古典の授業中に未来予知した話
@amkoharyu
古典の授業中に未来予知した話
あれは高校2年生の時。
当時の僕は文芸部とは名ばかりの帰宅部に加入し、気の合う友達も数名おり、それなりに充実した高校生活を送っていました。
しかし勉学に関してはそうもいかず、特に「スウガク」とかいう社会での役立ち度も文系殺す度もNO.1の科目は血反吐を吐きながら公式を暗記していました。
対照的に国語は大得意の部類で、元来の本好きも相まって現代文は無双していました。
同じ国語の古典や漢文も例外ではなく、無双と行かずともヌくらいはしていました。
そんなある日、いつも通り古典の授業がありました。担当はK先生。落ち着いていながらハキハキとした語りでとても分かりやすい授業を展開する先生でした。
その日は菅原孝標女の「更級日記」をやっていました。場面としては丁度乳母(めのと)が死んだところ。その前に語られていたのでしょうが教科書には載っていなかった継母の死と関連づけられて説明されたのを記憶しています。
言い忘れていましたが、K先生の授業形式は重要な単語や文章の説明などが抜かれた穴あきプリントを配り、K先生の説明から当てはまる語句を抜き出して記入する形式でした。
その日も例外ではなく穴あきプリントが配られました。前述の乳母と継母の死を結び付け、菅原孝標女と継母の仲の良さを説明する文章でした。
「皆さんは継母というとシンデレラなどの意地悪な人というイメージがあるかもしれませんが、この作者と継母の仲はすごく良かったんですね。」
100%完璧に暗記している訳ではありませんが、大体このような説明でした。
僕は「ふーん、そうだったのか」とか思いながら穴を埋めて、引き続き先生の説明に耳を傾けました。
それから10分ほど経ったでしょうか、私たちに単語の意味を調べるよう言いつけ、K先生が見回りに来ました。
ノートを埋めていない奴を探すためか通りすがりに手元を覗いて行くのですが、僕の横を通り過ぎかけたところでピタリと足が止まりました。
「なんでここ埋まってんの?」
そう言って指さしたのは先程埋めた継母との仲について解説した部分でした。
(なんでってなんやねん、お前が説明したんとちゃうんか?)
と思いながらも決して声にも顔にも出さず、
「え、何でって、説明されたからですけど……?」
と返しました。すると、
「説明してないよ?」
と返ってきました。
(なに言ってんだ、俺はお前と馴れ合いに来たんじゃねぇんだよ)
と思いながらも決して声にも顔にも出さず、
「え、説明してたじゃないですか。『シンデレラの継母とは違って仲が良かったんですよ~』って。」
「いや、確かにそんな説明をするつもりだったけど、今日はまだしてないよ?」
ここで初めて、どうやらK先生はふざけている訳では無いようだ、ということを察しました。
それと同時に、こちらの会話が耳に入っていたであろう周りの人たちがこちらに注目し始めたのを感じました。
「いや、説明したじゃないですか。」
「いや、してないよ。」
「え?」
「え?」
「……。」
「……。」
「ねぇ○○(最前列の友人)、プリントの継母の部分って説明されたよね?」
「いや、されてないよ。」
「……。」
謎です。
いよいよもって謎です。
蜘蛛の糸ほどのほっっそい可能性に賭けて最前列の友人に尋ねてみましたが、答えはNo。周りのクラスメイトも誰一人覚えがないようで、少しザワザワしてきました。
先生は嘘をついていない、友人も嘘をついていない、僕は確かに聞いてプリントを埋めている。
この3つの条件を満たす「何か」が起こったのは確実なのですが、しかし僕には皆目見当もつきません。
結局その場は僕の勘違いということで一段落(じゃあなんで正確に埋まってんだよ)し、先生は見回りに戻り、クラスメイトも単語調べを再開しました。唯一僕だけが首を傾げたまま……。
以上が僕が高校2年生の時に体験した実話です。今思い返しても「あの一瞬だけ未来予知能力に目覚めた」以外の説明が摩訶不思議な体験で、僕の記憶用量を圧迫し続けています。当然それ以来このようなことは起こっていません。
全く腹立たしいことこの上ありません。百歩譲って一生に1回しか使えないというような制約があったとしても、確実に使うタイミングを間違えています。もっと適したタイミングがあったでしょう。数学のテストで赤点を取らないために問題を知るとか。
これを読んだ方の中でこの事象を説明できる人がいたら是非コメントをくだされば嬉しいです。説明できなくてもコメントや評価をして頂けると嬉しいです。承認欲求が満たされるので。
古典の授業中に未来予知した話 @amkoharyu
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