいいんだが」
アンドレが前に立ち、笑みを浮かべて余裕たっぷりに立ち振る舞っていると、リオが少し悪そうな笑みを見せた。
「なるほどねぇ。実は私達もある二人を探してるんだけど見つからなくてさ、仕方ないからその二人の最後の足取りを知ってそうな間抜けに話し聞かせてもらおうと思ってた所なのよ」
「へぇ、その間抜けって誰の事かな? 俺達からしてみればあの二人を含めて、お前達の方が間抜けに見えるが」
アンドレが眉をひそめて、少し不快感を露わにしながら雷を帯びた右手を掲げる。それでもリオは不敵な笑みを消す事はなかった。
「あらあら簡単に余裕が無くなるのね。所詮は三下、無理して大物ぶらなくてもいいのに」
「交渉決裂だな。死ねよ馬鹿女」
アンドレが右手を振るうとリオに向かって電撃が走った。持ち前のスピードでリオが素早く躱し、木の陰に身を隠す。アンドレ達全員がリオの方へと体を向けた時、反対側に潜んでいたユウナがハンドガンの引き金を引いた。
真後ろからの銃撃に一人は銃弾に倒れたがアンドレとゲイグールは難なく躱し、ゲイグールがユウナの方へと飛びかかって行く。
「そんな物で俺達に不意討ちが出来ると思ったか?」
笑いながらユウナへと飛びかかるゲイグールだったが草むらに潜んでいたライデルが現れ、寸前でゲイグールに飛び蹴りを見舞った。
「女性を護るのが俺の仕事でな。汚ねぇ手でウチの姫達に触んじゃねぇよ」
ユウナの前に立ち、悠然と構えるライデルをゲイグールが歯ぎしりしながら睨んでいた。
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