第20話 襲撃③
他の男達が武器を手に殺戮を繰り返す中、ガルフは素手で来場者達の命を奪っていく。
来場者達が慌てふためきながら会場中を右往左往する中ガルフが笑いながら闊歩していると突然氷の弾丸がガルフの眼前に迫った。
しかしガルフが平然と氷の弾丸を右手で払うと歩を止め、眼前にいるシャーンに睨みをきかせる。
「なんだ、ウィザードもいやがんのかよ。お前は置いていかれた口か?」
ガルフが片方の口角を上げてシャーンに問い掛ける。
「ガルフとか言ったな。俺の手柄はここで上げさせてもらおうか」
シャーンがそう言って構えた瞬間、ガルフは既に距離を詰めていた。
シャーンの眼前に迫ったガルフが手刀で突きにいく。
しかし寸でのところでガルフの手刀が止まった。
シャーンとガルフの間にいつの間にか透明な氷の壁が出来ていたのだ。
「ちっ面倒くせえ奴だ」
ガルフが顔を歪めながら吐いて捨てるように言う。
「お前みたいにパワーやスピードだけで押してくるソルジャーの相手は楽だよ。さぁ今度はこっちから行くぞ」
『氷の
そう言ってシャーンが左手を前にかざすし詠唱を唱えると、周りに氷の結晶が出来始め、やがてそれは無数の氷の弾丸へと姿を変えていく。
「さぁ躱せるか?『
シャーンの周りから打ち出された無数の氷の弾丸がガルフを襲う。
「ははは、躱すまでもないわ」
そう言ってガルフは向かってくる氷の弾丸を素手で迎え撃っていた。
数発はガルフの拳をすり抜け被弾したりもしていたが強靭なガルフの身体には、たいしてダメージをあたえる事は出来なかった。
「どうした? もう終わりか?」
ガルフがシャーンに向かって笑いながら叫ぶ。
「ああ、そうだな。準備は終わりにしようか」
そう言って再びシャーンが左手を前に構える。
ガルフの周りに水煙がまとわりつく。
シャーンの先程の攻撃でガルフの周りには十分な水分が有り余っていたのだ。
『聖なる氷の刃よ我が剣となりて敵を貫け。アイスニードル』
ガルフの周りの水煙が尖い氷の針となり突然空気中より現れ、氷の針は四方からガルフを襲う。
氷の針とは言うものの、それは針と言うには太く、大きなつららの様だった。
咄嗟にガードしたガルフだったがガードした手や腕は貫かれ、腹や足には氷の針が刺さっていた。
「……やってくれるじゃねえか」
ガルフは片膝を着き、氷の針に貫かれた傷口からは血が流れ出していた。
「ふん。呆気ないな。そんな力でこんな所まで乗り込むとはな」
シャーンがガルフを眼下に見下しながら呆れたように物を言う。
「……はっはっは。じゃあそろそろ時間も無い事だし一気に行こうか」
そう言ってガルフは傷付いた体を気にする事なく立ち上がると、みるみる姿を変えていく。
ガルフの目付きは鋭くなり鼻と口が前に突き出てきたかと思うと大きく開いた口からは牙も生えていた。
元より大きかったその体躯は更に巨大となり着ていた服を破ると、中から体毛に覆われた強靭な肉体が姿を現し、指先の爪は鋭く伸びていく。
「な……
初めて対峙する人狼に僅かにシャーンはたじろいだ。
「さぁ遊びは終わりだ」
そう言ってガルフがシャーンに襲いかかる。
シャーンは再び氷の壁を作り、防御の態勢を整えた。
しかし、いとも簡単にガルフの手刀はそれを打ち砕きシャーンの体を貫く。
「がはっ…………」
「なんだ。呆気ねぇな。そんな力でここの警備してんのかよ?」
血まみれになった右腕をシャーンの体から引き抜きガルフが薄ら笑いを浮かべ呟くと、シャーンは力無く足元に伏した。
会場内に阿鼻叫喚がこだまする。
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