俺の親友「達」の話を聞いてくれ

WOULDYOU

第1話 親友の『大喧嘩以上の喧嘩』と俺

「おい!!慎司、なんで俺から香奈子を奪ったんだ!!」


そう言って、俺の親友、中俣慎司に馬乗りになって、殴るもう1人の親友、竹内承太郎。


「‥‥‥‥」


だが、それでも、慎司は何も言わなかった。

いや、言えなかった。


「おい!!なんとか言ってみろよ!!」


まだまだ、殴り足りないと言わんばかりに、殴り続ける承太郎。


そんな悲惨な状況をただただ見るしか出来なかった僕、中山優蔵。


‥‥‥俺が1番最低だ。





だが、その光景も霞となって、消えた。

目覚まし時計のジリリリリという音で目が覚めた。


「はぁ、はぁ、はぁ、またこの夢か‥‥。」

一ヶ月前ということもあり、最近この夢をよく見る。


俺は、うずくまって動けなくなった。


「良かったぁ、休日で。」


それから、1時間程で立ち上がることが出来、リビングに向かった。もう、10時だった。


「おはよう、母さん。」


「あら、おはよう優蔵。」


俺の両親は離婚した。親友達の喧嘩の日に‥。


「由美は部活?」


「そうよ、最近忙しいみたい。」


妹の由美はバレー部に所属している。


「私、お昼の買い出しに行ってくるわね。」


「分かった、いってらっしゃい。」




そうして、また1人の時間になる。


「2人の関係は直らないだろうなぁ。」


あれから、2人が話しているのを見ていない。


「元気ないんだよなぁ、2人とも。」


なんだか、いつもの笑顔ではない。


「承太郎は傷ついて‥‥‥、慎司は塞ぎ込んで‥‥‥。」


なんで、こうなったんだろう?


何が間違っていたんだろう?


これから、どうなってしまうんだろう?


もう何もかもが分からない。


「せめて、元気くらい出してくれよぉ。」


無理な話である。


でも、瞳が潤んで溢れ出てしまった‥‥。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る