第54話 勇者です。これからケモ耳を蹂躙しに行きます。
クオーレルに向かい、だらだらと馬車に乗って進んでいく。
だが勇者、並木 勇気は悩んでいた。
日本にいたときに、よく目にした、ケモ耳をはやした、かわいい女の子キャラ。否定する気もなく結構気に入ったキャラもいた。
実際にこの世界で現物は見ていないが、うさ耳おっさんなら攻撃してもいいかともおもう。だが、うさみみだと、どこかのラノベのキャラのように、主人公の特訓を受けた、廚二全開首狩り兎だと怖い。ふとそこまで考え、身震いをする。
兵士の集合に合わせるため。
途中の町々で休憩するのは良いが、いい加減暇になり、訳の分からない妄想で頭の中が埋まっていく勇者。その道程は、ひどく怠惰な物であった。
その様子を遠く離れた山の頂で見守る影があり、魔道具を使い連絡を入れる。
それに呼応するように、クオーレル側のダンジョン入口周辺に、罠がどんどん設置される。ダンジョン出口の中央部分は1kmにわたり深さ3mほどの堀が掘られ、先頭が、そこに達した瞬間。底が抜けるように造られている。
中には、水が張られ100mごとに、雷を発生させる魔道具が建てられている。
ただし、人が死ぬレベルではなく42Vを超えないように設定してある。
あくまでも、足止めと脅しである。
森には、ロープが張られ、草原には草同士を結んだ輪があり、適度な深さの落とし穴もあるため、すぐに馬は使えなくなった。
そのような仕掛けは、途中の村や町に仕掛けられており、敵の心を折るために考えられた仕掛けが、随所に仕掛けられていた。
実際に、王都のひとつ前の町アンテリュールには、大きな文字で『この先に進めば命を奪う攻撃を開始する。速やかに撤退せよ』と書かれた、横断幕がかかっている。
もちろんこの先は、王都の城壁。そして、攻撃部隊の背後にゲートを通って攻撃部隊が背後からやってくる事になっている。また、アンテリュールから一歩でも王都に近づけば、相手の兵糧を切れと命令をされている。
そう、獣人族は夜目が効き鼻も良い。力もあるし各個として比較すればヒューマンに勝ち目はない。そう。絶対的な兵器でもなければ。
時は少し戻り、勇者がクオーレル側につながるダンジョン入口に到着する3日前。
賢者、坂下 妙子(さかした たえこ)を連れた兵、約3千がダンジョンへと突入をした。
ガンガンと攻略をして、厳しくなれば賢者が殲滅魔法を撃ちこみ、また進む。
勇者がミスルール側に到着と同じくして、クオーレル側の到着をした。
そして、行軍を開始して……罠にはまった。
その時、水に落ちたせいなのか、電撃を食らったせいなのか、ずっとぼんやりしていた意識が少しクリアになった賢者は、牢獄となっている馬車を、魔法で吹き飛ばした。当然自身もダメージを受けるが、そこからはい出し、脱出をする。堀からもはい出し森の中へ姿を消した。
管理をしていた兵たちは、堀に落ちた後、電撃を食らい。すぐに賢者の放った魔法の巻沿いとなって、パニックを起こした。
そのため、獣人族側が意図しない死者がでたようである。まあこれは、水の水位が2mほどあり、兵士が鎧を着ていた。さらに泳げる人間はほとんどいなかった。そのために起こった悲しい事故?である。
死んだ人間は、中上位者に多くいたが、本作戦の最上位である大司教は、馬車に普段着である司教服であったため、落下後、馬車から這い出て、無事に脱出している。
中上位の連中も、少し進み、安全そうなら鎧を脱ぐ予定だったのに、その矢先に沈んでしまった。
実際獣人族の目的、敵の心を折るこの目的は達成できたようである。この隊の責任者である大司教は、馬車が無くなったことに心が折れて、ダンジョンは踏破したので仕事は終わったと、次の隊が到着後。撤退する気でゆっくりしていた。
その間に堀の中をさらっても、賢者の遺体は見つからなかった。ただ堀の底はぐしゃぐしゃで、土の中に沈み込んでいる遺体も多数あったので、もういいと探すのを断念した。それよりも優先すべきは有力者の子弟である。
3日後。勇者たちが到着して、それと入れ替わりに、大司教達は遺体とともに帰っていった。
「落とし穴か、それもこんな大規模な」
「森の中には高さを変えて、ロープが張られています」
「それはめんどくさいな。この穴を掘った土は、どこに捨てられているかわかるか?」
「周辺には、見当たりません」
「それはおかしいな、もしかして海に捨てたのか?」
「それなら運搬した形跡があるはずですが、見当たりません」
「そうか、ありがとう」
まあ地道に行くか。手間はかかるが、地道に罠を解除して進んでいくとしよう。
「おい。兵に左側へ向け穴を回避しながら、道を造って行ってくれと伝えてくれ」
「はい」
兵士が馬に乗り先行している部隊に伝令として走り始めるが、すぐに馬の脚が直径30cm深さも30cm程度の穴にはまり、乗っていた兵が投げ出される。
「うわー。どこもかしこも罠だらけかよ。それも地味な奴ばっかり。伝令、馬を使うなゆっくりで構わん」
邪魔になる木を切り倒し、馬車や荷車が通れる幅に、兵が並び棒で細かく突き罠を探していく。気の遠くなるような行軍が始まった。
「ケモ耳が居ないな……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます