第2話【よろしく、ごしゅじん】
「......すぅ......すぅ」
「気持ち良さそうに眠って......この子のこんな寝顔、初めて見たかも」
お腹いっぱいになったトリーシャちゃんは、ソファーの上で胎児のような姿勢で小さな寝息を立てている。
風邪を引かないよう、タオルをかけてあげる彼女の表情は慈愛に満ちた微笑みを浮かべていたが、俺の反対側の席に戻って来るなりまた警戒する顔つきに。
「
丁寧にお辞儀をし、続けて。
「改めてお尋ねしますが、あなた様の目的は何でしょうか?」
目的――そうだな、強いて言えばキミたちとゆっくり話をしたかった、かな?
「へ? そんなことのためだけに、私たちを買ったのですか!? 自慢じゃないですけど私たち、結構な金額だったはずでは?」
彼女の言うとおり、上流貴族連中が泊まるホテルの三日分の滞在費程度には高かったと記憶しているが、こちとら多額の退職金と討伐報酬金が入って金銭感覚がマヒしている。
「失礼ですが、この家を見る限り貴族というわけでもなさそうですし」
言葉を選びながら、引っ越してきたばかりで備え付いた年季の入ったダイニングテーブルとソファーくらいしかろくな家具がない室内をちらと見回す。
「だとしたら、あなた様は相当な変わり者ですね」
彼女は口元にその小さな握った手を当て、くすりと微笑んだ。
まぁ、変り者ゆえに今の環境に落ち着いたってことなんだろうな――と、自分でも納得する。
「それで......私たちはこれからどうすれば良いのでしょうか?
不安そうに彼女は上目遣いで俺を注視する。
二人共食べるのに夢中であまり会話らしい会話はできていないが、久しぶりに間近で誰かの暖かみを感じられて、俺の心はポカポカとしていた。
――叶うなら、この子たちの幸せな顔をもっと見ていたい。
そう思った俺は、彼女に一つの提案を出した。
「この家でメイドとして一緒に暮らさないか......ですか? 確かに私はメイドの経験は少しだけありますが、妹のトリーシャに関してはまだ小さいのでとてもメイドの仕事は――」
さすがにその辺は理解している。
トリーシャちゃんはもう少し大きくなってからやってもらうとして、しばらくの間は彼女一人に任せる旨を伝えた。
幸いこの家は中流の中くらいの商人が済むような、それほど広くはない一軒家。なんとかなるだろう。
「......本当によろしいのですか?」
よろしいも何も、彼女が嫌だというのなら乗り掛かった舟、故郷まで送り届けるつもりでいる。
だが奴隷という身分であったことを考えると、帰れる場所が亡くなっている可能性が高い。
二人を買ったのが例え俺の気まぐれだったとしても、最後まで責任を取るのが大人ってもんだ。
「......ありがとうございます! 誠心誠意、働かせていただきます!」
「とりーしゃも! ちきんらいすまだたべる! ......むにゃむにゃ」
絶妙なタイミングでへそ天をしながら寝言を放つトリーシャちゃんにお互い顔を見合わせ、そして揃って笑みが
「申し遅れましたが、私の名前はリーシア、妹の名前はトリーシャと申します。
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