最強の俺は、とりあえず魔物も世界も分からせることにした【旧題:魔消の記憶】
草ふかみ
序章 世界の始まり
夜の王都に立ちのぼる炎と煙。夥しい魔物の数。
俺は民家の屋根と屋根を伝って王都の中心、セント城の宝器庫まで走る。
絵に描いた世紀末である。
首からぶら下げたペンダントが青く点滅し、声が聴こえる。
「本当にこの人間が僕たちを助けられるの?」
次にペンダントは赤く点滅し、こう喋った。
「そんなん、コイツの頑張り次第だ。オイ! 早くしねぇと俺らを助けられなくなっちまうだろ!? 急げよ!」
やっと城壁の上に到達。ここから宝器庫まではざっと100メートル。ぶちかますとするか。
俺は左腰に装備した、黒い禍々しい装飾の剣を抜く。そして、少しだけ息を吸った。
「『ミーティア』!!」
そう叫びながら、宝器庫に向かって剣を縦、横、斜めに三回ほど振ると、振った剣の軌道が黒く現出した。
その軌道は目にも止まらぬ速さで飛び、一瞬にして宝器庫の屋根を破壊した。
ペンダントが赤く点滅し、喋りだした。
「オイオイ、マジかよ! コイツはゴキゲンだな!」
俺は背負っていた袋から、大きな革の鞘を取り出して背中に装備し、同じく革でできた小さな鞘が二つ付いたベルトを取り出して腰に装備した。
そして、城壁から、破壊された宝器庫の屋根に大きくジャンプし、破壊部分から中へと侵入。
中はとても暗く、破壊された部分から眩しい月の光だけが差す。
「それで、お前らの本体はどこか教えてくれるか?」
ペンダントが赤く点滅し、喋る。
「この宝器庫の中心、台座の上だ」
「ほいほい承知」
これか。赤の装飾が施された台座には黒い角張った大剣。青の装飾の台座には小さい双剣。緑の装飾の台座には魔法の杖のようなもの。
俺は大剣と双剣を先程装備した鞘に入れ、魔法の杖のようなものは手で持つ。
ペンダントが青く点滅し、申し訳なさそうに喋る。
「ありがとう。人間さん」
――成功しちゃった。何千年も前に封印された三つの宝器の、その封印。
簡単に解いちまった、この人間。
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