失礼しますが殺させていただきます

明星 凜音

プロローグ

【さて、アリーよ。そろそろ奴らを殺す準備は出来たか?】


「えぇ、とっくのとうに…あの日から出来てるわよ。奴らを、ロキを殺さないと私もこの世界も滅びちゃうんだからさっさとやりましょうか」


【うむ、そうだな。では行くぞ!】


 はぁ、ただ普通にゲームしたかったんだけどなぁ。


 ===================


「ん?VRゲームのβテスター募集?」


 ふーん、βテスターの募集ね。最近増えてきたのよねこういうの。

 ……アースクエイク社。聞いたことない名前ね?ゲーム名は『エトワール・オンライン』応募期間は1ヶ月、 応募人数3万人ね。まぁ、応募人数はどうでもいいのよ。ゲームの内容見てからやるかどうか決めるんだから。

 ……へぇ、なるほどねぇ。これは私1人で応募するのは面白くないわね。


「涼太!ちょっと来てー!」


「今、洗い物してるから手離せない!」


「そんなの後でいいから来てってば!」


 まったく、お姉ちゃんと洗い物どっちが大事なのよもう。


「入るよ。……で、何?」


「とりあえず何も言わないでコレ見てみ」


 ふふん、さあ内容を見て驚くのだ我が弟よ!私と同じゲーマーならコレを見てやりたくなるはずだよね!

 ……ん?なんか反応微妙なんですけど?なんでなん?


「はぁ、こんな謳い文句に踊らされてる姉ちゃん見てると涙が出てきそうだよ」


「むう、それは聞き捨てならないわね。私が1回でも謳い文句に踊らされてつまらないゲームをしたことがある?私が記憶してる限りではないわ!」


「それはそうだけど、今までのヤツとは違うんだよ。さすがに今の技術じゃ再現出来ても聴覚と視覚と触覚だけじゃん。人間の五感を完全再現することなんて出来ないし、NPCに人間となんら変わらない思考回路を持たせるなんて出来っこないよ」


 はぁ、我が弟ながらなんて頭が固いのか。そりゃ今までの技術じゃ無理だろうけど、もしかしたら本当に再現したのかもしれないじゃない。それをプレイもしないで諦めるなんてダメね。


「涼太、そんなこと言ってたら時代に取り残されるわ。時代に取り残されたくなければやるしかないのよ。たとえ再現出来てなくてもね。それにお父さんとお母さんも言ってたじゃない"やる前に諦めるな、やってから諦めろ"って。だから2人の意志を私たち姉弟で受け継ぐのよ」


「姉ちゃん……。まだ2人とも生きてるから死んだことにしないであげて。徹夜で死んだように寝てるけど。でも姉ちゃんの言うことはもっともだと思う。やる前に諦めてちゃ面白いゲームなんて出来ないもんね。うん、応募してみよう!」


 よし!これでβテスター受かったも同然だわ!ふふ、涼太の運には応募なんて意味もなさないのよ!これで新しいゲームが出来るわ!もう今から楽しみ過ぎて眠れないわね!


「あ、姉ちゃんここ見て」


 なんだね我が弟よ、お姉ちゃんウキウキ状態なのに。……なになに、"既存のVRギアでは当社のゲームはプレイできませんので、当選した方にはこちらからVRギアをお送り致しますのでそちらを使用してください。もしVRギアを使い何かございましたらすぐに使用を中止し、運営までご連絡ください"。へぇ、新しいギアまで開発したんだ。


「とりあえず応募するからな、姉ちゃん」


「よろしく〜、じゃあ私ゲームの続きするから洗い物の続きをどうぞ」


「洗い物はおわりました。それとゲームは一旦おしまい。夕食出来たから父さんと母さん起こしてきて」


 なんと出来た弟か!流石私の弟ね!でもお父さんとお母さん起こすのめんどくさいなぁ。


「そんな顔してないで早く起こしてきて」


 むぅ、めんどくさいけどしょうがないわね。色々とやってもらってるし起こしてきますかね。


 ===================


 はぁ、扉の前まで来てしまった……。1回でちゃんと起きてくれるといいんだけど、無理だろうなぁ。入りなくないなぁ。


「はぁ、……お父さんお母さん起きて!涼太が夕食出来たって言ってるよ!早く起きて!今すぐ起きて!」


「う、うぅん……。なんだ沙月、もう、そんな時間か……」


「そう、もう18時だよ。ほら、お母さんも起きて。夕食が冷めちゃうよ」


「……今起きる、から、沙月ちゃん、揺すらないで……」


「揺すらないから早く起きてね。じゃ、私先にリビング行ってるからね」


 はぁ、徹夜で仕事して帰ってきてすぐ寝てそれから一向に起きないって、お父さんとお母さんの職場ってどんな所なんだろう?まぁ、私はゲームでこれからも稼ぐけどね。

 とりあえず下行って先に食べちゃおうっと。完全に起きるまでもう少しかかりそうだし。


 ===================


「あ、姉ちゃん。ちゃんと起こしてきた?」


「ええ、起こしましたとも。それに今回は1回で起きたわ。完全に起きるにはもう少しかかりそうだけどね」


「なら、先に食べちゃおうか。父さんと母さん待ってると冷めそうだし」


「そうね。あら、今日はカレーなのね」


「うん、今日は休みだしスパイスからこだわってみたんだ」


「へぇ、やるじゃない!早く食べましょう!……いただきます!」


「いただきます」


 ……うん、美味しいわね!これならどこに出しても大丈夫ね!付け合せのサラダもシャキシャキして私好みね。

 それにしてもお父さんもお母さんもこんなに美味しい料理を温かいうちに食べれないなんて残念ね。


「おはよう、沙月、涼太」


「おはよう、沙月ちゃん、りょうちゃん」


 うん、温かいうちに食べれるわね。お父さん寝癖凄いけど。


「おはよう、父さん母さん」


「おはようお父さんお母さん。お父さん寝癖凄いから直してきたら?」


「ん?そうか?なら、直してこよう」


「じゃあ、私は先に食べてるわね。……いただきます」


 お父さん寝癖直しに行ったけどちゃんと直るかな?直らなくても放置するけど。


「そういえば、お母さん。今日はいつもより大分疲れてたけどそんなに仕事大変なの?」


「うん?そうね、大変だったわ。ゲームをギアに合わせて一から作るのって大変なのね。もうやりたくないわ、あんな仕事」


 ふーん、ゲームを作ってたんだ。2人ともゲーム好きだから合ってそうよね。

 ……ん?ギアに合わせて一から?なんかついさっき新しいギアを開発した会社があったような?ようなじゃなくてあったわよね。もしかして……。いや、でもまさかね。


「あのさ、もしかしてだけど、お父さんとお母さんが作ったゲームって、『エトワール・オンライン』?」



「ええ、確かそんな名前だったわね。なんで沙月ちゃんは知ってるのかしら?」


「ゲームの暇つぶしにネットサーフィンしてたら見つけたのよ。面白そうだし応募もしたわよ」


「そう、もう募集の時間になってたのね。2人とも受かるといいわね」


「大丈夫よ、こっちには涼太がついてるんだから!」


「そうだったわね。ふふ」


 応募はしたし、あとは届くのを待つだけ。はやく届かないかなぁ。

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